変化に対応するための組織論的な視点
シリコンバレーには、2008年に設立されたシンギュラリティ大学という大学があります。この大学の共同創設者の一人は、「技術的特異点(シンギュラリティ)」を唱えたレイ・カーツワイルです。
このシンギュラリティ大学では、教育やエネルギー、食糧などを人類の最も困難な課題(Global Grand Challenges)と定義し、これらの課題に対して、加速的に発展する革新的技術を使って、積極的に取り組むことを目的としています。
また、革新的技術を開発する企業のための支援活動も行っており、その中で、飛躍的に成長する企業の特性、概念や行動様式についても研究されています。
では、飛躍的に成長する企業とは、一体どのような特徴を持つのか?
これについては、「今後のビジネスを成功させる重要な視点」でもお伝えしましたが、大きな枠組みが「共有」です。
つまり、従来の企業間の競争の源泉は「所有」でしたが、情報化が進んだ現代では、それらの情報に、如何に「早く・安く」アクセスできるかが重要となっていること、とお伝えしました。
さて、あなたは、この「共有」という概念を持ち合わせているでしょうか?
従来の「保有」を競争の源泉と考える企業は、以下のような状況に直面しています。
・関心が外ではなく、中に向かう
・すでに自社で保有している技術を重視する傾向がある
・外部のイノベーションではなく、内部のイノベーションに期待する
もし、あなたが上記のように考えているのであれば、まだまだ「保有」を
中心に考えていることになります。
今後、飛躍的に成長する企業にならずとも、時代の変化に対応するためには、必ず「保有」から「共有」へのシフトが必要となってきます。
では、どのように「共有」へとシフトしていけばよいか?色々な要素はありますが、ここでは組織論の観点での必要な考え方をお伝えします。
【1.小さいことはいいことだ】
従来の経営学では、「規模の経済」という言葉があり、多くの資源をまとめることで、スケールメリットが得られ、コストでの優位性が得られました。
しかし、近年では「規模の不経済」とも言われ、資源をまとめるデメリットが指摘されるようになっています。
規模の経済の効果を得られるのは、一部の超大企業に限っています。
中小企業こそ、「小さいことはいいことだ」と、必要以上の資産を「保有」しない。
つまり、組織論の視点では「会社・組織を大きくしない」という考えがとても重要です。
【2.持つより借りる】
繰り返しとなりますが、技術進歩により、テクノロジーやツール類が安価に利用することが可能となりました。
また、技術進歩により、それらテクノロジーやツール類は、日々進化していっています。
その結果、一度、所有したものが、すぐに陳腐化することは避けられません。
「持つよりも借りる」ことで、必要以上の資産を「保有」しない。
つまり、組織論の視点では「コアな技術・サービス以外は外注化する」という考えがとても重要です。
企業として、雇用は重要な社会的責任ですが、存続することも重要な社会的責任です。
「雇用」と「存続」のバランスは、難しいものがありますので、ここでは、あくまでも、一つの考え方として捉えて下さい。
【3.管理より信頼・クローズよりオープン】
現代では、組織の自立が社員のモチベーションを大きく高める、と言われています。
また、ミレニアム世代と呼ばれる若い人は生まれつき独立性が強く、デジタルネイティブで、従来のトップダウン型の管理や階層構造を嫌う、とも言われます。
そのような若い人に力を発揮してもらい、優秀な人材を採用するためには、会社は「オープン」な環境を社員に提供する必要があります。
そして、そのような組織を動かすためには、従来の上司による「管理」ではなく、上司・部下双方からの「信頼」をベースにする必要があります。
つまり、組織論の視点では、「部下からの『ホウレンソウ』から、上司による『ホウレンソウ』」という考えが重要となってきます。
年々、変化が激しい時代で、何が正しいか、何をするべきかに迷うことも多いかと思います。しかし、正しい選択をしたからと言って、良い結果が得られる保証はありません。
やはり、行動が伴わなければ、良い結果が得られないことは明白です。
「正しい選択を選ぶ」ために時間を費やすのではなく、「正しい行動に繋げる」ために時間を使う、という意識を持って頂ければと思います。
そのために、まずは動く。そして、小回りが利き、組織が動きやすくするために、「共有」という考え方を取入れていただければ幸いです。