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俳書メモ

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俳句関連本の読書メモ
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#俳句

硬直した俳句を脱したくなる『余白の祭』

恩田侑布子の評論読書月間の締めくくりは、 である。「新しい俳句を詠むってどういうことだろう?」と漠然と思ってきたけど、そのヒントに満ちた本でした。 「俳句を硬直させない」ための提言が多角的になされています。引用箇所たくさんですので、早速参ります! 定型詩人っていいな。 上野千鶴子が若い頃、10年間俳句をやっていたことにびっくり。 ムツオさんの声が甦りますね。 グサっときますね。 出来はさておき自分は、割と内発的に作句しているつもりだったので背中を押された気になり

俳句の真髄がわかった気になる『渾沌の恋人』

心を掴まれる本に出会うと、その作家の本をまとめて読みたくなる。俳句関連だと、『この俳句がすごい!』を読んであと、小林恭二の本を一気読みした。 それ以来なかなか出会わなかったが、先日読んだ恩田侑布子の『星を見る人』、これには大分ヤラれた。 というわけで僕の中で、恩田侑布子読書月間が始まった。まずは からである。 読んだ結果。 すごい本だった。 これまで読んできた俳論の中で、俳句の真髄に最も迫った本だと思う。 歴史的な詩論を踏まえながらも、キャッチーに俳句を論じている。

たくさんの俳人に会いたくなる『およばずながら』

最近、同僚がポケモンカードを始めた。 大会に出てみたら、「みんないい人だった!」と言っていた。 その話を聞いて、「わかる気がする。俳句もそうでさ……」と話が弾んだ。 そう、人が交流する嗜みは、和を尊ぶことが求められる。 いわんや結社の主宰ともなれば。 僕は、結社の主宰の先生と話したことは数回しかないが、どの先生も魅力的だった。結社の先生方は、自身の句業のみならず、「育成」的な側面も結構な割合担っているからだろうか。声のかけ方が上手な気がする。 そんな先生方と、「俳句総合

鑑賞の視座が上がる『星を見る人』

カミングアウトしよう。 俳句の鑑賞文を読むのが苦手である。 鑑賞文を読むと眠くなる。 僕にとって、鑑賞の本や、俳誌の鑑賞コーナーを読むのは苦行だ。 どうしてか。 紋切り型のテクニカルな話になりやすいからだ。鑑賞は基本的に、「どう読んだか」と「なぜ素晴らしいか」を述べる必要がある。そして俳句が一定のルールに則る文芸である以上、どうしてもお決まりの説明が多くなる。 その結果、俳句の鑑賞文というのは、ペーパーテストの解説や、ニュース記事のように、ある種のフォーマットに沿った

一緒に俳句を苦しみたくなる『俳句脳』

あさって長野の諏訪に行く。 そのためのガイドブックを地元の図書室に借りに行った。 うちの市は人口8万で、図書室が6つある。 その中で一番小さい図書室に初めて行った。 目的のガイドブックを見つけて、 全く期待せずに俳句関連のコーナーも見てみた。 古い歳時記と、芭蕉関連のエッセイと、夏井先生の入門本があり、 「まあ、こんなもんかな」と思っていたら、一緒にこの本があったのだ。 黛さんと茂木さんで対談本を出していたとは…! あと黛さんの句集『B面の夏』もあって、近隣住民にファン

もっと写生したくなる虚子の俳論三部作

虚子の俳論三部作を読んだ。どれも薄いので、一気に読みやすかった。 結論、もっと早く読んでおけばよかった。 たまに話題になる「写生とは?」について、虚子がわかりやすく回答している。あと随所で「〜なのが俳句である」と、言い切ってくれるので、迷ったときに参考になりやすいと思う。さすがは大虚子! 『俳句はかく解しかく味わう』は鑑賞本に分類されるが、俳句論や実作に立ち入るポイントや、先人にダメ出ししているポイントが豊富なので、俳句論の本としても読み応えがあった。 僕なりに気づき

命のひらめきを探したくなる『俳句とは何か』

俳句論の本は20冊くらい読んだと思うが、どの本にも名前が挙がる評論家がいた。 山本健吉。 彼の「俳句は滑稽なり。俳句は挨拶なり。俳句は即興なり」を引用する文に何度出会っただろう。その度に読んでみたいと思っていたが、なかなか手を出せずにいた。 が、年末年始の時間を取れそうなタイミングで、『俳句とは何か』を鱗読書会の課題本にしてもらえたので、ついに読むことができた。 結果。 思っていたよりも熱い本だった。引用先ではテクニカルな話題が多かったけど、それよりもっと情熱のたぎ

五七五の次を考えたくなる『絶対本質の俳句論』

苗字が同じ俳人は何となく気になる。歳時記で出会うと、ちょっと余分に目を通しておこうという気になる。僕の場合は、阿部みどり女、阿部青蛙、、、そして阿部完市だ。阿部完市の が好きだ。通称あべかん、本記事でも尊敬を込めてあべかんと呼ばせて頂きます。 そんなあべかんが『絶対本質の俳句論』という、インパクト絶大のタイトルの本を遺していた。鱗読書会で教えてもらって、すぐにポチった。 「絶対本質」なんてねぇ、なかなか言えないですよ。このタイトルはどうしたって「巷で言われているのは本質

見慣れたものを見知らぬものに置き換える俳句を詠みたくなる『おいしそうな草』

詩人の蜂飼耳のエッセイ『おいしそうな草』を読んだ。俳句とは関係ない文脈でオススメされたのだけど、句作に役立ちそうなポイントがあった。 それは「詩や芸術がどうやって生まれるのか」を論じている箇所だ。 僕は句作するとき、「感動」を思い出してとっかかりにすることが多い。が、どういう「感動」をベースにすると、詩になりそうかのヒントがここにある気がする。 4点抜粋します。黒太字は僕が勝手につけました。 3行でまとめると、 習慣に従って生活していると、眠らされてしまう感性がある

絵画的な俳句を詠みたくなる『百句燦燦』

アンソロジー句集『百句燦燦』を手に入れた。 先日読んだ『愉しきかな、俳句』で、装幀家の間村俊一さんが、衝撃を受けた句集として挙げていたからだ。曰く、 歌人の塚本邦雄さんの愛誦句集 塚本さんの完璧な美意識と価値観で、選句されている 独特な活版組の本文がイカれるくらいすごい 余白も美しい。造本のすごさを味わうために持っておくといい この原体験ゆえ、今でもコンピュータじゃなくて活版にこだわってしまう テキストだけなら今でも文庫版で手に入るよ である。ここまで言われて

俳句というツールを磨きたくなる『愉しきかな、俳句』

9月に道後俳句塾に行く。西村和子先生に初めて句を見て頂く。 せっかくの機会なので、西村先生の著作を読んでおこうと思った。そうして新宿の紀伊國屋で出会ったのが『愉しきかな、俳句』である。各界の著名な俳句愛好者15名との対談集だ。 読み返したくなる言葉がたくさんあったので、抜き出してみます。 ※一部、編集しているところもあります 洋菓子店当主の山本 道子さんと 歌人の永田 和宏さんと 居酒屋探訪家の太田 和彦さんと 歌舞伎役者の坂東 三津五郎さんと 小児科医の細谷

『証言・昭和の俳句』で解けた、道後俳句塾の小さな疑問

黒田杏子先生が逝去された。いつき組の自分にとって、組長(夏井いつき先生)の師匠である杏子先生は大師匠のような存在であるが、お目にかかったことはなかった。 ただ、『瓢箪から人生』で描かれた、 赤ワインを一緒にガンガン飲んでくれる 大柄で創作作務衣を悠々と着こなす 組長再婚時に兼光さんを紹介したときの言葉「夏井いつきは貧乏です! 再婚する以上は、心して支えてやっていただかねばなりません」 の大らかなイメージと、昨年の道後俳句塾でのコメントをお聞きして、いつかお会いできた

『俳句の射程』は、詩の有無のヒントを得られる

俳句2年生になった。 組長(夏井いつき先生)が秀句を評価するときに、わかったようでわからない言葉がある。それは、 「そこに詩があるのです」 だ。僕にとって、これが難しい。 思えば自分は、詩への苦手意識がある。学生時代、国語は得意教科だったけど、詩は駄目だった。中原中也の『汚れつちまつた悲しみに』は好きだったけど、テストはいつも自信がなかった。例え正解できても、たまたまでしかなかった。 そして今再び、詩の壁にぶつかっている。 俳句の詩性について言語化できないまま一年

『名句に学ぶ俳句の骨法』は、『20週俳句入門』の切字のモヤモヤを解消できる

バイブルと名高い『20週俳句入門』を読んで、僕がまず思ったのは、 天になる句で「や、かな、けり」入ってる句、ほとんどないやん! だった。そう思った方は他にもいるのではないだろうか。例えばNHK俳句や、夏井先生が選者の投句先において、入選句で切字の「や、かな、けり」が用いられている割合は少ない。 初心者の自分が句作する上で『20週俳句入門』の基本型はとても便利だ。便利なのだが、投句先で基本型にはまらない秀句の衝撃を浴びると「自分もそういう句を詠んでみたいなあ」という憧れを