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#ep5「Change the future 母」

#ep4「Change the future 母」からのつづきです。

18時になった。そろそろ夫が乗ったバスが着くころだ。とにかく誠心誠意伝える。明日事故に遭うこと。だから決して高いところには登らないことをしっかりと伝えるのよ。きっと分かってもらえるわ。

「あれ、あのバスじゃない?」

健司が指をさしている。遠くにバスの赤と白のラインの光がかすかに見える。近づいて来るにつれて心臓がバクバクしてきた。こんなに心臓って動くんだっけ。息も荒くなってるわ。バスが目の前に着いた。

何人かが降りてくる。女の人、高齢者、太ったおじさん、また女の人。あれ?いない。次のバスかな。がっかりしそうになった時、もう一人下りてきた。

夫だった。

あぁ、動いてる。
亡くなったはずの夫が今、目の前で生きて動いている。
なぜこんな風にあなたに逢えたのかは分からないけど、私はあなたに逢えて嬉しいよ。間違いなく嬉しい。…泣きそうになった。でも泣いてる時間はない。子供たちには物陰に隠れてもらった。私は夫の後を追いかけて声をかけた。

「あ、あの!」

「え?」夫は振り返ってこっちを見た。

「あの、ちょっとだけお話いいですか?」

夫はちょっと不思議そうに私を見ている。その顔はなんか笑いだしそうな、でもそれを我慢しているようなへんな表情をしている。

「し、信じられない話だと思いますが、未来からやって来きました私」

もう最悪の自己紹介である。完全に不審者だ。それでも夫は立ち止ってくれて、話を聞いてくれている。

「…そうなんだ、で、なにか?」

「あ、明日なんですけど、事故に、、」

その時遠くから声がした。

「あなたーどうしたのー、迎えに来ましたよー!」

うわっ、私の声だ。少しでも遅いとバス停まで迎えに行ってたんだっけ。

「ごめんね。うちの奥さんが呼んでるんで、ではこれで。でもあなた、なんとなくうちの妻に似てるね。はははっ」

そういって夫は小走りで行ってしまった。私も、これで当時の私に会ったりでもしたら、かなりややこしいことになるわ。なのでそそくさと物陰に戻った。悔しい。結局伝えられなかった。自分自身に邪魔されるなんて思ってもいなかった。はぁ、どうしよう。

もうあれしかないな。私は準備を始めた。

つづきはまた。

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