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ココアを飲みながら

今日は空がとてもきれいだ。青空がどこまでも広がり、清々しいほどにまっさらな空。なんてきれいなのだろう。普段は太陽と月の出会いを邪魔する雲でさえも美しい。自転車で職場までの道を急ぐ私には、ずっと変わらない当たり前の景色に写ってしまう。

当たり前がいきなり私の世界から消えたら、どうなってしまうのだろう。

 毎日こまめにメッセージの返信が来てたわいのないやり取りをして、時間があるときにはいつでも電話をしてきた私たち。彼は30歳にして東京という土地に夢を描き、田舎から上京してきた青年。仕事はアルバイトの掛け持ち。東京に来て美容整形をして生まれ変わたかのよう。実際のところはよくわからない。美容整形は、ただ見た目が美しくなるのではなく、自信がつくからきれいになったり、かっこよくなったりすると聞いたことがある。そのせいか、彼はどこから出てくるのかわからない自信に包まれている。
 視野を広げたいと思い、安定を手にしながら冒険している私には不安定な彼の生き方は真似できない。きっと二回目の人生を歩んでいる感覚なのだろう。 
 彼との出会いは最近流行りのマッチングアプリだ。最初は背も178センチと長身で爽やかな雰囲気を持った彼に惹かれていた。そのうちに電話やアプリ外でのメッセージのやり取りをするようになって彼が整形していてアルバイト制なこと知る。どうやら、これまでにアプリで出会った女たちにも、アルバイトで生活していることに指摘されてきたようである。その点について聞きたくなってしまう女性は通常の価値観を持っているのだろう。一方、私といえばその事実に純粋に引いてしまい、むしろ自分の考えを伝えることを躊躇した。そういった意味では私は、弱虫なのかもしれない。
 だが、きっと自分が正しいと思って生きているものを否定されることを嫌うし、それをしてくる人に行為を抱くこともしないはずだ。嫌われる勇気のない私は、気にしないと強がって見せる。相手にわかっていないと期待しながら。だから、それを指摘できる人はきっと強くて少しならず愚かなのだろう。わざわざ初対面に近い人傷つけるリスクを取らなくてもいいのにと思ってしまう。

本音の本音は心の奥底に今はしまっておいて、本当の意味で仲良くなれたときにじわじわといやらしく漏らして行けばいいのだから。その頃にはきっと許せるようになっていくだろう。

P.S:彼は私がダイレクトに言わなかったことで今でも仲良く関係性が続いている。そして、ちゃんとしようと言って、安定した仕事に就こうと努力を始めたようだ。

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