見出し画像

①上手な演技ってどんな演技?

〇皆さんこんにちは。ここでは初心者の方にも分かりやすく、順番に演技のことについて説明していきたいと思っています。演技の勉強をしたいという方はぜひご参考になさって下さい。今回のテーマは「上手な演技ってどんな演技?」です。
〇さて皆さん、そもそも「上手な演技」というのはどういう演技のことを言うのでしょう? 皆さんにとって「良い演技」とはどんな演技ですか? 「上手な役者さん」というのはどんな役者さんでしょうか? オーラのある役者さん? 感動させる演技? もっと具体的に説明してみましょう。部活や劇団の仲間がいる方は、どんな演技がよい演技なのか、お互いに意見を交換してみるのも面白いと思います。

「良い演技」は人それぞれ?

〇具体的に「良い演技とは何か」を語ろうとすると、説明するのはけっこう難しいと思います。そして仲間やお友達と語り合ってみると、「良い演技とは何か」という件については、意外に人によって違った考えを持っていることが分かると思います。
〇例えば、大きな舞台で大勢のお客さんを前にスポットライトを浴びるミュージカル俳優の方の演技は、それを求める人にとっては素晴らしいものかも知れませんが、同じことを小劇場で目の前のお客さんの前でやったら大げさ過ぎてしまうかも知れません。歌舞伎や能・狂言といった伝統芸能の演技術は素晴らしいものですが、そのままテレビドラマに出演したら不自然で成り立たなくなってしまいそうです。
〇実は「どんな演技が良い演技で、どんな役者さんがよい役者さんか」という基準や考え方はどういった場で演じるかによってまったく変わってきますし、「映画」「小劇場」「ミュージカル」といった同じジャンルの中で比べても、監督や演出家ごとに「何が良いか」という感覚や考えはそれぞれ違っています。
〇「どんな演技がよい演技か」という基準は厳密に言えば、劇団の数だけ、監督・演出家の数だけ、俳優の数だけ、観客の数だけ存在すると言えるかも知れません。ある監督には非常に高く評価された俳優が、別の監督のもとではまったく使えないと酷評されてしまった、というのもよくある話しです。ですから「どんな演技が良い演技か」ということについて、答えはひとつには絞れないのです。

「違うことを知っていること」がけっこう大事

〇「良い演技をしたいのに、良い演技がひとつに絞れないんじゃ困っちゃう!」という人もいるかも知れませんが、まずはこの「何が良いかは人によって違っている」ことを分かっていることがけっこう重要です。
〇例えば演劇部の仲間でお芝居を作ろうとする場合、「何が良いかは人それぞれ」ということを知らないまま稽古を始めても目指すものがバラバラでは上手くいきませんし、お互い自分が良いと信じているものばかり主張しあってケンカになってしまうことだってあります。
〇強力なリーダーに共感する人たちで結成した劇団と違って、部活やサークルではお互いを尊重しながらよく話し合って、みんなが納得のいくお芝居を作っていく必要があります。ただし、最初に書いた通り自分が思う「良い演技」について説明するのはなかなか難しいものです。はじめは一緒に観たお芝居やお互い知っている役者さんについて語り合い、「あの役者さんが好き」「あの劇団みたいなお芝居を作りたい」「あのお芝居のこんなところが好きだ」といったお互いの好みを理解し合うことから始めてみて下さい。自分自身や仲間の好みが分かってくると「みんなが納得のいく芝居作り」がしやすくなると思います。

〇また、特定の場所だけでなくいろんな劇団・演出家のお芝居に出演してみたいと思っている方は、現場によって求められることは違うということをよく承知しておかないと大変です。「同じように頑張っているはずなのに、前の演出家の先生には褒められて、今度は叱られてばかり…」という経験をして、何をどうしたら良いのか大混乱してしまう人もいます。
特に将来プロで活躍したいと思っている方は、早いうちから自分なりの演技論(自分が思う良い演技と、それをするためのノウハウ)を築いていくことをおすすめします。自分自身の演技論がないままいろんな人にいろんなことを言われて演技をしていると、自分としては何が良くて何が悪いと思っているのか、わけが分からなくなってしまいます。
自分なりの演技論があれば、それを基準にして客観的に監督・演出家の要求を受け止めることができます。「今回の監督はこういうところが自分の考えと共通しているけれど、こういうところは違っていて、こうして欲しいのだな」と察知できるようになれば、プロとしてきちんと現場ごとの要求に応えながら、自分自身が良いと思う役者に成長していくことができます。

〇今回は演技論を学ぶ以前の、前提となることについて説明させていただきました。ご質問等ありましたらお気軽にご連絡下さい。

※情報はどなたでもお読みになれるよう無料公開させていただいておりますが、無断での転載や引用等はご遠慮下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?