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『人間の建設』No.18 科学的知性の限界 №1

小林 私がおうかがいしたいのは、そういう数をもととした科学の世界、そういう方程式の世界を、たとえばアインシュタインの考えていた世界はこういうものであると、言葉にすることはできないのかということです。
岡 なかなかできないでしょうね。できれば、だれかやっているでしょうね。

小林秀雄・岡潔著『人間の建設』

 数学も個性を失っている、という話から進んで、岡さんは、現代(=当時)を古代ローマと同じく暗黒の時代、功利主義の時代、知力の低下の時代といいます。そして、水爆の開発なども引き合いに人類の未来への懸念を口にしました。

 次に科学的知性の限界に話が移ります。

 小林さんが、言葉による表現の問題について批評家の立場から岡さんに問いを投げかけました。科学の世界、科学者の考える世界というものを言葉にすることの可能性について。

 岡さんがこたえて、その困難性に言及します。それは難しいだろうと。

 科学者の世界を言葉の世界に、言い換えれば、皆がすこしでもわかりやすい世界に引き寄せられないものかと小林さんは思ったのでしょうか。

 この対談の行方が気になるところです。

 対談からすでに数十年経過した現在、原水爆はなくなってもいません。功利主義も。岡さんのいう暗黒時代はこれから先もずっと続くのでしょうか。

 いっぽうで、数をもとに発展した科学と、その応用の世界は、いまやIT産業などと結びつき変容しています。

 いま、お二人が天上から降りてきたらどんな話をしていただけることでしょうか。


――つづく――

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