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シネマスコーレ『狂った野獣』|小劇場とポスター展、映画ファンの熱


 2023年8月27日、名古屋のシネマスコーレ中島貞夫監督特集『狂った野獣』+トークショーが行われた。

 まだ東映映画の初心者だが、自分にとって思い入れのある中島貞夫監督作品がある。ロイヤル劇場の「岐阜大学創立70周年記念イベント 岐阜がロケ地となった映画」で観賞した『人生劇場』(深作欣二・佐藤純弥と共同)である。
 『人生劇場』はこれまで何度も映画化されてきたが、この作品では特に自分の故郷でもある三州吉良への郷土愛を表現していており、とても感激した。その監督を務めたのだと後に知ってどこか親近感を覚えている。

 またKBS京都で放映された「中島貞夫の邦画指定席」という映画番組で作品解説されていたり、最近観た『太秦ライムライト』で監督役で出演されていたり、自分の中では東映京都時代劇の語り部としてのイメージもある。

 今回の中島貞夫監督特集『狂った野獣』+トークショーでは、アクション作品監督としての中島貞夫監督を取り上げ、また違った面を見られたのだった。


◇ヨシダ城のポスター展

○前回の大映映画ポスター展

 2023年5月、大映4K映画祭の市川雷蔵主演作『剣鬼』に併せて第1回ポスター展が開かれた。『大魔神』シリーズや市川雷蔵主演作のポスターなどが展示された。

 主催の方にお話を伺うと、元々”吉田さん”という方が集められた映画ポスターをご家族の方々と整理してジャンル別にして展示されているらしい。

『大魔神』シリーズのポスター(2023年5月)
大映映画のポスター(2023年5月)


○第2回ポスター展『ポスター野獣』

 今回の第2回ポスター展『ポスター野獣』では、中島貞夫監督作品のポスターがロビー一面に飾られた。B2ポスターの他にB1ポスターや立看板も有り、入った時は思わず圧倒された。

 劇場スタッフや主催者の皆さん、東映映画や中島貞夫監督のファンという事で熱の入りようが違った。

 今まで自分が参加したポスター展と言えば、博物館で展示されたポスターを見学する事が主だった。
 劇場と連携してロビーにポスターやグッズで埋め尽くす事で、これから映画に向かう雰囲気を作っていたのはとても良かったし、新鮮に感じられた。


◇『狂った野獣』の感想

 『狂った野獣』「スターのための映画」というわけではない。
 主な出演者は渡瀬恒彦+ピラニア軍団で、主役の渡瀬恒彦の台詞も比較的少ない。その分、カーアクションに力を注いでいる。脇役たる乗客一人一人にスポットを当て、随所に笑いがある。
 映画前半でバスジャックに遭ってから、「まさかこのまま最後まで走りきるつもりか?」と思っていたらまさに暴走するようにアッという間に終わった。そんな映画だ。

 比較のため、以前に観た『七人の野獣 血の宣言』という日活映画を例に出す。
 この作品では丹波哲郎+悪役俳優がメインで、普段は悪役で活躍する高品格深江章喜郷鍈治等が主役側に回り、コメディアクションを展開する。
 しかしながら、”いつもの”スターは出てこない。特にポスターに大きく写っている宍戸錠はラストの少ししか出演していないのだ。

 当時の撮影事情を考えてみると、浜田光夫が失明寸前の怪我からカムバックした記念作『君は恋人』が前後にある。日活映画では珍しい日活オールスター映画で、そちらに石原裕次郎吉永小百合はじめに”いつもの”スターの時間が割かれていたのかもしれない。

 これは、専属スターや予算の制約下にあるプログラムピクチャーの特性である。

 『狂った野獣』当時の状況はどうだったのかわからないし、単純に他社との比較はできない。しかし、何にしても普段はスターの影に隠れた脇役が生き生きとした映画は面白い。


◇お客さんと劇場の連携、一体感があるのは小劇場ならでは

坪井篤史支配人と白石晃士監督のトーク

 流行り病で混乱した情勢が明けて、こういった上映イベントは久しぶりの体験となった。
 ポスター展の主催やトークの主役である坪井支配人白石監督はもちろん、集まった映画好きのお客さん方々の熱も感じられた。

 最近、名古屋のミニシアターが休館・閉館のニュースが相次いでいる。今後の見通しはどうなるのかわからないが、愛知県内で35mmフィルムの旧作映画を楽しめらればとてもありがたい。今後とも貴重な機会があれば、是非参加したいと思う。


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