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2022年いちばんよかった温泉宿 新潟・駒の湯山荘

さて、事実上最初の記事として、昨年宿泊した中でいちばんよかった宿である駒の湯山荘のレポを投下します。

おちゃめ系看板

駒の湯山荘は魚沼の山深く、越後駒ヶ岳の麓にある一軒宿。
「ランプの宿」として知られるとおり電気は引かれておらず携帯電波も圏外、冬季は雪に埋もれるため4~10月のみの営業という、まさに秘湯の宿といったロケーションにあります。

行程

10月下旬、この日のスタートは長岡のビジネスホテルから。
前日は鉄道開業150年記念JR東日本パス の利用最終日で、新幹線のパワーを使って八戸→七戸十和田→福島→赤湯→長岡と広範囲移動していました。

前日も天間林老人福祉センター、赤湯元湯など良い温泉にたくさん出会うことができ、万全の体調でのスタート。

青森県ではメジャーな「センター系」温泉。良質のぬるめモール泉が楽しめる

まずは長岡駅から小出駅まで移動しバスに乗り換え、大湯温泉と栃尾又温泉の日帰り入浴に立ち寄りました。

栃尾又温泉は3軒の温泉宿が共同の外湯を使用する

栃尾又温泉はぬる湯好きになるきっかけになった思い出の温泉地。
神風館にはまだ宿泊したことがありませんが、宝巌堂、自在館いずれも優れた宿です。

放射能泉のホルミシス効果については正直なところ懐疑的に思うし、ラジウムを別とすれば決して成分の濃い温泉ではないものの、泉温や質感がめちゃくちゃ心地いいんですよね。
この日も寝落ちしたりして2時間入りっぱなしでした。

アクセス

駒の湯山荘は山奥の一軒宿ということもあり直通する公共交通機関はないものの、最寄の大湯温泉から送迎を予約することが可能。
大湯温泉は小出駅・浦佐駅からそれぞれバスが出ており、宿泊目的であれば十分な程度に便数もあります。

ただ、この日はたまたま夕方まで送迎の都合がつかないということで、栃尾又から歩いて向かうことにしました。
せっかくの13時チェックイン、フルに温泉を楽しみたいですからね。

片道4km弱のゆるやかな登りで、道中ちょっとした自然歩道もあり無理なく歩ける距離です。
もっとも夏場は虫の襲来がひどいそうなので、それなりの覚悟が必要になりそうですが。

整備状況が優れているとはいえないが、吊り橋や渓谷など見どころがいくつかある

建物

外観

おちゃめ系看板2

栃尾又から1時間ほど歩くと「元」日本秘湯を守る会会員のおちゃめな看板が出迎えてくれます。
帰宅送迎時に軽くお話を伺いましたが、会とは盛大に喧嘩別れしたとのこと。
冒頭に掲載した日本秘湯を守る会会員「でした」の看板もすきです。

ザ・山奥の一軒宿の外観。夜は満天の星空が楽しめる

部屋

案内された部屋は6畳+α、トイレ洗面所別の素朴な部屋。

館内は全体的に清潔で手が入っていて、立地や価格から想定される予測をいい意味で裏切られた印象がありました。
少なくとも部屋や食堂など長時間過ごすスペースに関しては、いわゆるボロ宿・鄙び宿といったジャンルの雰囲気は感じません。トイレがウォッシュレット完備なのも助かります。

電化製品が置かれていないだけで、とてもシンプルに見えますね

写真を取りそこねましたが、お茶請けには胡桃の甘い佃煮が提供されていました。

風呂

かつては日帰り入浴も受け入れていたようですが、現在は宿泊客のみ。
男女別露天、混浴露天、混浴内湯、女性内湯、貸切露天*2、 いずれも24時間の入浴が可能と嬉しい設定です。

混浴の浴室が多いとはいえ、宿泊客数に対して選択肢が非常に多くスリッパで利用状況も把握できるので、ほぼ貸切6室と考えてしまって良いと思います。
源泉は駒の湯、駒の湯2号の2本を使用しているようで、いずれも31℃~32℃の低温ぬる湯、タマゴ臭がしっかり香るスベスベ湯。

分析書のスペック上は成分の薄い単純温泉なのですが、それ全く感じさせない高い満足感。これは圧倒的な投入量による抜群の鮮度が為せる技だと思われます。
鮮度抜群だけあって泡付きも素晴らしく、炭酸泉を除けば今まで入浴した中でも上位3選に入るであろう爆泡っぷりでした。

別棟の男女別露天、ドバドバ投入し過ぎで洗い場が水没している
川沿いの混浴露天 圧倒的なロケーション

10月下旬の山奥で31℃の露天はけっこうな寒さを感じますが、ギリギリ長湯できる良い気候環境でした。

また、加温された湯船も提供されているので、交互浴を行うことで無限になることができます。宿のご主人いわく、1日14時間以上入浴していた宿泊客もいたのだとか。
私も午後イチ、深夜を中心に総計で7~8時間は入っていたでしょうか。非常に満足しました。

蛇口式加温浴槽が近く交互浴に優れる貸切露天

食事

温泉だけでも昨年最上位クラスで良かったのですが、この宿を「いちばんよかった温泉宿」にノータイムで選出した理由は食事にあります。
事前にあまり情報を仕入れておらず大した期待をしていなかったのですが、いい意味で大きく裏切られる形になりました。

食事は夕食・朝食ともに食事処で。

ドリンクメニュー

「新潟限定」はキリン一番搾りの県別キャンペーンのやつ
日本酒180mlの選択肢が複数用意されているのは加点ポイント

ドリンクメニューは可もなく不可もなく、ひととおりの選択肢はあって不足はしないといった感じでしょうか。
圧倒的に酒が進む設計だったこともあり、注文数は必然的に伸びていきました。

夕食

席についたときのセット状況。漆器に温かいもの以外はすべてセットされています。
写真を見て気づきましたが、米も最初から配膳されているんですね。

献立表こそないものの、ご主人直々に一品ずつ料理の説明をしてくれます。
食材や調理法へのこだわりについての語りがアツく、劇場型のカウンター割烹を彷彿とさせます。
私はこういうの大好きですしどんどんやってほしいです。楽しいし学びになるので。

セットメニューは覚えている範囲で、食前のまたたび酒、山菜の炊合せ、鶏の生ハム、ウド皮の山椒漬とウド身の和え物、魚沼牛のタタキ、生きくらげのごま和え、デザートのみかんと笹餅…などなど山の幸たっぷりの嬉しいラインナップ。
食材がバラエティ豊富で楽しいですし、何より味付けにメリハリがある。保存食であるハムや漬物は塩気・酢をしっかり効かせる一方で、炊合せや和え物は上品な味付け。調理スキルの高さを感じます。

いちばんよかった一皿。いまどきこんなビジュアルの優れた炊合せあるか?
ボリュームたっぷりの漬物。赤大根の酸味、野沢菜の塩気、いぶりがっこの燻香

温かいものはできたてをサーブしていただきます。
特に天ぷらは一品ずつ揚げたてを都度運んできてくれる方式で、うれしみが強いです。

イワナ。火が通り過ぎている感はあるが、この価格帯で温かいものが出てくるだけでもありがたい
万願寺とうがらし、蓮根、椎茸。天ぷらは揚げたてに限る

〆は豚汁を鍋ごと。
どんぶり2杯強のわんぱく仕様で無事腹パンになりました。
酒も3本飲んだので、食後めちゃくちゃ苦しかった記憶があります。

大漁

朝食

漬物のラインナップが夜と全入れ替えなのけっこうすごいと思う

朝食もご主人のアツい語りをBGMに、おいしい食事をいただきます。
夕食で満足に白米を食べられなかったぶん、朝からフルブーストで完食しました。

魚沼の郷土料理である棒鱈煮と鮎の醤油漬け。最高の一皿。内陸の魚郷土料理めちゃくちゃすき
豆乳豆腐鍋。豆のうまあじが強い
なめこ汁が朝もドカンと丼2杯、スープ好きには最高のサービス

総評

大満足の上記内容で、各種割引後の支払額は酒代込で1万円未満。
(宿泊料元値は失念。\12,000~\13,000くらいだったはず)
県のクーポン\3,000と市のクーポン\1,000、魚沼米との引き換えチケットもいただきました。

最高の泉質に優れた料理、24時間温泉入り放題でこの価格帯は破格といって間違いないと思います。
あえて難点を上げるなら携帯電話の電波が入らずWifiもない(そもそも電気がない)ので、現代人の長期滞在には向かないといったことくらいでしょうか。

また今年も、春か秋に時間を見つけて必ず再訪したいと考えています。
糸魚川に何度かチャレンジしてフラれ続けている非常に行きたい温泉があるので、そこと合わせて訪れるのがベストでしょうか。
あるいは群馬・水上の足元湧出界隈も未訪なので気になるところです。関西からだと行きにくいんですよね。

施設の情報

ランプの宿 駒の湯山荘
https://komanoyu.exblog.jp/

予約方法

  • 電話予約のみ。

  • 衛星電話なので通信にタイムラグがあったり接続が悪かったりしてコミュニケーションにけっこう苦戦する。この宿の唯一の難点かもしれない。

  • 11月~4月は冬季閉鎖。

予約プラン

  • 1泊2食の1プランのみ。部屋や人数によって宿泊料金は変わるようだが、概ね1万円台前半で宿泊できる。

  • 土曜・祝日でも一人泊可能。

  • チェックインが13時と早い。フル滞在して温泉を堪能するのがおすすめ。

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