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読書びより

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気ままな読書で感じたことや役に立ったことを書いています
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#読書

『人間の建設』No.19 科学的知性の限界 №2

 上の会話に至るのは、これに先立つ会話の中で、小林さんが岡さんに「ベルグソンとアインシュタインの衝突」という話を提示したからです。  岡さんにはその話が初耳だったようで興味をしまします。そこで小林さんはフランスの哲学者ベルグソンの著書『持続と同時性』のアインシュタイン論にまつわる出来事を説明しました。  ベルグソンがその本で、物理学者としてのアインシュタインの表現を誤解して述べたのが発端で、逆に科学者からの反対が起こり、ここが違うじゃないかと指摘されて、ベルグソンはその本

『人間の建設』No.18 科学的知性の限界 №1

 数学も個性を失っている、という話から進んで、岡さんは、現代(=当時)を古代ローマと同じく暗黒の時代、功利主義の時代、知力の低下の時代といいます。そして、水爆の開発なども引き合いに人類の未来への懸念を口にしました。  次に科学的知性の限界に話が移ります。  小林さんが、言葉による表現の問題について批評家の立場から岡さんに問いを投げかけました。科学の世界、科学者の考える世界というものを言葉にすることの可能性について。  岡さんがこたえて、その困難性に言及します。それは難し

『人間の建設』No.17 数学も個性を失う №5

 話題は、数学の抽象化の問題から、世界の知力の低下に移っていきます。現在(=対談当時)の世の中は功利主義が世界をおおっていて、ローマ時代とそっくりになってきているというのです。 〈すべての道はローマに通ず〉という言葉にあらわされるように、ローマ帝国では、道路や水道などのインフラが整備されて都市には石造りの、数階建ての建物もつくられていました。  公衆の浴場が人々の社交の場にもなっていたともいいます。テレビや書籍で観たり読んだりするかぎり、ずいぶんすすんだ社会のようにも思え

『人間の建設』No.16 数学も個性を失う №4

 数学と個性ということについての対談が続きます。  現代(当時)の数学の世界が、概念に概念を積み重ねていく積木細工のようになっていてますます抽象的な度合いを深めている。  すると、一番下の積木から理解していかないと、天辺の積木のことがわからない。そして積木がますます高くなっているというのです。  数学を専門とする人が、大学、院と学んでもまだ時間が足りない。これではやっていけなくなる。「いまが限度だ‥‥‥もういっぺん考え直さなければいかぬ」と岡さんは言います。  数学にお

『人間の建設』No.14 数学も個性を失う №2

 岡さんがいう「内容のある抽象的な観念」とはどんなものなのか。  辞書によれば「抽象的」という言葉の意味は、多くのものの中から共通するものを抜き出し、一般化して考えることです。(肯定の意味合い)  もう一つの意味は、物事の実態や実際の姿から離れていて、具体性に欠けるというものです。(否定の意味合い)  つまり、言説や理論がものやことに沿っているかいないか、具体性に準拠しているかどうか。と考えれば少し見えてくるかもしれません。(※1)  抽象化の度合いが過ぎたり、抽象の上に

母のために選ぶ、児童書。16(ひとくぎり)

90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。電子書籍は母には使いこなせません。ルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。ならばと、視点を変えて、児童書にアプローチしてみました。これは、いけるかも! 📗  18セット目の3冊、通算54冊めのご紹介です。母の感想はどうだったでしょうか、ご報告します。 ・『かみさまのベビーシッター』 廣嶋玲子作/木村いこ絵 理論社刊 ・『本屋さんのルビねこ』野中 柊作/松本 圭以子絵 理論社刊☆

『人間の建設』No.11 国を象徴する酒 №3

「日本酒」からはじまった話題。ここでは、岡さんが小林さんに批評家の資質について質問しています。  ここで、詩人とは、肩書きないしなりわいとしての詩人を言うのではなく、精神のあり方を言っているのだと思います。  に対して、小林さんが肯定しています。つまり小林さん自身も、詩人というわけではないが、その精神で以て仕事をしているということでしょう。  岡さんが、批評の本質について「直観と情熱」といっています。つまり、詩人というものの精神のあり方・態度が本質的にこの二語に集約される。

『人間の建設』No.12 国を象徴する酒 №4

 批評の本質という話で、岡さんが「直観と情熱」といい、小林さんが「勘」とも言いました。それを受けてここでは岡さんが掘り下げていきます。 「勘」は単なる偶然ではなく、知力であるといいます。批評は無論のこと創造のはじまりには「勘」というものが働いているというのですね。勘が作品に触れてなにものかをさぐりあてる。と、自己の主観がそこに光を当てて文章なりなんなりを紡ぐ。そうすると新しい意味を持った内容が生成されてゆく。  岡さんが『春宵十話』という自分の随筆を、小林さんに批評しても

『人間の建設』No.13 数学も個性を失う №1

 絵や小説の個性、酒の個性から今度は、数学と個性の話題に移ります。 「数学の抽象化」とはどういうことかと小林さんが聞いたら「観念的」とまるで禅問答のように岡さんが答えます。に対して、小林さんが「わかりません」と、もう少しかみ砕いた、わかりやすい説明を岡さんに求めました。  数学の抽象化ということを、小林さんは、自分ではおそらく理解していたのかもしれません。でも、われわれ読者を置いてきぼりにしてはなるまいと、この言葉も持つ深い意味を理解できるよう、岡さんみずからの言葉での解説

母のために選ぶ、児童書。15

90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。電子書籍は母には使いこなせません。ルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。ならばと、視点を変えて、児童書にアプローチしてみました。これは、いけるかも! 📗  17セット目の3冊についてご紹介します。通算51冊目になります。母の感想はどうだったでしょうか、ご報告します。 ・『すみれちゃん』 石井睦美作/黒井 健絵 偕成社刊☆ ・『オバケたんてい』 藤江じゅん作/吉田尚令絵 あかね書

母のために選ぶ、児童書。14

90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。電子書籍は母には使いこなせません。ルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。ならばと、視点を変えて、児童書にアプローチしてみました。これは、いけるかも! 📗  16セット目の3冊についてご紹介します。通算48冊目になります。母の感想はどうだったでしょうか、ご報告します。 ・『アニメ版 ちびまる子ちゃん』 さくらももこ原作 金の星社刊☆ ・『あやめさんのひみつの野原』 島村 木綿子作

母のために選ぶ、児童書。11

90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。電子書籍は母には使いこなせません。ルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。ならばと、視点を変えて、児童書にアプローチしてみました。これは、いけるかも! 📗  13セット目の3冊についてご紹介します。通算で39冊となります。母の感想はどうだったでしょうか、ご報告します。 ・『ながいながいペンギンの話』 いぬいとみこ作/ 山田三郎絵 理論社刊 ・『なんでも魔女商会 お洋服リフォーム支

母のために選ぶ、児童書。12

90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。電子書籍は母には使いこなせません。ルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。ならばと、視点を変えて、児童書にアプローチしてみました。これは、いけるかも! 📗  14セット目の3冊についてご紹介します。母の感想はどうだったでしょうか、ご報告します。 ・『ルドルフとイッパイアッテナ』 斉藤 洋作/ 杉浦範茂絵 講談社刊☆ ・『にわか魔女のタマユラさん』伊藤充子作/ながしまひろみ絵 偕成

母のために選ぶ、児童書。10

90歳を超えて、さすがに母も小さい文字が読みづらい、眼鏡をかけても本が読めないというのです。電子書籍は母には使いこなせません。ルーペ眼鏡も、母には使いにくいようです。ならばと、視点を変えて、児童書にアプローチしてみました。これは、いけるかも! 📗  12セット目の3冊についてご紹介します。通算で36冊となります。母の感想はどうだったでしょうか、ご報告します。 ・『クーちゃんとぎんがみちゃん ふたりの春夏秋冬』北川佳奈 作/くらはしれい 絵 岩崎書店刊☆ ・『転校生は忍者