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「連れだってトイレに行く」こと、大事だったのかもなって今なら思う

「連れション」はしない

私は「友達と誘い合ってトイレに行く」タイプではなかった。
行きたいときに一人で勝手に行く。トイレに行くタイミングを判断できる子どもではなかったような記憶もある。よく授業中にトイレに行っていた。多分一般的には「そういうことにならないように、休み時間にトイレに行く」ようにするんだろうな。私にはそういう「あらかじめやっておく」という意識がことごとくかけていて、いまでも苦手なものの一つである。

「女ってなんで連れだってトイレに行くんだろうな」

これは男性からの意見だけではなく、女性もいう話だ。
前述の通り私も「一人でトイレに行けない」タイプではなく、好きな時に好きなように一人で行動することが多いからトイレも自由に行く。
だから「ねートイレ行こ」とか誘い合っていく人々を見ては「なんだあれ?」という気持ちになっていた。

「小学生の時は、友達に”ひとりでトイレに行かない”タイプの子がいて、私は良くその子の付き添いでトイレに行っていたなあ……」と思い出した。
(以前noteでも別のエピソードで紹介した友人だ)

「あっちゃん、トイレついてきて……」とよくその子に言われて付き添っていたっけ。
「あっちゃん、怖いから中にもついてきてほしい……」
えっ!?
彼女は「個室の中にも付き添ってくれ」という。しょうがないのでよく一緒に個室に入って、用を足すまでトイレの壁を見て過ごした。私は子ども心に「なんか、そこまでトイレが怖いかなあ?」と不思議な気持ちになっていた。

トイレの、怖い話

本当の「トイレが怖い」原因についてはわからないが、みんな怪談におびえていたような気がする。
具体的には忘れてしまったが、
「何番目のとびらをあけると花子さんがいる」
「紙が必要か?と聞かれて、欲しい紙の色を聞かれるが、どの色を答えてもひどい目に合ってしぬ」
「トイレの壁に目が書いてあって、それと目が合うと呪われる」
「トイレの中から手が出てきて引きずり込まれる」
などなど……だいたい思いつくようなトイレの怪談は、誰かが「ぼくの兄ちゃんが本当に見たんだけど……」みたいな語り口で聴かされるのだ。

それは子どもにとっては怖いよ。みんなで行きたくなっても無理はない。私は怖い話を聞いたところで、人といっしょにトイレに行く方が嫌すぎていつも一人で人気のない時を狙っていっていた。
いじめられていたからだ。

トイレで起きるいじめ

小学生だったし、大したものじゃないんだけどトイレは密室だし排泄するところだということもあっていじめの舞台になりがちだった。だから私がトイレに入っているということは知られてはいけない。

ある日は用を足して出ようと思ったらドアが開かない。
「ドアが開かない」系の怪談もいろいろあるので、サーッと血の気が引いて一気に怖くなってしまう。焦ってドアをガタガタやってもびくともしない。授業にも遅れてしまうのは困る。どうしよう。「ドアが開かなくなっちゃった!誰かいませんか!」声を出すと、外の誰かが「○○君たちがドアを押さえてるだけだよ。 そんなことやめなよ!」と教えてくれる。○○君たちはドッと笑いながら「出てくんなバーカ!くさい!」みたいなことを言い捨てて逃げていく。本当につらい……だから「私がトイレに入ってる」なんて弱みは見せたくないんだ。トイレに入ってるって弱みだよ。知られたいことではない。だから一人でこっそり行きたい。ぜったいに誰も来ない授業中のほうがよっぽどましなんだ。

「トイレのいじめ」を撃退したこともある。

一度やられたらもちろんその手口は覚えている。
ある日の休み時間、トイレで用を足して出ようと思ったらドアが開かなかった。「これは……また……」と息をひそめると、外で誰かが数人でドアを押さえている気配がする。
もう私は動揺しない。

「あれー? ドアが開かないな……おーい!ドンドン!ドアが開かなくなっちゃった、だれかいませんかー」

シーン……(クスクス笑う気配はする……)

「どうやっても開かないなあ。困っちゃったな……どうしよう」
今回は助け船も出ないまま、そんなことを言ってるうちに相手はしびれを切らして「バカみてえw出て来いよ!もう押さえてないからさwww」と笑う。

「えー、そうなの?関係ないみたい、全然カギが動かないし開かない。まだ押さえてるんでしょ?いい加減にしてね?」と私は言う。
「押さえてねえし……」
「ふざけんな?」
「ふざけてないよ、ドア壊れちゃったのかな。全然開かなくなっちゃった。どうしよう」
私は出て行かない。

私をからかっていじめていた男子たちは慌てている様子。「やべえ」「これやべえんじゃね?」「先生呼びに行こうぜ」などと口々に言ってトイレから離れていく。

誰もいなくなったら私は普通にカギをあけてトイレの個室から出る。
男子に連れられて先生が走ってきて、私の姿を見るなり
「ちゃんと外にいるじゃないか!先生をからかうのはやめなさい」と怒られる男子たち! あーあれは最高に楽しかった。それから閉じこめられることも無くなったので良かったな。数少ない「やり返せた」事例だ。

でも、実際のところ「連れだって行く」は正解だったかもしれない

昔の造りのままの小学校だった

私が通っていた小学校はもう廃校になったし、そもそも私が通ってた旧校舎は取り壊されていまは無くなっている。私が5年生の時に取り壊されたのだが、言い換えれば「一番古くなってる」状態の校舎に通っていたわけだ。取り壊し寸前の

前にもここで紹介したような気がするが、私が通ってた小学校の校舎はこれだ……(写真はすべて私が小学生の時に学校にカメラを持っていって撮影したもの)

取り壊し前の木造校舎

この写真の、左下の写真がトイレだ。子ども心に「とにかくコワイトイレだなあ」という気持ちがあったので、無くなるのが惜しくて写真に撮った。


トイレの様子……

トイレの隣には墓がある。

トイレの位置関係

トイレは学校の端のほうにあった。渡り廊下でつながってるとはいえ、ほぼ独立した建物で、校庭側からも入れる造りになっている。体育の授業や運動会など、土足で入ることも可能だ。通気のためかドアはあるけど完全に閉まるものではない。公園のトイレみたいなものが近いだろうか。

男女も兼用で、男性用の小便器と個室が向かい合わせに並んでいるようなものだった。

つまり、男女も分かれてない上に外部の人でも入ることが可能なのである。

幽霊もオバケも入ってくることに不思議はなかったから、怖い話には信ぴょう性があったし「怪談でトイレは怖いものだと思わせておく」ぐらいがちょうどよかったのかもしれない。現実的に「こどもが一人で行くのは危ないトイレ」だったと今なら思う。

授業を抜け出して一人で「誰もいないトイレ」に行っていた私が危ない目にあわなかったのは運が良かったのかもしれない。「小学生が同級生と連れだってトイレに行く」、いいことなのかもしれないな……とあれから何年もたったいま、初めて思ったのだ。

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