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メディスン観劇後、感想吐き出し

 舞台を観て感じたことを書き出しただけで、まとまっていませんが自分用に。


 ジョンとメアリーたちは、「生きる」ということをあの密室の空間めいっぱいに使って表現していた。生き方、特性はそれぞれ違いがあって、観ている私たちはあの中で誰かに近かったり、共感出来たり、疑問に思ったりしながら、自分の中にいるジョンやメアリーたちを見つける。自分の中のもうひとりの自分にも気付けたりするかもしれない。声の大きい人、自分のしたいことを口に出せない人、丸め込まれてしまう人、それを気の毒に思う人、今のままだと嫌だともがく人、自分の正義を貫く人、過去を悔いる人、悔いて悔いて、そのままどこにも行けなくなってしまった人。
 ジョンはここへ来た理由を問われたとき、「僕がみんなと違うから」と答えた。何度か行われたこの淡々とした受け答えがズン、と私の中に鉛を落とした。みんなと違う自分を受け入れる苦しさを私は知っている。大小あれど、きっとほとんどの人がどこかでその痛みに出会っている。それをこうして淡々と言葉にするまでのジョンの道程に触れ、私自身の中の痛みにも触れた。その中でジョンの苦しさ、しんどさ、痛みを知って、もちろんそれはちゃんとは知れていなくて、でも確かに自分の中にも存在していて。それを突きつけられて、怒鳴りつけられ、晒され、そして最後、あたたかく包んでもらえたような気がした。気付いて涙が止まらなくて、ジョンの中にも光が差していたらいいのにと思う。


 白井さんがゾッとしたという「老人ジョン」の存在。それをメアリー2は、まるでジョンの前髪を掴みあげ、逸らさず見ろとでも言うように、最後に突きつけて去っていった。歯を食いしばって生きている自分の世界に戻って行った。捨て台詞を吐いて去っていったメアリー2のその背中は何かを振り切るようで、冷たく見下ろす瞳の奥に孕んだ熱が見えて、ジョンやメアリーに冷たく当たった彼女を、私は最後までひとつも憎めなかった。


 老人のような声を聞いたジョンはメアリーに「これは僕?」と聞いた。メアリーは抑揚なく「そうよ」と頷いた。それがまた恐ろしくて、切なかった。メアリーの見えている世界とジョンの世界の景色は違うのかもしれない。でもあの瞬間確かに、ジョンとメアリーは同じ世界にいて、お互いに愛を感じていた。愛の種類はわからないが、それは確かにジョンを包み込んでいた。
 メアリーが「いられるだけいようか」と聞いた。ポストトークでもあったが、「いられるだけ」の明確な定義は無い。だからこそ、この翻訳であろう言葉選びに感服する。一瞬とも永遠ともなりうるその時間は、きっと観る人によって速度を変える。無言で佇む2人を、暗くなる直前まで目を凝らして観ようとした私のように、あのシーンをいつまでだって観ていられるように感じた方もいるだろう。


 メアリーは「自分のラブストーリーが欲しい」と言った。奈緒さんは「これがラブストーリーだったらよかったのに」と話していた。メアリーの中にある愛は、象られないまま確かにそこにあって、それを私たちはそれぞれで感じられたのだろうと思う。愛とはなんだ。それは救いなのか。それが救いなのか。答えが出ないのが正解で良い気がした。


 ジョンにとってのメディスンはなんなのだろう。
また考えた。実際に薬を飲んだり打たれたりしたシーンもあったけど、たぶんそうでなくて。観るたびに何かが込み上げてくる、私たちの中にそれはある気がした。そして私達も同時に、それを受け取っている。
 観て、なんだかお腹の中が熱くて、劇場を出て息を吐き出して、清々しかったのはそういうことかなって。


 ポストトークで白井さんがおっしゃっていた。
「ジョンが最後、「誰も聞いていなかったんだ、僕とあなたたち以外」と言った。皆同じ。小さいここでやっているこの舞台も、社会からしたら見えないし意味が無い。それでもここに来てくれた皆さんと私たちにとっては、確かに真実だ」
 演劇は、語弊を恐れずに言うと生きていくのに不要だ。食事や睡眠のように、無ければ死んでしまうということは無い。
 それでも、私たちは生きていくのに必要なことだけをしていたら疲弊する。体が重くなり、心が病んでいく。そんなときに例えば芸術に触れる。今日舞台を観に行こうと思う。観劇して、気持ちを揺さぶられたり包み込まれたり踊らされたりする。そして思うのだ。明日からも頑張ろうと。
 生きていくのに必要のない舞台で、生きていくことが出来る。ああそうか、私たちは今処方してもらったのかも! そう思って腑に落ちた。

 ありがとうメディスン!
 私もいただいたので、来週からまた生きていこうと思います。

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