見出し画像

なりたい自分はどこにいる

今の美容室に通い始めて8年ほどになる。

毛量が多く一本一本が太い、さらにクセの強い私の髪をいい感じにまとめてくれるこのサロン。お任せで対応してくれる気楽さや普段ズボラでスタイリングが苦手なことも考慮してくれる、長年サロン難民だったわたしにとってようやく見つけた安住の地である。

毎回、「今日はどうします?」と聞かれるので「かわいくなりたいです!」と答える。そうするとジョニーデップ似のイケメン美容師さん、はは!と軽く笑い飛ばした後「…どうにかしてみます」と言いハサミを取り出す。

ん?と思わなくはないが、かわいいかはさておき実際どうにかしてくれるし、なんならリアクションとしては正しい気もする。改めてひどいオーダーしてるな、私。(当方、2児の子持ちアラフォーである)

***

しかしジョニー、微妙に希望は聞いてくれない。
そこのサロンはホームページで「ナチュラル」「エレガント」など、各美容師さんの得意ジャンルを記載しており、
ジョニーのところには「似合わせ」 と。

なるほど、その人に合った髪型にしてくれるということなのね。確かに毎回いい感じにしてくれる。その看板を掲げている以上、お客さんの希望だってなんでもかんでも受け入れるわけじゃないということなのか。

「育休中なんで、一度金髪にしたいです!」「お子さん保育園通ってるんでしょ?子どもがかわいそうだからやめときな。」「CHARAが好きなんで、髪の色一度ピンk」「やめとけ」

オシャレな表参道のサロンでオシャレな年下のジョニーデップにたしなめられる。家に帰って愚痴ろうにも、言い終わる前に夫に「その美容師さんの言うことを黙って聞いておけ」とかぶせで言い切られる。

……そもそも「似合わせ」と関係ない気もしてきたが。でもほら、せっかくなら楽しみたいじゃない。

***

オシャレって誰のためにするんだろう?と思うことがある。自分が好きで選ぶものと、周りから見て似合うとされるものが違う時のギャップ。感じたことないですか?私はわりとしょっちゅうです。
どちらが幸せなんだろうな、と思うわけです。

パッと見たときにあまりテンションは上がらないけど、店員さんに勧められて身につけてみるとたしかにいい感じにおさまるもの。学生時代にブルース・リーのTシャツとか着てたような自分のセンスなど一切信用してないわけで、大体従います。

でも一方で、自分の好きなものに囲まれてるとハッピーな気分になるじゃないですか。自分でデザイン選んだネイルとか、うふふふふって眺めてると気がついたら30分くらいたっていたり。例え周りから「毒でも触ったの?」と言われるようなことがあっても。(どんなネイルだ)

自分の好きを選ぶのか、人に良いと思われるものがいいのか。

もともと何かにつけて人の目を気にして顔色ばかり伺って生きてきた私、年を重ねるうちに物事の判断軸が外にあると疲弊してしまうから軸は自分に向けよう、と思うようになった。そうすると自然に他人と比べて落ち込むことも減った。

でも、ことファッションについては迷う。アラフォーになっても迷う。結婚して子どももいて何言ってるんだ、て話だが、迷うものは迷う。

***

先日、前髪カットでそのサロンに行った。
すぐ伸びるから前髪短めにして欲しい、なんならオンザでも、と言ってもなかなか短く切ってくれないので、1ヶ月たたずに前髪が邪魔になる。

予約できるタイミングがなかなかなく、ジョニーのいない日に指名なしで向かう。するといつもジョニーと一緒にカラーとかドライヤーをしてくれる女の子が担当してくれた。

すぐ伸びちゃうんですよねー、もっと短く切って欲しいんだけどなぁ、と言うとその子がひとこと
「ああ、〇〇さん(←ジョニー)、前髪短いの好みじゃないからなー」


い や お ま え の こ の み な の か よ

似合わせって…相手の似合うものに合わせて、じゃなく美容師さんの好みに合わせて、ってことなの?まあ、「似合う」って美容師さんが思わないような「似合わせ」ってものは存在しないのか。いやでも好み…… 似合わせって…… なに?

オシャレってなんだろう、誰のために、どこを向いているのが正解なんだろう。主観と客観、大事ですね。自分は何が似合っているか、理解してかつそれを愛せる人がオシャレということなのか。いつになったらなれるんだ、それ。けっこう長く生きてるぞ…!

***

そんなわけで今日もどうにかしてもらいにサロンに行くのです。あなた好みのアタシになります。むしろしてください。

まあメイン白髪染めだけどな。

この記事が参加している募集

いやもうほんとそんなお気になさらず、あ、でもよかったらちょっとオススメの壺があるんです、どうですか、まあそんな遠慮なさらずに。