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僕はあの娘に食べられたい

―食材からの贖罪―

小野美由紀さんの短編集「ピュア」
https://www.amazon.co.jp/dp/4152099356/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_zjVJEb7WG2SEH
を読んで。

ピュア

収録の表題作「ピュア」を読んで。短編「ピュア」は
(https://www.hayakawabooks.com/n/n4a87df16f286)
にて、全文読めます。

―もし女性が性交後に相手の男性を食べないと妊娠出来ない世界だったら―

 僕は、あの娘に食べられたい。
いや、同い年だからもう「あの娘」という年齢ではないか。しかし、敢えてあの娘と呼ばせてもらう。

 今、好きになりかけている憧れの人はいるが、しかし食べられるなら、やはりあの娘だ。
 高校時代に好きだった娘。僕は彼女の事を好きな事を公言していたが、彼女も満更でもなさそうで、二人の雰囲気は決して悪くなく、きっとお互いに甘酸っぱい感情を抱いていただろう。僕が上手く立ち回りさえすればきっと付き合う事が出来たと思う。しかし、僕は酷い立ち回りをし、結局振られた。そのうえ諦めきれなかった僕は、学生時代には彼女の実家から携帯電話の番号を聞き出し、何度も電話するというストーキングを行い、最終的には電話に男性が出て「彼女が迷惑している」とまで言われた。そんな酷い事をしてしまったあの娘になら食べられたい、贖罪の意味も込めて。
 何なら、食べられる前にSEXが出来なくても良い。いや、したいが、それよりも僕の事を
美味しく食べて、その事で少しだけ僕の事を許して欲しい。

 美味しく食べるために僕の事を調理して欲しい。僕の事を食べるなら、一番美味しいのはきっと肝臓だ。脂肪肝で超音波検査をすると脂肪で真っ白に映る僕の肝臓は、フォアグラ状できっと美味しいと思う。ソテーが良いだろう。脳みそも一般に珍味だと言われている。蒸して、そのまま食べても良いが、ものの本によると茶わん蒸しに少し入れると、物凄くコクが出て美味しいらしい。僕の脳みそを好きな食べ方で食べて欲しい。

 人の身体の中で最も筋肉量が多いとされているのは腿の筋肉だ。なので腿の筋肉は厚切りのステーキにしてレアで食べて欲しい。肉質はあまり良くないかもしれないから、塩胡椒だけでなく、シャリアピンソースあたりで味付けして美味しく食べてもらえれば嬉しい。
 肩の肉は回鍋肉はどうだろう。今、流行りの甘い味付けでなく辛味噌風味の味付けが僕の好みなので、あの娘にもその味付けで食べて欲しい。クック・ドゥの回鍋肉のソースは辛味噌風味だし、お手軽なのでお勧めだ。肉に下火を通すときは炒めるよりも軽く茹でた方が肉の仕上がりが柔らかくなって美味しいと僕は思う。


 脛の肉はありきたりにすじ煮込みにして、腕と背中の筋肉はあまりないので、薄切りにして生のまま生姜と醤油で刺身で食べるのが良いんじゃないかな。腹筋には表面に脂肪が多めについていると思うので、角煮なんかどうだろう。肝臓以外の内臓は、内臓料理にあまり詳しくないので、ありきたりにもつ煮込みか、ホルモン焼きか、あと他に好みの料理方法があるなら、その食べ方で食べてもらって構わない。


 そして、最後にこの部分だけはこの食べ方で食べて欲しい。胸の肉が残っている訳だが、これを酢豚ならぬ長崎風の酢拝骨(スーパイコー)で食べて欲しい。酢拝骨(スーパイコー)は豚肉の代わりに骨付きスペアリブにした酢豚だが、これを食べる事によって肋骨まで食す事になる、骨髄まで。
僕の事を骨の髄まで食して欲しい。そして更には、その甘酸っぱい味付けで、高校時代の一時だけでも互いに胸の内に抱いていた甘酸っぱい想いを思い出してもらえたなら、もう何も思い残すことはない。


 僕は彼女が僕を美味しく食べるために調理している姿を想像するだけで興奮する。そして少し救われる・・・いや慰められると言った方が正確か。
彼女に美味しく食べて貰って、その美味しさで少しだけでも僕の事を許して欲しい。
 もしもだが、仮にストーキングをした事も含めて「あんな事もあったね。」なんて言ってもらえたなら、僕の魂は「ピュア」の世界で救済されるだろう。

僕はあの娘に美味しく食べられたい。


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