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【教育】勉強が苦手な生徒を苦しめる「学習性無力感」とは。その解決策とは。
こんばんは。アカデミー神戸進学会の西富です。
今回は「学習性無力感とその解決策」というちょっとカタいテーマで書いてきます。
学習性無力感とは
「どうせ自分は何をやっても上手くいかない」
「頑張っても無駄」
と思ってしまう状態のことです。
頑張る力が湧いてこない人はこの学習性無力感という状態になってるケースがとても多いです。
詳細はこの後お話ししますが、
実際に学習性無力感に苦しむ生徒は多く
マジでもったいないな
と現場にいてめちゃくちゃ感じます。
勉強だけでなく、スポーツや音楽などにも当てはまる内容です。
(僕はサッカーをやっててコレに苦しんだ)
是非読んで頂ければと思います。
学習性無力感とは?
今回は3つの心理学用語が登場します。
①学習性無力感
②原因帰属
③再帰属訓練
です。
学習性無力感とは冒頭で書いた通り
「どうせ自分は上手くいかない」
「頑張っても無駄」
と思ってしまい、頑張る力が湧いてこない状態のことです。
このサイトからの引用になりますが
子ゾウのうちに鉄球をつけて暴れるのを防いでおくと
「暴れても無駄だ」
ということを学習し、大人になっても暴れなくなるそうです。
大人になったら鉄球ぐらい動かせるにも関わらず です。
これと同じ現象が勉強でも起きます。
学校の授業を受けて「わからない」となる。
一生懸命考えてみたり、宿題を頑張ってみたりするけど
次の授業でもやっぱり「わからない」
これを繰り返すと
自分は勉強はわからない
ということを学習してしまい、努力することを辞めてしまう。
この状態になっている生徒がめちゃめちゃ多い。
一度こうなってしまうと頑張ろうという気持ちが湧いてこないので、立て直しがとても大変になります。
集団授業はこの学習性無力感に陥るリスクを常に孕んでいます。
※なので僕は「学習を個別化(パーソナライズ化)すべき」だと主張しています。ウチが個別指導にこだわっているのもこのためです。今回のCOVID-19により図らずしも学校の対応が近い状態になりました。今回の対応の良い部分はちゃんと残していって欲しいなと思っています。
では、学習性無力感に陥った状態から回復するためにはどうすれば良いでしょうか?
原因帰属とは
まず先に知っておいて欲しいのが原因帰属(理論)というものです。
これは
失敗(成功)した原因は何だったと考えるか??
ということです。例えばテストで低い点数を取ったとして
「その理由はなんだ??」と考えるとき
①「問題が難しすぎたから」(課題)
②「勉強したトコと違うところが出た」(運)
③「どうせ自分はバカだから」(能力)
④「努力が足りなかったから」(努力)
だいたいこんな感じの反応になります。
例えば③の人は「能力に帰属する」とか「能力帰属」とか言います。
これらの中で最も健全なのは④の状態です。
④の状態は学習性無力感とは正反対の反応だからです。
「努力が足りなかったから失敗した」
という言葉は
「次、頑張れば成功するかも」
という意味も含んでいます。
「頑張ってもムダ」
という学習性無力感の反応とは正反対です。
学習性無力感の説明で登場した子ゾウも
「鉄球が動かなかったのは鍛えが足りないからだな!」
と考えることができたなら
大人になった時に、たとえ鉄球がついてようと自由を謳歌できたでしょう。
許して欲しい から「仕方ない」を欲しがる
①~③の反応は学習性無力感になる可能性がある反応です。
ちょっと黄色信号、と言ったところでしょうか。
なぜならテストの難しさも、運も、能力も努力ではどうしようもないモノだからです。
「頑張ってもムダ」という学習性無力感に近いリアクションです。
(ここでの「能力」は「才能」に近い意味で、元々備わった能力を意味しています)
でもここで不思議なことがあります。
努力次第で成功できる方が絶対にお得
ですよね。成功できる可能性があるんだから。
なのになぜ①~③のような反応をする生徒がいるのでしょうか?
ここから僕の推測というか、経験則も混じりますが、それは単に
許してほしいから
だと思います。
低い点数を取ったことを責められたくない・怒られたくない・許してほしい
こう願う彼ら・彼女らは
「テストの点数低いやん!」
「問題が難しかってん」
「ほな、しゃーないな」
「勉強したトコと違うトコ出てん」
「ほな、しゃーないな」
「数学苦手やねんもん」
「ほな、しゃーないな」
なんて展開を期待してるのかも。
「仕方ない」=「あなたのせいじゃない」を欲しているのかも。
(もちろんそんな展開になるハズがないんですが。)
つまり、彼ら・彼女らは
「成功」よりも「許し」の方が欲しい
再帰属訓練とは
ちょっと脱線しましたが、
学習性無力感に陥った状態から回復するには?
というテーマに戻しましょう。
それを研究したのがドウェック(Dweck)という人です。
ドウェックは①~③の原因帰属を持った子どもたちに以下のような実験をしました。
問題を解くのに失敗した子どもたちに
「努力が足りなかったためだ」
と励まし(非難ではない)の声掛けをし、
その後に本人が自分自身の力で解くことができる問題を与える
これを25日間続ける
というモノです。
こうすることで、子供たちの無力感が大きく改善された
という研究が1975年に出されています。
これがかの有名なDweckの再帰属訓練です。
(かなり端折りました)
「頑張れない」と「サボってる」は違う
このDweckの再帰属訓練の結果と、僕が勝手に言ってるだけの経験則を合わせると
①学習性無力感は適切な声掛けとサポートによって改善することができる
②でも「本人が自力で解ける課題を与える」が今の学校で無理すぎる
③個別指導ならできるんじゃないか?
④でも「許してほしいモード」が発動しないような配慮が必要
となります。
ここまでダラダラと書いてきましたが、最後にひとつだけ強調させて頂きたいのが
「頑張れない」と「サボってる」は違う
ということです。
学習性無力感はいわば自己防衛のために起こる現象です。
努力しても、上手くいかない。
再挑戦しても、上手くいかない。
そうやってたくさんの傷を負ってきた子どもが、これ以上傷つかないために脳をOFFにしていると言い換えることもできます。
たいていの場合、彼ら・彼女らは
勉強できるようにならないと。
そのために努力しないと。
と、頭ではわかってます。
ただ無意識が
「お前はそうやって挑戦して、何度も傷ついてきたじゃないか」
とブレーキをかけてしまうのです。
だから、頑張れない。
頭ではわかっていても、心がついていかない。
この状態は「サボってる」とか「手を抜いてる」とは明らかに違う状態です。
「頑張れない」と「サボってる」をちゃんと区別する。
そして、頑張れないという状態の子どもには適切なサポートをする。
(プレッシャーの緩和・声掛け・自力で解ける課題を与える)
Dweckの再帰属訓練には「そんなに上手くはいかなかったよ」という逆の研究結果も出ているようですが、僕の指導経験上は適切にサポートすれば良くなるケースも多いです。
(時間はかかります!)
この記事は元々ウチの塾生や保護者の方に向けて書いているつもりだったんですが、せっかく一般公開されてるnoteだし、
この記事が一人でも多くの方の目に触れて、理解ある大人が増えること願います。
【アカデミー神戸進学会】
神戸板宿・宝塚山手台にあるコーチング型個別指導の専門塾です。「学習のプロ」が生徒の学力を細かく観察・分析し、学習法・計画法・キャリア形成に特化した指導をしています。 noteでは塾生向けに学習法・受験・進路・キャリアについての情報を 保護者の方向けに教育・受験・キャリアについての情報を発信します。
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