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あの頃へ…5〜7…かえる

(つぶやきでは散文するのでまとめてみました)

カエルとの出会い

土間・囲炉裏・井戸がある仮住まいした農家の古民家。こんこんと湧く井戸水は、まろやかで夏は冷たく心地よい。
井戸を背に粘土層が壁のようにある。20cmほどえぐれた小さな棚があり、梅雨の時期になるとガマガエルの親子がちょこんと座っている。この子たちとの出会いは5、6歳の時。母のお裁縫道具を借りてチクチクと簡単に布を断ち、完成したのは子どものパンツ。

初めての作品

リカちゃん人形を真似た可愛いパンツを完成させた。毎日現れるガマガエルにそれをはかせてあげた。真っ白で、両足首には赤色のステッチと柔らかなフリル。お腹側に小さなリボンもある。
カエルが喜んでいるかは別として、可愛い姿に満足。
季節が移ろい、毎日雨音を聞きながら、粘土層の棚を眺めて待ちわびる。諦めかけた頃、自作のパンツを履いたカエルと再会する。

そして再会

待望の再会。
茶色のパンツに変化したが間違いなく私がはかせてあげた物。
体がひと回り成長したのか少し窮屈そうにも見える。
そのパンツのお尻には丸く穴を空けてある。5、6歳でカエルを良く知らず、猿の尻尾や魚の尾びれなど幼いながらに想像し、出すため?のそんな穴を空けていた。一年を通して、寒いだろうな、上着はいらないか…などと考えていた。
翌年は全く会えずにいた。
その翌年、親子ではなく、パンツをはいたカエルに再会。
数日後、少しゆったりした新作パンツをプレゼントした。

こっそりと部屋に連れ帰って飛び回る子を追いかけ、時には丸い目とにらめっこしたり。
ガマガエルに触ることができたのはその頃だけで、いやな体験もないのに、自分の成長と共に、なぜか苦手になった。
雨の日に紫陽花のそばで見かける小さなアマガエルが、ぴょんと窓ガラスに張りついている時、室内からガラス越しに小さな足の裏を見られる。それが好きな程度になった。