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赤く染まる


まだ
寒さを   さほど感じぬ秋深き頃
山の集落では力の弱い女子供ばかりを狙って

1人また1人と神隠しが続いていた

きっと山に住んでいる鬼の仕業だと
村人達は山狩りを始めた

ある真夜中山狩りの最中

1人の若者が何かを嗅ぎ付け
刀を抜き山道を走り抜け何者かに切りかかり
それは恐ろしげな叫び声をあげ

呆気なく殺られた

その者は髪や髭が伸び放題で垢にまみれ
薄汚れた ふんどし姿の大男であった
集落の者達は鬼だ鬼を殺った!と喜んだ

実際その大男の口や歯は血でどす黒く汚れており思わず鼻を覆うような生臭い臭いがしていた

それ以来神隠しは収まったが

あの大男が本当に鬼…だったかどうかは知る術もない

人喰いだったのは事実かもしれぬが…

山道に見事に咲いてた白い彼岸花は
その時飛び散った鮮血を浴びてから
まるで血の様な赤い色へと変わり

二度と白い色には戻らなかった


そして

寒さが厳しくなり始めた初冬の頃

また

ポツリ…ポツリと神隠しが始まった…


今度こそ

本当に鬼の仕業なのか

それとも

また

別の人喰いの仕業なのか…


そういえば

あの大男を切った若者は

彼岸花と同じ様に人喰いの血を大量に浴びたのだが…

どうも最近

その男の口から


やけに

生臭い臭いがしておりまして……


                                             『なつのあや』







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