見出し画像

改めて、小学校での外国語教育を考える

「what 何を外国語教育で行うのか」「how どのように外国語教育を行うのか」という話はよくあります。しかし、その前に「why なぜ外国語教育を行うのか」、ここが、実は一番大切なのではないかと思っていますし、私自身が色々な方とお話していて一番興味がある点でもあります。

「こういう理由があるから、外国語の学習は必要だ」という動機が、教える側にも、また学ぶ子ども側にもあれば、内容や方法が変わったとしても学習の根本はブレない、と思っています。

このWhyは、教育者一人一人が違うと思います。私は、それでいいと思っています。ここではそれを話題にしたいのではなくて、「では、子どもはどう考えているのかな?」が話題です。本来ならば、大人と同じように子どもたち一人ひとり、その理由は違うはずです。

大人の語学の学びはスキル重視です。それはテストであったり、旅行だったり、仕事であったり、今までの人生で外国語が思う様に使えなくてもどかしさを感じる経験があるからです。大人になって語学に取り組むのは、動機があります。

「それと同じだ」と子どもたちの事を考えてはいけないのではないでしょうか。子どもは、まだそこまでの経験も体験もありません。つまり、学習の動機がまだはっきりしていない子どもの方が多い。

その子なりの理由や必要性を感じる間もなく外国語学習が始まった場合、その子はどう思っているのでしょうか。外国語を学ぶ実用性を日常的にあまり感じることのない子どもたちは、周りの大人から与えられた教材を通して、外国語の学習を「そういうものだ」と捉えているかもしれません。

例えば、初めて接する教材が英会話中心であれば「英語は英会話」。
テスト対策のためのドリル集であれば、「英語はテストでいい点数をとるため」。
「英語しか使われていない教材」であれば、「外国語は英語だけ」とをとらえる。これは仕方がないことなのかもしれません。

では、子どもが「こういう理由があるから、外国語は必要だ」という動機を持つためにはどうしたらいいか。これは、実際に外国とつながる体験に勝るものはないと思います。つまり、自然に、どうやっても外国につながる状況を生み出すことで、外国語を使う「必要性」を作る

なぜ、教室内に外国語の必要性を作るのか?
それは、「なぜ、英語をやらなくてはいけないの?」と思っている、子どもたちのためです。先生も友達も日本語が通じるのに、なぜ教室で英語を使わなくてはいけないのか、どこか違和感が子どもたちの中に生まれます。

上手な先生はそこをうまくカバーして、英語を使った楽しい活動をされています。しかし、自分は無理でした。楽しいゲームや簡単な活動は英語を楽しく使いますが、内容を充実させようとすると途端に外国語(英語)量が減ってきます

子どもたちは「あべは日本語で通じる」と分かりきっていますから、複雑な内容を伝えるのに外国語(英語)を使う必要なんかありません。ですから、活動内容を高度にしようとすると、私も子どもたちも「日本語だけではうまくいかない」という状況を作り出す必要がありました。

外国のことばが必要になる状況を作るには、①日本語以外の言語を使う人と直接つながる、②日本語以外の言葉が使われている実物を教室で扱う、の2つがあります。①は相手探しがありますからハードルは高いですが、子どもたちも真剣に取り組みますし、相手校の先生とやりとりをする中で教員の語学力も英語以外の言語への興味も上がります。②の方が比較的簡単ですが、活動の広がりを生み出すには題材選びがとても大切になります。

要は、「本物を教室内に投入する」ことと、それに接した「子ども達の様子を観察する」の繰り返しを行なってきた気がします。現在は「①外国の人と直接つながる国際交流活動」と「②外国のもの(実物)を扱って調べて研究する活動」を状況に応じて使い分けています。

実際に本物に触れて外国語を使う活動をすると、うまくいかないという「モヤモヤした」部分が出てきます。子どもが自ら「知りたい」「必要だ」と思った時に、活動を支えるためのスキルの学習は、初めて成立すると実感しています

画像1

実際に活動して「モヤモヤ」し、学び、また活動して「モヤモヤ」し、さらに学ぶ。この「モヤモヤの経験」と「それを解決するための学習」が交互に折り重なって、語学の学びは進んでいくと考えています。

「なぜ必要なのか」を子どもに体験(体感)させる事が、その先の学びに繋がります。必要だと思えば、子どもは自分で動きます。子どもは楽しければいつまでも続けます。また面白いことは自分で調べて覚えようとします。

自分の知らない言語や文化をもっと知りたい、相手の伝えたいことを理解できるようになりたいという気持ちを持つきっかけ、その出会いを作り動機を育むのが小学校段階の子どもと関わる教師の役割だと考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?