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ラリアのサッカー好きによるAリーグ基本ガイド

世界各国のサッカーリーグは一般的に8月・9月に始まるところが圧倒的多数なのに今頃開幕しようとしているリーグがある?それがAリーグです。
オフシーズン早くに報じられた日本人選手何人もの到来やビッグネームが到来した知らせも時が過ぎて忘れられ、国内外のサッカーファンは既に他のリーグを追い始めている状況ですがそれでもめげず、世界の片隅のこの色々面白いリーグの布教を改めて再開したいと思います。

まずいわゆる英語でいうところの「TL: DR」といいますか、私がここで言葉を費やしても届けられない全てがAリーグ公式の第20シーズン開幕プロモ動画に詰まっていたのでそれだけでも是非。

さて文章。基本の基本から。
Aリーグはオーストラリアのトップリーグで現時点では国唯一のプロサッカーリーグです。
男子リーグ(Isuzu Ute A-league)と女子リーグ(Ninja A-League)を合わせて「A-Leagues」の名称で知られます。今回は主に男子のAリーグの話になりますが最近では公式の情報や各種記録なども男女合同で表示するケースも。
Aリーグは比較的新しいリーグで、とついつい言いがちですがそれでも今期でなんとか20シーズン目。少しずつですが歴史も積み重なってきていますし語りたい、語り継ぎたい物語も私が知っているだけでもたくさんあります。

まずAリーグの公式サイトはこちら。様々な情報や記事・動画があります。
SNS的なものでいうとX (Twitter)インスタグラムYoutubeTikTokなどでもコンテンツを出しています。各種プラットフォームで発信してるコンテンツはちょこちょこ違いますし、各クラブが各種SNSで発信してるコンテンツもクラブによってフレーバーが違ったりするので色々チェックしてみると面白いかもです。(いずれ紹介するかも)

今シーズンは2024日10月18(金)始まり~翌年6月頭のグランドファイナルまでの南半球でいう春秋制。レギュラーシーズンは29節、それが終わったあとに上位6位が戦うファイナルトーナメントが続きます。
チーム数が13しかないのでまだまだ3回対戦する相手もいますし、あと今期はチームが奇数なので各週に試合がないチームもあるというイレギュラー仕様。(キャンベラ男子早く来てくれ-)
ファイナルトーナメントがあっても冒頭で言ったようにシーズン開幕が遅いのでとにかくオフシーズンが長いことが様々な方面に悪影響があるので引き続きの悩みです。一応オーストラリアカップ(天皇杯みたいなカップ戦)はその期間に行われるのですが。

あ、大事な事なので早めに言っておきたいのですが海外向けの配信は公式Youtubeでやってます。(男子も女子も同じアカウントで配信)
たしか前期は安定して配信されるのにちょっと時間がかかった覚えがありますが最初ダメでもそのうちなんとかなるはず。
ちなみにAリーグは多数の時間帯にまたがるリーグで時差については以前書いたこちらの記事を参照。女子の試合と合わせてほぼ丸々一日中続けて試合が見られる一日なんかもありました。またやってほしい。
オーストラリア国内の放送は地上波チャンネル10およびそのサブチャンネルとその提携有料配信先のParamount+。今期は土曜日の午後の試合と夜の試合がチャンネル10のサブチャンネル10 Boldで地上波放送だそうで、間にもちょっとした番組をやるらしいです。

Aリーグは前述の通りオーストラリアのリーグですがお隣のニュージーランドのチームも参入しています。男子リーグのチームは:

アデレード・ユナイテッド(SA州)(赤)(Reds, United)
オークランド・ユナイテッド(NZ)(濃青+黒)(Black Knights)
ブリスベン・ロアー(QLD州)(オレンジ)
セントラルコースト・マリナーズ(NSW州)(イエロー+紺)(ACLE出場)
マッカーサーFC(NSW州)(黒+白)(Bulls)
メルボルン・シティ(VIC州)(水色)
メルボルン・ヴィクトリー(VIC州)(紺色)(Victory, Vuck)
ニューカッスル・ジェッツ(NSW州)(ゴールド?薄茶?)
パース・グローリー(WA州)(紫)
シドニーFC(NSW州)(水色:シティより濃いめ)(ACL2出場)(Sky Blues)
ウェリントン・フェニックス(NZ)(黄色)(Nix)
ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(NSW州)(赤+黒)
ウェスタン・ユナイテッド(VIC州)(濃緑+黒)

です。Aリーグの特徴の一つがサラリーキャップが存在することで、他の国のリーグと比べると実力がより拮抗する傾向にありますがそれでもクラブの大小はある程度あります。例えばシドニーやヴィクトリーは伝統的に資金力が強いチームですし、セントラルコーストやニューカッスル、ウェリントンはそうでもない。
ただ経済的な差以上に観客が多いチームとそうでないチームの差が大きいです。シドニー、ヴィクトリー、ワンダラーズが動員力が強く、マッカーサーやウェスタン・ユナイテッドみたいな新しいクラブは苦労が続きます。新しいクラブの中での古株でタイトルもたくさん獲ってるシティでもそこはまだまだ課題。
20年やってると色んなクラブにライバル関係が確立していて、ダービー各種はいつでも盛り上がるしお客さんが目立って多く入ります。現地観戦はもちろん、配信でもダービー関連試合全般おすすめです。ちなみにAリーグのダービーについては以前記事を書いたので詳細はそちらに(ちょっと情報が古くなりましたが我ながら気に入ってる記事です)。

ちなみにニュージーランドからAリーグに参入しているチームにはいくつかできないことがあります。
・AFC(アジア)のクラブ大会(ACLなど)に参加不可
・OFC(オセアニア)のクラブ大会に参加不可
・オーストラリアカップでホームゲーム開催不可

この3つの他はオーストラリアのチームとレギュレーション上は何ら変わることなく運用されています。ただ必然的に移動は多い&長い(豪国内のパースも同様ですが)。

Aリーグを形作る特殊仕様のうち一番大きいのがレギュラーシーズンの後のファイナルトーナメント。上位6位がElimination final、セミファイナル(2レグ)、グランドファイナルと試合をしてチャンピオンを決めます。つまり6位でレギュラーシーズンを終えても6位までに入ってしまえばそこからまだタイトルが狙える。さらに6位以上でも順位によってファイナルをホーム開催できるかが変わってくるのでなるべく高い順位に入るのが重要。昇格・降格はありませんがとにかく順位表の広い範囲に様々な影響があり、かなり下の順位のチームでも数字上可能な限り上を狙い続ける性質のあるリーグでもあります。
タイトルに関してレギュラーシーズンで1位(通常のリーグでのリーグ優勝)をPremiers、グランドファイナルの勝者をチャンピオンと言いますがAリーグ内ではチャンピオンの方が大きいタイトルとされています(でもACLE枠はpremier)。そういうこともあってグランドファイナルは特別な試合ですし、他のファイナルの試合も普通の試合とは別の生き物でそれがまた面白い。

ちなみに前回王者はセントラルコースト。前述のように予算としては小さいクラブでリーグ戦開幕4試合連続負けながらもPremier、Champion、クラブ・チャンピオンシップ(女子との合同タイトル)、AFCカップと実質四冠でシーズンを終えました。トップチームや海外移籍に至る育成についてもこの数年で高い評価を確立したクラブでもあります。
前期はそのセントラルコーストを筆頭に守備がちゃんとしているチームがトップ3を占めたのでその傾向は今期も続くだろうとは思いますがいつでも例外はありますしこのリーグはとにかくわからない。なので順位予想?知ったこっちゃない。

色々アジアでは変わりつつあることですがAリーグでは外国人枠は5人です。とはいえ外国生まれでオーストラリア・ニュージーランド国籍を持っている人もいたり、逆に豪・NZ生まれで他の国籍を持っている人もいたり本当に様々。外国人選手は欧州からの助っ人が多いですが必ずしもそれに限らず、予算が限られる中各クラブが自分のとこにフィットする選手を見極められるようになってきていて補強のバラエティも広がっています。

その補強の広がりの例としてここ数シーズン日本人Aリーガーもかなり増えています。
Aリーグ男子だと(トップチーム限定、シーズン開幕前時点)

オークランド:酒井宏樹選手
パース: 青山景昌選手
(NSW州のNPLから参入というちょっと男子では珍しいケース)
ウェリントン: 石毛秀樹選手、長澤和輝選手
ウェスタン・ユナイテッド: 今井智基選手、指宿洋史選手、檀崎竜孔選手

7人なのでAリーグ公式は七人の侍風グラフィック作ってくれないかしらん
あと他に日本人ハーフも何人かいます。
日本人選手は女子の方にもたくさんいますがこれを書き終えてる時点でまだ各チームのスカッドが確定してないところが結構あるので別の機会に・・・?
前述の様に補強に工夫が必要になって範囲が広がり、若い選手達を支えたりお手本になれる経験を積んだ外国人選手が求められる(以前の海外経験を問わず)みたいな傾向などが日本人選手の需要が上がった背景にある・・・のかなあ。あくまでも私の推測できっともっとあるはず。
基本的にテクニカルな選手はありがたがられるのは間違いないと思いますがAリーグで日本人選手が活躍できるか、というとなかなかやってみないとわからない部分が多いです。それは日本人選手に限らず、このリーグで成功するための要素というのはあんまり明確に言えるものではないので。そういう意味でも今期は興味深く見たいと思っています。

Aリーグはそもそもそんなに経済的に裕福ではない(他国のトップサッカーリーグと比較して&豪国内他のスポーツリーグと比較して)のですが、今季は特に予算が大きくカットされたシーズンなのでどこもお金に関してはちょっと苦しい状況…のはず。ただ同時にどこのクラブもしっかりした若手が主力に増え、さらにアカデミーにちょっと前から力を入れてるのが実になってきている過程で、その影響もあって今年はオフシーズンに以前より多く海外移籍が発生していてどのチームも前期から大きく変わっています。なのでいつもに増してシーズンを始めてみないとどこが強いかとか全くわからない。
ちなみに海外に輩出しているのは選手に限らないですがそれはまた別の機会に。

Aリーグのスタンダードは他のリーグと比べてどれくらい、という話は一般的に&端的に言えば英2部と3部の間くらい、というのがコンセンサスだと思いますがなかなか比較が難しいのが現実だったりします。
例えば秋春制で暑い時期に試合が開催されることだったり、シーズンが短くオフシーズンが長いこと、さらに各チームが毎週オーストラリア+ニュージーランド各地を移動して様々な気候・天候・時間帯で試合をするのもAリーグが選手等関係者にとってハードな理由で、同時にリーグの厳密な評価を難しくする理由の例です。
さらにそういう環境下なのでリーグの試合の結果やスコアや順位がとにかく予測不能になのであまり真面目に予想するのはおすすめしません。特にお金を賭けると高い確立で失うと思います。Aリーグの摩訶不思議さは損得のレンズで見るとフラストレーションがたまるだけなのでありのままに身を委ねて楽しむのが吉。

自分が思うAリーグの魅力、といえば。
様々な背景で様々なストーリーを背負った面白いキャラクターたちが繰り広げる予測不可能な展開、ヒューマンドラマ、ゴール(しばしばゴラッソ)にセレブレーションに時々コメディ。
得点してバク宙したりスコーピオンキックでゴールしたり入らないのが信じられないゴール際のスクランブルだったり120分でのオリンピコだったり、ここぞという瞬間に起こるプレーとドラマの意外性と人間的な面の化学反応が他のリーグではなかなか見られない、というか。
それが冒頭にリンクした動画の端々に現れているわけです。
あとOBとかスタッフとかコメンテーターとかファンとかリーグを取り巻く様々なところに面白い人々がいて、みんなこのリーグを良くしようとピッチ上や中継やTwitterで色々非公式に(そして好き勝手に)やってるのもファミリー感?みたいなものも少しあったり。テレビ画面だけでなくスマホに向かってもツッコミが絶えない。
そこまで全部ひっくるめてファンは半分冗談で「Best League in the World」とこのリーグを呼ぶわけです。

ここ数年Aリーグを見始めたばかりですが毎試合追っていて毎シーズンものすごくはらはらするしめちゃくちゃびっくりするしたまにちょちょぎれるしちょくちょく大笑いしています。
試合展開一つとっても想像を超えた何かをよく投げてくるし、勝負に関係ない小ネタの宝庫でもあるし、各試合もシーズン全体も最後まで見逃せない。
なので自分が応援してるチームが調子良くなくてもAリーグ全体として楽しいことがたくさんあるのがAリーグを続けて追ってしまっている理由の一つでもあります。

今期注目の試合でいえばシドニーとウェスタン・シドニー・ワンダラーズのシドニーダービーは元々Aリーグ最大のダービーですが、今期は前者にドウグラス・コスタ、後者にフアン・マタと2人のスター選手が移籍してきたことによってさらに注目のカードに。
ただ私としてはパースのホームゲームが密かな目玉試合と思っています。パースは結構エンタメ体質(?)のチームの上に終盤に強い傾向があるので遅いキックオフ時間のアディショナルタイムの最後までどんでん返しが期待できて、これまでにも名場面が色々生まれています。

チームでいえばやっぱりチャンピオン防衛がかかっているセントラルコースト。既に開幕しているACLEの方では明らかにつまづいていますが前述の通り前期のリーグも4連敗で始めてああなったので不可能とは言い切れない、という意味で見逃せない。
監督でいえばウェリントン・フィーニックスのChiefyことGiancarlo Italiano監督。異色の経歴、戦術家としての面、カジュアルな雑談やこだわりなど人間的な面、ウェリントンを2位に導いた鉄壁の守備を解いて攻撃的なサッカーに転向する試みなど見所は色々。
そして選手で注目して欲しいのがヴィクトリーのZinedine Machach。開幕節のゴールの衝撃に始まりフィジカルとテクニカルの融合で「Velvet Sledgehammer(天鵞絨の鉄槌)」の異名で呼ばれ、個人技もチームワークもとにかく見てて面白い(entertainingかつhilariousの二つの意味で)選手です。

だいぶ長くなってしまったのでここからは読み流してもいい情報をちょこちょこ。

Aリーグは(その過程で赤字を発生させしながらも)ここ数シーズン映像コンテンツに力を入れていて試合を見るだけでは見られない魅力も捉えています。
その代名詞でもあるA-Leagues All Access公式Youtubeにもアップされています)は特に長めのシーズン1が秀逸でした。あとヴィクトリーの「Dream Big」みたいにクラブ単位のドキュメンタリーなんかもあります。

先ほどリンクした海外用配信ですがオーストラリアで配信・放送されている音声を(ハーフタイム中・試合後の諸々を除き)そのまま使っているのでAリーグに関わる実況・解説の皆さんの声にも親しんで欲しいと思っています。オーストラリアのサッカーの世界について表も裏も知っていて伝えてくれるだけでなく面白い人たちなので。
私が特に好きなのはSimon Hill氏、Robbie Thomson氏、そしてTeo Pellizzeri氏(彼の場合女子も担当するけど男子は遅い時間のパースのホームゲームを担当することが比較的多くて印象に残りやすい)。

ちなみに私の立ち位置はAリーグ男子・女子のファンですが特にメルボルン・ヴィクトリーのサポーターです。他にもオーストラリアのサッカー全般を色々追っかけていてメルボルンがあるヴィクトリア州のリーグにもかなり労力を注いでいます。現地観戦ではどこのスタジアム・グラウンドでもだいたい角っこに住むのが習慣。あと放っておくとディフェンダーばっかり見てる。
熱意はあるのですがなんせ2018/19シーズン以来のファンなのでなかなかAリーグの歴史やオーストラリアのサッカーの歴史についてはまだ不勉強なところもあり、でも知れば知るほど好きになる、守りたいし語り継ぎたいという思いは募るばかり。それと同時に面白いことは面白がりたいのでよく試合に限らず見て転がり回ってます。

あと去年に引き続き今年もUnite Roundといって特定の週末の試合を全てシドニーで集中開催するイベントが行われます。前期参加したときのレポはこちらに書きましたが今期(11月末)にも参加予定です。めいっぱい楽しんで良い土産話を持ち帰れるといいな。

だいぶ長くなりましたが最後の最後に自分がこのnoteでのんびり不定期に続けているAリーグおよびその他オーストラリアのサッカーに関するちょっとした辞典をリンクしておきます。個別に記事を立てるほどでもないミクロな単位でラリアのサッカー文化を知る助けになればいいなと思ってますが厳密な定義ではないので話半分くらいで。