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狐火


深夜の帰り道

人々が眠りについた静かな闇の中

突然の寒風が耳元でごぉっと音を立て
その冷たさに思わず身震いしながら両腕を抱く

通り沿いの家の灯りは何処も消え
この世に1人取り残されたような気持ちで
街灯も無い細い蛇のような道を歩く

唯一の灯りである月が流れる雲に隠れ
辺りがさらに深い闇に包まれると同時に
近くで大きなカラスの鳴き声

左側の視界の隅にチラリと何かが見え

そちら側の竹林を見ると
薄ぼんやりと青白い炎が
ゆらりゆらりと揺れながら
見えたり見えなくなったりを繰り返し
徐々にこちらへと近づいて来ている

あれはまさか

            狐火…?

と思った瞬間

寒さとは違うゾクリとした震えが止まらず
月がすっぽり雲に覆われた漆黒の夜気の中

叫びたいのをこらえながら

二度と振り返らず

家へと向かい

足音を響かせ懸命に走り出す


するりとほどけたマフラーが夜風に舞って

蛇のような暗い細道に

落ちていった…








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