見出し画像

日本陸軍防空戦略裏話――文章ってどう書くんですか……?

 どうもミリタリーサークル
 『徒華新書』です。
 (@adabanasinsyo

 本日はミリしら裏話です。
 網野誠也がお送りします。
 (@adabana_Amino)

 先週投稿したミリしらの日本本土防空戦略の記事はご覧になりましたでしょうか。

ご覧いただけたなら幸いです。本日はその日本本土防空戦略の制作裏話についてお話していきます。

本日のお品書きです


原稿のネタがありません…

 今月から始まったミリタリー実はよく知らない話、通称ミリしらは私たち徒華新書のメンバー久保智樹、北条岳人、網野誠也がみんなが知っているようで知らないミリタリー話を隔週で連載します。

 しかし、各々仕事などがある中で資料を集めて隔週で記事を書くというのはとてもハードなスケジュールです。そのため事前にあらかじめ記事を溜めておこうということになりました。

 実は記事のネタはあります。なぜなら、徒華新書のメンバー元戦史研所属の野郎3人組です。なので、サークル時代に各メンバー作った記事があります。それをリファインすればストックを作るのに困ることはないだろう……そんな風に思っていたんですよね。

そう上手くことは運びませんでした。

 網野は原稿を書き始めるため大学時代に作成した記事「日本本土防空体制における高射砲」という記事を読み返しました。タイトルの通り、あまり語られない日本本土防空体制の中でもより語られることの少ない高射砲のお話をまとめた記事になります。

 ……内容が高射砲や防空体制に終始していました。ニッチすぎるし、誰が日本軍の高射砲の射高なんて知りたいんだ。私だけど。

 ということで、本土防空戦略の記事は一から資料を集めて書き直すことになりました。

「社会人だけどまー、4年間ずっと記事書いてたんだからいけるでしょ~。」

しかし、そんなうまくいくわけはないのです。

書けない――文章リハビリテーション

 ミリタリーに限らず論文や記事は、大量の資料を集め、参考文献を読解し、自分の言葉でかみ砕くことの繰り返しです。これは多くの技術や知識、時間、そして体力が必要となります。

 しかし、社会人となりプログラムばっかり読んでいた私は、すっかり本から遠ざかっています。当時の経験は完全に忘れ去られていました。

そのため、どうにか本を集めて記事を書いてみても

「そもそも何かきゃいいのかわからない(テーマに関する知識がない)」
「本に書いてあることがわからぬ(読解するための前提知識がない)」
「あれ?本の内容と俺の記事内容と違う(文献の読み間違い)」

完全におじいちゃんでした。

 流石にこのままじゃまずいので久保さんに相談します。久保さんは私の大学時代の先輩であり、シバ…ミリオタとしての基礎を叩き込んでくれた人です。

そこからは大変でした。

「絶対国防圏と日本本土防空をつなげられるんじゃないか?何?知らない?!」
「ひとまずアウトラインを書きな。そこから必要な情報を整理!」
「本の内容を要約してまとめろ。話はそこから!」

 着実にものを書く上での発想法と習慣づけをする毎日でした。通勤電車内と休憩時間に資料を漁り、仕事の合間に記事の構成やレイアウト考え、ちょっとずつ文章に出力していきます。

 やり方がわかっちゃえば後は根性論といかに楽をするかです。黙々と資料をあつめて、読んで、内容を書き写します。そして、体力の限界がきたら、目的を達成するためには何が必要な要素をあぶりだしてやること・時間のかかることを最小限に抑えます。

 なお、久保さんと北条さんについては私の3倍以上のスピードで記事を書き上げています。シャア・アズナブルよりも早いじゃん……

 ともあれそうやって日本本土防空に関する文献・論文を集めていると色々なことがわかっていきました。

日本本土防空研究と今後の目標について

 本土防空体制に関する研究は柳澤の論文「日本陸軍の本土防空に対する考えとその防空作戦の結末」のpp84-85に詳しくまとまっています。

その文献は以下の通りです。

  • 1920年から1945年の終戦までの軍事的な本土防空体制を述べた戦史叢書『本土防空作戦』

  • 本土防空作戦に参加した多くの軍人にインタビューを行った渡辺洋二の『死闘の本土上空―B-29 対日本空軍』
    ※ 最近こちらは光人社NF文庫にて『日本本土防空戦 B-29対日の丸戦闘機』として改訂されているみたいです。買わなきゃ。

  • 日本の高射砲部隊に勤務していた軍人によってまとめられた部分がある『砲兵沿革史』

  • 第 1 次世界大戦頃から日本の敗戦までの間の日本の防空思想の変遷をたどっている『高射戦史』
    ※ 
    この本は国立国会図書館に所蔵がなく、中古で1万円以上します。高っけぇ……

  • 戦時中は防空関係の職を歴任し、終戦時陸軍技術大佐であった浄法寺朝美による『日本防空史』

 この中でも戦史叢書『本土防空作戦』『砲兵沿革史』はどちらも国立国会図書館サーチから無料で閲覧できます。

 他にも網野が調べた中で関連した文献がいくつかありますが、それはまたの機会でご紹介します。まだ読み切れてないので……

 こうして多くの日本防空に関する書籍がありますが、これらの著作は思想・戦力・軍事・民間など各視点に分かれて記述されています。また、一部の文献はアクセスが難しく、今では読みにくいです。つまり、これらの視点を包括して記事としてまとめることができれば、今後の日本本土防空研究の一助になると考えました。

 ということで、私のこのサークルでの目標の1つとして「日本本土防空」について先行研究をまとめきりたいと思っています。

……その前にゲーリングの原稿ですね。サークル徒華新書は今年の夏のコミックマーケットに向けて『ミリタリー知ってるようで知らないシリーズ 知ってるようで語れないドイツ軍』を執筆中です。私はその中でドイツ空軍最高司令官ヘルマン・ゲーリングについて語りたいと思っています。

表紙 私が作りましたb


 ドイツ空軍総司令官ゲーリング。彼の名前はミリタリーに興味があるとどっかしらで聞くことになります。

 しかし、実際何をしていた人物か、どんな役割を担っていたのか、といわれると中々説明できない人物です。だからこそ、この男の解像度をあげ、そこからドイツ空軍とはいかなるものだったか論じること。

 それが夏コミの『徒花新書』で網野が為す「役割」でございます。

 けどそもそもの話、網野は戦後航空史をメインに調べてたので第二次大戦自体が本当の意味でミリしらなんですけどね()ここらへんは久保さんと北条さんに相談してキャッチアップします。

 というところで今週はここまでといたします。今後とも徒花新書をよろしくお願いします。

まとめ

 今月から立ち上がったサークル『徒華新書』。そして、note連載企画「ミリタリー実は知らない話、略してミリしら」。この連載開始前から原稿を書くことになっていましたが、執筆する体力が完全に衰え切っていた網野は当初からヒィヒィ言いながら書くことになりました。

 ミリタリーに限らず記事を書くうえで重要な手順は以下の通りです。

  1. テーマを決め、テーマで知りたいことを箇条書きにする。

  2. 関連書籍を集める。

  3. 関連書籍を読み、その内容をまとめる。

  4. 纏めた内容をどの順序で述べるかアウトラインを決める。

  5. 何を言いたいのか考える。

 ということで日本本土防空に関する記事を書きましたが、先行研究は各視点からまとめられており、また文献自体のアクセスが難しいものも多くありました。今後、こうした文献をもとに「日本本土防空」をまとめなおすことが網野の目標になります。

気に入ったらサポートいただけると嬉しいです。 頂いた分はさらなる調査の資金にあてます。 気になるテーマなどがあれば教えてください。