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【植栽家の日常】20240208 ガーデンコンテスト プロ部門の準グランプリをいただきました!



【日本ガーデンセラピー協会さま主催のガーデンコンテストで準グランプリに選ばれました!】

日本ガーデンセラピー協会さまが主催する「第3回 みんなが笑顔で元気になる! “花・緑・庭” コンテスト」(2023年6月末日締切)に応募しておりまして、本来2023年の9月末〜10月に結果発表とのことでしたが、発表が遅れに遅れに遅れて、年もまたいでの2月7日、私の応募作が準グランプリになった旨のお知らせをいただきました。

一定の評価をいただき受賞したということは、とてもありがたく光栄なことで人生の記念になりますね。

本コンクールでは第1回のグランプリも私が受賞しています。受賞作の「6つの小さな離れの家」は、老夫婦が住まう一家の思い出がたくさん詰まった家と庭を、前衛的ながら御一家の精神にもマイルドに受け入れやすいアップデートリノベーションでした。

「6つの小さな離れの家」は、建築家 武田清明さんの隈研吾事務所からの独立デビュー作でもあり、本賞だけでなく、若手建築家の登竜門でもある建築賞「SDレビュー2018」でも鹿島賞(大賞)を受賞しています。
この作品で植栽設計で参加させていただいたことは、たいへんありがたく光栄で、私の植栽家人生の中でも記念に残る輝かしい思い出のひとつでもあります。


【コンテスト第3回は「鶴岡邸」の植栽案で応募しました】

ガーデンセラピー協会さまの第2回コンテストには応募をしておらず、第3回となる今回は、住む人間だけが笑顔になるのではなく、敷地内に同居・去来する植物や他生物たち、自然環境のサイクルに溶け込んで2020年代以降の新しい自然環境となり、人間と地球環境との共存によって、人間だけでなく全ての生物、非生物がハッピーでいられる案として、建築設計:武田清明建築事務所設計、植栽設計:ACID NTURE 乙庭 太田敦雄による2021年竣工作 「鶴岡邸」で応募をしました。

撮影:浜田昌樹

人間の「もっともっと」と求める欲とか、全産業における利潤追求の結果として、温室効果ガスの排出量に歯止めが効かず温暖化が進み、地球規模の深刻な気候変動をもたらしています。

亜熱帯に近い気候になりつつある日本の都市部においては、かつては育てやすかった日本の在来種が夏越ししにくくなって栽培が難しくなっていたり、都心部では屋内で手に負えなくなって外に放置した観葉植物が無事に越冬して従来からの屋外の庭の植物とコラボ状態となっている様子なども散見されるようになり、20世紀までとはまた異なる新しい都市植栽風景、園芸文化が生まれつつあります。

これは「もともとの日本の自然ではないけれど、現代の日本の気候環境の中で維持成立している」、人間の都市生活が営まれる環境内で副次的に発生・顕現してきた「新しい都市の自然」といえるのではないでしょうか。

私は、これも人間がもたらした自然の一形態だと思っていて、同時に「現代において都市での人間生活と共存しうる自然の一形態」であるとも思っています。

撮影:浜田昌樹

「鶴岡邸」では、そんな2020年代の東京の植栽と都市の自然について考えながら設計しました。

「鶴岡邸」の植栽は、東京都心部で野良自生が見られるようになっている観葉植物が目を引いたかと思えばその足元には日本原産のシダ類や下草類が生え、既存の庭にあったモミジやビワや灯籠といった和庭テイストのボキャブラリーに寄り添ってバショウやハスイモなど、田中一村の絵画に描かれそうな日本の亜熱帯地域を連想させる植物が植えられていたりします。
観葉植物とか果樹とか宿根草などカテゴライズするといろんなジャンルの植物がフージョンした植栽であり、その「坩堝」な状態がこの雰囲気を創り出しています。

これは「亜熱帯なデザイン」を表現したいのではなく、「その場所の環境に合った植物を分け隔てなく選んで想像力豊かに庭を構成し植物を育くむのが園芸であり、都市における自然コンシャスな植物との付き合い方だ」ということを植栽で表現しています。

屋内から庭越しにその向こうの公園を見る。 撮影:浜田昌樹

本件の審査では、「亜熱帯的な植物を普及させようとする考えには同調できない」「周囲との景観的連続性にも違和感がある」との講評を受けました。

「他人の心はコントロールできない」もので、園芸においても、詰まるところ人は誰がなんと言おうが、庭に「自分が植えたいものを植える」ものだと、私は常々思っています。
「何を植えるか」は各個人が自身の美的好奇心と良心も持って行なう限り自由なもので、他人がどうのこうの言えば世間のみんなが変わってくれるものではないし、他人が自分の庭に口を出してくるのって、私が言われる側だったら普通に心地良くないと感じます。

竣工直後の「鶴岡邸」屋上。土が剥き出しですが、鳥や蝶が訪れる様々な果樹やハーブの苗や、
クローバーなどのグランドカバーの種子がまかれています。

私が言いたいのは、イマの世の中であれば、庭に観葉植物を植える人もいるだろうしバラを植える人もいるしサボテンを植える人もいる。価値観の多様化や物流の発達によっていまや植えられる植物の種類もたいへん多様化している時代です。

だけれども、植物を差別せず、それぞれの植物の個性と生命を大切にしている人々が「自分が愛する」植物を大事に育てていけば、都市は多様な緑に覆われるし、人も植物も植物を訪れる生物も穏やかに生きられるのではないかということです。

竣工から1年が経ちの完全に緑化された屋上。人はブドウやベリー類を摘んだり、
バーベキューをしたりして楽しみ、鳥や蝶やミツバチも多く訪れます。

各個人が「自分が愛する」植物を育てていくこと、つまり植物に対する欲を満たすことで大局的に地上がどんどん緑化されていくのであれば、人間の「欲」というのは無限のエネルギー源なので、庭に対する人の欲と庭の植物多様性を都市が受け入れることで都市の緑化が進み、植物による二酸化炭素の固定化に寄与できるのではないでしょうか。

大地がそのまま「持ち上げられた」ような緑が溢れ出す屋上。

植物の生命を尊重し、庭の範囲を超えてその植物が生態系に害をなさないように配慮している限りにおいては、「好きな植物を庭に植えたい」という欲求は、とても自由で創造的なものだと思います。それを、権威者が何かしら正義の論理を振りかざして「旧くからそこにあるものこそがその場所の最適解であり正義」と改心させようとするのは、果たして「正しいことなのか?」と疑問を感じます。

建築が水の循環系の一部となり、人間だけでなく植物やさまざまな生物が
あまりお互いを意識せずに共存できるコンセプトを描いた初期のスケッチ

たとえ「日本の在来種で日本の庭園の美しさを表現できる」とか「里山の生態系にならって持続可能な庭を」といった意見が政治的に正当で「正しいこと」だとしても、「庭に自分の好きなものを植えたい」という人の創造性ある欲求が必ずしも「良くないこと」だというわけではないし、それを「好ましくない」と改心させようとすることこそが各個人の生き方の自由を脅かす「好ましくない」アティテュードだと思います。

伝統的にあるもの、その土地のものを尊重する気持ちはとても大切なことだと思いますが、一方で現代の人は断熱・冷暖房が効いた家に住み、世界中のいろいろな食べ物を食べ、インターネットで世界中の情報に常時アクセスできます。

そのように時代も社会も変わっていく大きな流れの中で、日本人の生活形態も世界の様々なものを受け入れ吸収し変わっています。
なのに、庭園だけが日本の伝統に拘泥する必然性はないように私は思います。

各個人が考えた結果として「日本的なるもの」を良しとしてお庭に取り入れいていくのはとても良いことですが、「洋モノは異物で日本にはなじまない」みたいな捉え方には、私の価値観からすると違和感を禁じ得ませんでした。

なんだか釈然としないモヤモヤも感じつつ、いろんな考え方があるのだと学ばせていただいたという素直な気持ちもあり、やや批判的に評価されつつも結局のところ準グランプリをいただけたことは喜ぶべきことだろうと思ってみたりなど、なんだか複雑な気分になった今回のコンテスト結果でした。

【今日の読書】


昨年秋に訪れた京都龍安寺で拝見した細川護熙筆「雲龍図」襖絵 (全40面)にたいへん感動しまして、氏のような「多才で器の大きな」文化びとになりたいと思いながら読み始めました。

先日読んでいた中谷美紀さんのエッセイ集「文はやりたし」の中で、芸術家 辻村史郎さんの田舎暮らしの家を訪れた件があり、そこから辻村史郎さんに興味を抱き、隠者のように暮らし陶芸家であり書画も描かれる辻村さんのライフスタイルが現在の細川護熙さんの生き方に近いなぁ、なんて思っていたら、辻村さんが政界引退後の細川さんの陶芸師匠であり、そこから細川さんの芸術家人生が始まっていたということを知り、興味の一端を手繰り寄せて行くといろいろな人・事がつながっていくなぁと感慨深く思いました。



今日のピアノ練習覚え書き

【ウォーミングアップ】

ハノンのスケール全調 メトロノーム120で。

【ツェルニー 30番 6、17番】


【坂本龍一 「andata」】

レパートリーとして定着メンテ。

【坂本龍一 「The sheltering sky」】

前出の「andata」と合わせて、晩年の坂本さんの墨絵のような枯淡・彼岸的な境地の表現を追求したいなと思い、雰囲気を表現を考えながら弾き込み練習。

【スクリャービン エチュードop.2-1】

レパートリーメンテで声部分けを意識して通しました。

【パスカル・ヒメノ 演奏会用リズムエチュード 1-1 ファンキー、1-3 ボレロ】

ファンキーはメトロノームに合わせてゆっくりからかなり速いのまで数パターン。
ボレロはゆっくりのメトロノームで速度を安定させて弾く練習。

【ベートーヴェン 創作主題による32の変奏曲】

主題〜第18変奏。

【スクリャービン エチュードop.8-11、12】

11番は超絶ゆっくり通し。12番は最初の1ページ

【バッハ トッカータ ホ短調 bwv 914】

3〜4ページ。

【ドビュッシー 版画全曲】

暗譜で全曲を通しました。雨の庭はゆっくりめのメトロノームで苦手箇所のチェックも

【ラフマニノフ 楽興の時 第3、4番】

集中度上げて2曲通しで弾きました。
4番はメトロノームに合わせてゆっくりから完成の速度まで数パターン通し。


【モンポウ「前奏曲第7、9番」】

今日はお休み。

【スカルラッティ ソナタ K.466】

集中度高めて1回通し。

【スカルラッティ ソナタ K.87】

ゆっくり通し。

【ショパン バラード第2番 op.38】

今日は9~10ページめを弾きました。

【ベートーヴェン ピアノソナタ第17番「テンペスト」 op31-2】

今日はお休み。

【フランク「前奏曲、フーガと変奏曲」(バウアー編)】

なかなかこの曲まで手が回らず、春以降からスタートかな。

【ここ数日の初見練習 メンデルスゾーン 無言歌集 op.30 1~4】

メンデルスゾーンはこれまで弾いたことがなく、先月末頃から無言歌集を最初から初見で読んでいます。

音源を聴かないで初見をいたしまして、後からピアニストの音源を聴くと、全く同じ曲に聴こえなくて驚愕の毎日です😅


最後に私 太田敦雄の著作や掲載誌をいくつかご紹介します。
2024年1月16日発売(本記事執筆時点では発売前)のガーデニング雑誌「Garden&Garden vol.88 (Spring 2024)」。
巻頭特集「風景ガーデニング」にて、私 太田敦雄 / ACID NATURE 乙庭 を8ページにわたり掲載いただいています。私の設計案件の中でもこれまで一般誌で解説紹介していない2つの住宅を実例に写真豊富に、自分が思い描く植栽風景を形にしていく思考のコツなどについて解説しています。私のページ以外も人気ガーデナー、ガーデンデザイナーさんの多様な植栽事例をお楽しみいただけます。


私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。


私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。


noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨


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