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トルストイ『人生論』、読んでいます。1

トルストイの『人生論』。この本を読みながらしていることがあります。各章から、エッセンスと思われる一文を引用して「つぶやき」でnote記事に。この複雑で難解とおもえる本の内容を読みとき、読みこなすための作業として……。ここまでをひと区切り。通しで振りかえりたいと思います。

 今回は、第一章から第十二章までをまとめました。

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第一章
 人にとって何より重要で、それだけが必要なもの、すなわち自分の個我は、やがて滅びてしまい、……生きていると自分に感じられないもの、……たたかい合い、交代しつづけてゆく存在たちのこの全世界ーそれこそが本当の生命なのであり……、永久に生きつづけてゆくのである。

第二章
 人間の生命のこの内的矛盾は、インドや、中国、エジプト、ギリシャ、ユダヤなどの賢人によって非凡な力と明哲さで言いあらわされた。そして、大昔から人間の理性は、さまざまな存在間のたたかいや、苦悩や、死などによって滅ぼされない人間の幸福の認識に向けられてきた。

第三章
 人類がそれによって生き、教育されてきた、そしていまでもそれによって生き、教育され続けている、人生の偉大な教師たちの教えがこの社会で占めている地位くらい、現代の社会が盲従している知識の誤った傾向が鮮烈にあらわれているものは、ほかにあるまい。

第四章
 科学者と自称する学者たちの教えは、生命についてのこうしたもっとも粗野で原始的な観念を、唯一の真実なものと認めているのである。……人類が何千年もかかってあれほどの努力と苦労の末にぬけだしてきた無知の暗黒世界へ、人々を組織的に連れ戻そうとしているのである。

第五章
 天上の生命の神秘を説くパリサイの徒の教えも……行為の指針を与えてはくれない。だが、行為の選択において指針がなければ、人は生きてゆけない。ここに至って人は……もはや判断にではなく……どの人間社会にも存在し続ける外面的な生命の導きに従うのである。

第六章
 他の人たちも自分と同じように、今やっていることを何のためにしているのか知らずにいることくらい、わかっている。理性的な意識が偽りの教えをのりこえて成長し、人が人生のただなかで立ちどまって説明を要求する時は、訪れつつあるのだ。

第七章
 人が自分の生命とよんでいるもの、すなわち誕生以来の生存は、決してその人の生命ではなかったのだ。生まれて以来現在の瞬間までずっと生き続けてきたという観念は、意識の欺瞞であり、……理性的な意識がめざめる際に過去の生命についての観念が作りあげられたのである。

第八章
 人間の生命を誕生から死までの動物的生存とする誤った教えのみが、理性的な意識のあらわれに際して人々が踏み込む、あの苦しい分裂の状態をもたらすのである。この迷いにおちこんでいる人には、自分の生命が分裂してゆくように思われる。

第九章
 個人的な幸福がこれほどはっきり粉砕されてしまった以上、個人的な生存をつづけてゆくことは不可能であり、その人間の内部には動物的なものと理性的な意識との新しい関係が確立しはじめる。その人間は真の人間的な生命に向かって誕生しはじめるのである。

第十章
 それはまだ完成しきっておらず、われわれの生命の中で現に行われているものだからだ。幸福を達成するために、この法則を遂行すること、理性の法則に自己の動物的なものを従属させること、そこにこそわれわれの生命もあるのだ。

第十一章
 動植物や物質の存在を支配する法則の研究は、人間の生命の法則を解明するのに有益であるばかりか、必要ですらあるが、ただしそれは、その研究が人間の認識の主要な対象である、理性の法則の解明を目的としている場合に限るのである。

第十二章
 対象が時間と空間によって正確に規定されていればいるほど、よくわかるように思うものだ。ところが実際には、我々が完全に知っているのは、時間によっても空間によっても規定されないもの、すなわち幸福と、理性の法則だけなのである。

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「つぶやき」は要約でもあらすじでもない「抜き書き」でしたが、このようにひとつにつなげてみることで、論旨をつかみやすくなると思いました。

 各章の中から一文を選択するときに、章によっては複数の候補を立てて迷いながら決めたこともなんどか。それもまた読書の楽しみといえるかも。

 ただ、本書『人生論』を河の流れにたとえたときに、ここに船を浮かべても、あそこに船を浮かべてもいずれいき先は同じ。そうわりきって好みと主観で選びました。トルストイからはお叱りを受けるかもしれませんが。


 今後、つづく各章についても「つぶやき」とそのまとめとしての「読んでいます」をシリーズでお届けしたいと思います。



※ハスつか さんの画像をお借りしました。

最後までお読みいただきありがとうございました。記事が気に入っていただけましたら、「スキ」を押してくだされば幸いです。