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翻訳としてのデータ分析#31 ハコの名は

原文抜粋 :「コールテン」か「コーデュロイ」か

翻訳というのは自分の哲学や趣味を主張する場じゃないからね。小津安二郎がこんなことを言っています。「なんでもないことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う」。翻訳という作業は、その意味では「芸術のこと」にはほとんど関係ない。

まったく関係ないっていうと語弊がありますが、ほとんどのことは「流行に従う」でいい。長いものに巻かれるのが正しいという場合がすごく多いですね。

『ぼくは翻訳についてこう考えています -柴田元幸の意見100-』より

データ分析に置き換えて考える

かつての職場の開発系LT大会で、「ハコ、めっちゃ便利!」という発表があった。「ビジネスメンバーとのコミュニケーションの仕方」というテーマでのLTだった。そこで確か、

データベースも、S3も、ストレージも「ハコです」の一言で通じる。ハコ、めっちゃ便利!

という言葉があった。この発表には相当笑った。

けど、実際そのあと、使ってみたら確かに便利だった。さすがに「ハコ」だけでは済まさないが、大体、「〜のためのハコです」「〜ができるハコです」で通じる。絵にもしやすい。

ブラックボックス、という言葉の連想が効くからなのかもしれないが、概念としての装置や機構は「ハコ」というと、なぜか肯かれやすい。「ああ、そこで何かをよしなに経るのね」という同意を得やすい。

で、正味、そのハコがどういう名前なのかは、大体の人にとってどうでもいい。担当する開発メンバーにとっては重要だが、主にアウトプット求めている人にとっては、何だって構わない。

そして、そのハコの名前は流行で変わる。
5年前と今で、ハコの名前は変わった。

僕が直接扱ったところでいうと。
ランダムフォレストは勾配ブースティングに変わった。
GreenplumはBigQueryになった。
GCSはそもそも経由しないケースが増えた。

ハコの役割は一緒だったとしても、これからも、名前が変わったり、別のハコに包括されるケースはどんどん増える。そしてハコの名前に関しては、まさに

ほとんどのことは「流行に従う」でいい。長いものに巻かれるのが正しいという場合がすごく多いですね。

が成り立つと思っている。流行を押さえ続ければ、間違いにくいと思う。

だから余程じゃない限り、ハコの名前はビジネス担当者にとって重要な情報ではないと思っている。画期的なことができるハコが生まれたときや、ビジネスプロセス上懸念が生じるハコがあるとき、アナウンスできればいいのではないだろうか。

それから、

「なんでもないことは流行に従う。重大なことは道徳に従う。芸術のことは自分に従う」

を、僕のデータ分析のスタンスで捩ると

「採用する技術は流行に従う。セキュリティやプライバシーは道徳に従う。扱うデータのことは自分に従う」

となる。まあでも、例えば道徳も模索中の部分が大きくて「みんなであっちでもないこっちでもないってやってる中で、いや俺はこっちだ!」っていうのが業界的にあったりするから、厄介だったりする。

ただ、このスタンスを通せるところまで通してみて、それでまた次のスタンスを見出していけたらいいかなと思っている。

サポートされた者たちから受け継いだものはさらに『先』に進めなくてはならない!!