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新婚早々に夫が適応障害になるなんて


その日、仕事から帰宅し、すでに自宅にいる僕を見て、「どうしたん?」と聞いた奥さんの声は優しかった。

僕は毎日帰宅が夜遅かったので、まだ外が明るい時間に家にいることを不審に思ったのか、それともその時の雰囲気がおかしかったのか、あるいはずっと前から気付いていたのかもしれない。

仕事を早退して心療内科へ行ったこと、その場で診断書をもらったこと、適応障害、3ヶ月の休職、カイシャ、ジョウシ、レンラク。

ちゃんと喋れていたのか、わからない。

ただ奥さんは、休めて良かったね、とだけそっと言葉をかけてくれた。

コロナの流行もあって、未だに新婚旅行にも行ってないし結婚式もできていない。昨年区役所に婚姻届を提出しただけ。
言うなれば僕らは「新婚ほやほや」というやつだ。
長い交際期間を経て、ようやく結婚したばかり。


そんな時期に生涯のパートナーとして選んだ夫が精神疾患になり休職してしまった。


ある種の結婚詐欺と訴えられてもおかしくない。
僕のようなちんちくりんの奥さんになってくれたのに、ほんっとにひどい仕打ちだと思う。

しかし、奥さんに焦った様子はないし、不満を言うこともなかった。

彼女が仕事から帰ってくるまで一日中ベッドでうじうじしている日が続いても、ろくに会話ができなくても、自暴自棄になっていても、奥さんは変わらずとっても優しかった。



そして、なにより堂々としていた。



社会人4年目にして早々に会社の出世ルートから外れた、というよりそもそも職場に戻れるのかどうかさえわからない不安感。仕事をしていない罪悪感と劣等感。そういった感情で押しつぶされそうな時、彼女は決まって僕に一切の非がないと言い切ってくれた。いつも笑顔で大丈夫と言ってくれた。


僕がまた社会に戻れることを、僕以上に信じてくれていた。

本当に奥さんには感謝をしてもしきれない。
それと同時に、今まで知らなかった奥さんの懐のでかさにびっくりした。


懐が大きくて平気。いや、そんなわけがない。


空がゆっくりと白んでいくのを見ていた夜、彼女もまた寝付けずにこっそりと泣いていることを僕は知っている。

病気を知らない同期や後輩が送ってくれるLINEにいつまでも返信できないでいる日、

奥さんの友人から子供ができたと電話で報告を受けた日、

よく行くカフェに連れ出してくれたのに、どうしても耐えきれずに帰ってしまった日、

彼女は僕になんともないような顔をして、そして一人で静かに涙を流している。

2人で描いていた人生設計は狂ってしまった。

「京都で結婚式を挙げて、新婚旅行は海外がいいなあ。コロナがあれだったら石垣島にしようね。節約してお金を貯めて、それで子供は2人か3人欲しいなあ。平屋でクローゼットの大きい一軒家を建てて、のんびり暮らそうね。」


彼女は自分で解決できない不安を抱え込んでいた。
押しつぶされそうな恐怖と戦っていた。
だけれども僕には見せないように振る舞ってくれている。
きっと僕の何百倍も苦しくてたまらないはずなのに。

もうすぐ奥さんが仕事から帰ってくる。
きっと、今日もまた笑顔でただいまと声をかけてくれる。
持て余した時間で作ったロールキャベツを美味しいと食べてくれる。
掃除した排水溝を見てお礼を言ってくれる。
ぼろぼろの僕に生きる意味を与えてくれる。


何がなんでも奥さんに恩返ししないといけない。
こんな僕のために一緒に頑張ってくれている彼女のために、負けていられない。
1日も早く仕事に復帰して、いつか行きたいなあと話していたホテルのアフタヌーンティーに連れて行きたい。がんばります!


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読んでくださってありがとうございました!!

今回は奥さんの話を書かせていただいたのですが、そんな奥さんがyoutubeに動画を載せているので、もし良かったら一瞬だけでも見てあげてもらえないでしょうか?☺️
「全然見てもらえん」「何でかわからんけど画質が悪い」「おしゃれに作れん」とやる気を失っているところです☺️


ちなみに現在登録者数3人です。
5人の方に登録してもらってた瞬間もあったみたいですが、全然投稿しないので外されてしまったみたいです笑

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