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4章 同盟と編入


研究長フランチェスカ・フランソワー


魔法により支配されるメイデン帝国。
そこから死領域を越えた先、明白地帯にある公国は、科学の最高峰であった。

高層の建物が立ち並び、空に浮かぶデジタル映像、高層階を繋ぐ遊歩道。

その中で一際目立つ建物があった。

物理学の最高峰、エメラルド学園。
学生に教授し、学者は高度な研究を行う 高等機関。
1000年以上も続く長い歴史を持つとされているが、
現代的で綺麗な外観からは想像もつかないだろう。

その最上階は、世界の物理学を先導する、研究チームが管理していた。

そこでは今、匆匆に動き回る職員の姿があった。

「大規模な電磁波の消失を発見しました。
現在、徐々に高度を下げながらを移動している模様。」
研究者が、モニターを前に報告する。

報告を受け、若い女性が足早に向かう。
研究長である彼女は、
職員を押し退けてモニターを陣取ると、両手をついて画面を除き混む。

固い緊張感のあるその表情は、みるみる内に崩れていった。
ほくそ笑みを浮かべる。

そして、狂喜の声をあげた。

「、、、見つけた!!!
ギャラクシアを!!!」

一方、他の職員はみな緊張の面持ちを崩さない。

その時、
消失点を追う航空機から無線が入った。

『現在、成層圏から対流圏に突入しました。』
乗員が報告をあげる。

研究長は顔つきを変え、固い声で問うた。
「肉眼で確認出来ますか?」

『確認出来ません!』

その言葉を機に、通信が途切れ途切れになる。
『消失点からの電磁波を受信しました、、、!
が、γ線です!!
1.000MeV、1001
時間変数に伴い、エネルギー密度の強いγ、、、
何らかの干渉で、 、、、
1.02を越えます!!』

そこで完全に無線は途絶えてしまった。

研究室の空気がぴんと張り積める。

「不安定な対生成からの対消滅が考えられます!
核爆発の可能性が、、、!
撤退させましょう!!」
1人が強く研究長に訴えかけた。

彼女は一瞬憤りを見せたが、静かに訴えを呑んだ。
「分かりました。
撤退を命じてください。」

そして、勢いよく振り返ると、口早に指示を出す。

「決して見逃さないで!
A班は直に、観測気球の手配を!」
「承りました」
「B班は、データ解析による全体像の予想図を!」
「承りました」

皆が指示を受け、慌ただしく動く。

その間、研究長は、2枚のクリアファイルを睨み付けていた。
履歴書である。

一枚は、ツインテールのきつい目元の少女、エリカ・ブラウニー。
そして、もう一枚は、シルバーブロンドの可愛らしい少女。

それは、即位の義にピアノを弾いた、謎の少女である。

「エリカ・ブラウニー。
💠
面白い2人です、、、!」
そう呟いた彼女の目は、光っていた。

柔和で優しげな顔立ち、上品な仕草に反して、どこかマッドサイエンティストな雰囲気を醸し出すこの女性。

彼女こそ、知る人ぞ知る、恐ろしくも美しい科学者、
💠研究長。

金髪の髪を横に束ねるその見た目は、遠くからでも彼女だと識別出来るほどに目立っていた。

彼女に、職員の1人が報告に上がった。
「無線が繋がりました!
乗務員は全員無事が確認出来ました。」

「承知しました。」
研究長は安堵の表情を浮かべる。

しかし、次の瞬間には興奮気味に廊下へと出ていった。
足早に歩を進めるフランチェスカ。
小柄な男性が、彼女を足止めする。

「署長、、、」
上司を見て、フランチェスカは上品に会釈で挨拶したものの、微かな苛立ちを秘めていた。

「フランソワー君。
エリカ・ブラウニーも、マリア・ルイスも、未成年。
100歩譲って、ブラウニーは、このエメラルドの学生だが、
ルイスは、軍部。
君の助手には相応しくないだろう。」
ゆっくりと話す署長に、
フランチェスカは怒濤の早口で返した。
「署長、少し勘違いをなさっています。

確かに、マリア・ルイスは、この公国の海軍幼年学校の卒業生。
異例の飛び級で至上最年少での正式な軍部所属となりました。

その実力ある彼女は、未成年でありながら従軍を率いて、1年ほど前に、魔法の国、メイデン帝国の探索に送り出されました。

そして今!
ギャラクシアが発見されたのです。
彼女が生きている可能性は高くなりました。

何故なら、
金のピアノ召還を成功させられるほどの奏者はマリア・ルイスしかいません。
いかなる難解な曲も耳コピーをし、更には連弾でしか弾き得ない曲をも1人で弾きこなすのです。
ゴルテス大尉が、2人目の奏者、エリカ・ブラウニーを送り込んだことは知りませんでしたが、彼女はマリア・ルイスの足元にも及ばないでしょう。

いずれにせよ、2人の内、どちらかが、ギャラクシアの開校に寄与したのかもしれない。
ほぼ確実に、マリア・ルイスの方が、ですがね。」

「前半は納得した。
だが後半は飛躍しすぎだ。」

「それが飛躍かどうかは、2人が生還し、聴取するまでは分かりかねます。」

その時であった。
部下が慌ただしくやって来て、折しも報告にあがったのは、
「エリカ・ブラウニー、
マリア・ルイスの生還を確認しました。」

署長が目を丸くする。

フランチェスカはにやりと笑って言った。
「神話によると、いえ、今やほぼ史実と考えられますが、、、
によりますと、ピアノ召還の成功者は、その要望を何でも1つだけ、聞き入れられるということが法律で定まっている、
更には、呼び寄せた魔物は、宮殿の奥深くに住み着き、裁判長の役割を果たし、簡単には法律違反も、改正も出来ないと、、、。」

「しかしなぜ、助手に学者ではなく、学生を?」

「直感です」

「直感、、、だと?」

「私はいつでも直感で動きます。」
フランチェスカの言葉に、署長は飽きれと驚きの混じった表情を浮かべた。


悪魔との同盟

王室の玉座には、女帝ヴァイオレット、、、ではなく彼女の母、妃が鎮座していた。

女帝はその横で、項垂れた様子で座っている。
「ゴルテスに囚われたお兄様が心配。
一刻も早く聖ギャラクシア帝国学園を開校しなければなりません、、、、!」

妃は、息子のことなど素知らぬ様子で、宝石を品定めしている。

母に向かってヴァイオレットは訴えかけた。
✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️可能性が高い。
仮に、魔界へ連れ去られていたとしたら、生還する可能性は限りなくゼロに等しいのです。

片道なのです。


これまで魔界に行って帰ってきた者は、
✔️✔️✔️✔️✔️

たった1人です、、、。

しかも、噂程度の情報。
最も有力な情報源とされていた絵本は行方知れず。
著者は、生還者の代筆者。
代筆ですよ!?
つまり、生還出来ても、健全な状態ではないということです。

そもそも、その人物は過去の人間かもしれない。」

妃は、宝石選びの片手間にヴァイオレットの話を聞き、言葉を返した。
「その不届き者が何の為に開校を迫るのかは不明だけれど、
魔物と手を組んでいるだなんて発想は全く思い浮かばなかったわ!
ヴァイオレット、考えすぎよ!」

考えすぎなんかじゃ、ないわ!!!

ヴァイオレットは急に叫ぶと、
目の前にあった小テーブルを怒りに任せてひっくり返した。

大人しい彼女が、始めて見せた荒々しい一面であった。

ヴァイオレットは情緒不安定な様子で言った。
「ゴルテスが私たちを捉えたとき、彼の服から、魔族にしか分からない魔物の匂いがしたの。」

娘の豹変ぶりに驚きを隠せない妃。

手にした宝石がおち、商人は頭を垂れて下がる。

娘といえど女帝。
妃は宥めるように言った。
「ヴァイオレット、落ち着きなさい、、、。
襲撃に合ったのは、金のピアノ召還の前で、魔界の扉は閉まりかけていたはず。」

「完全には閉じてはいませんでした。
開いている内に、成し遂げたいことがあるのは悪魔も一緒なのでしょう。

太鼓昔、魔界の扉が開く前にも、書物には悪魔の存在について記されていました。

悪魔は魔界に存在し、同時に、人間の心にも潜むものです。

何かの条件が重なったとき、悪魔が出現するのではないしょうか。

ゴルテスも、何かの機会と偶然が折り重なり、悪魔と接触してしまう顛末になったのでしょう。
今や、ピアノ召還により、扉は大きくこじ開けられ、彼と悪魔が接触しやすくなってしまいました。」

その時、
ノックの音が響き渡った。
入室許可を出すと、
太政官入ってきて、彼女の前で頭を下げた。
「陛下、お呼びで。」

彼女は、厳しく言った。
「直ちに、聖ギャラクシア学園を開校する手はずを整えなさい。」

気弱なはずの皇女が、今はとても威厳に満ちた顔をしていた。

太政官は驚きながら言った。
「聖ギャラクシア学園は、太鼓昔に人々が魔法物理学を学んでいた学校です。

世界が崩壊した後、女性魔族により閉鎖され、校舎は魔法で守られてきました。

いかにして、その魔法を解くのですか?」

ヴァイオレットは言った。
「エメラルド学園の生徒を、こちらの学園へ移すのです!

人々は魔法を失った後、物理学をその代替とした。

その最高峰がアクア公国科学の国にあるエメラルド学園なのです。
物理学を、物理学の範囲に留める抑止力として、エメラルド学園は聖ギャラクシア帝国学園にかけられた魔法を維持している。

物理学の延長が魔法物理学といえど、2つの間には埋められない壁がある。

物理学が魔法を奪ったのであるならば、その逆を行うの。
女帝である私なら、それが出来る。」

「しかし、魔法の施しは、禁じられています。」
太政官が困惑したように言った。

ヴァイオレットは立ち上がって、激昂した。
「今の皇帝は、私です!
私が解禁すると言ったのです!!」

「ご、ご無礼をお許しください。
直ちに準備致します。」
太政官が頭を下げると部屋を出ていった。

「あら怖いわね」
妃は、恐怖をひた隠しにしながらも、冗談を装った。
それから、続けた。
「ダミーを作ることや魔法の教授は見せかけであることを、伝えれば良いじゃない。」

ヴァイオレットは言った。
「ギャラクシア学園の運営を監視している間諜スパイが、どこにいるやも分かりません
誰にも悟られてはならないのよ。」


軍事同盟

半年後、、、。

「半年前、魔法学校ギャラクシアの存在が確認されました。
ギャラクシアは、実在したのです。

そこで、更なる探求に挑みます。
魔法の、研究です。

その延長線上には、魔界への探訪が待ち受けているでしょう。
恐らく、死領域が魔界へと通じていると思われます。
この危険な研究に政府は投資しました
魔法を手にするためです。

みなさんは、その為にここに召集された特殊部隊です。
学生見習いもおりますがら足手まといならば容赦しなくて結構。」
そう言ったのは、フランチェスカ研究長。

長い黄金の髪を横に結び、白衣を身にまとった彼女は、人並みはずれた美貌を持っていた。

ここは、アクア公国科学の国、エメラルド学園の実験室。

輝く不思議な道具や、ガラス細工が並び、
大きな黒板は細かな数式でびっしり埋め尽くされ、梯子がかかっている。

その黒板の前に、研究長と、制服を着た者達が立っていた。

フランチェスカは気の抜けた、緊張感のない声で言った。
「では、まず、自己紹介しましょう。
わたくし、フランチェスカ・フランソワーと申します。
ここの研究長です。」

フランチェスカ・フランソワー
(エメラルドの研究長)

彼女は優しげ柔和な顔立ちでまったりと話すと、
「ではまず、学生さんからお願いします。」
と自己紹介を促した。

「ジャスミン・ベンジャミン、
エメラルド3回生、14歳です。」
「アリス・アリア、
同じく、エメラルド3回生、14歳です。」
「エヴァン・ブラック、
同じく、エメラルド3回生、14歳です。」

事務的に名前が紹介されていく中で、妙にハキハキとした声が響き渡った。

「わたくし、エリカ・ブラウニーと申します。
同じく、エメラルド3回生、14歳です。
身を捧げて尽力を尽くす所存であります!」

勝ち気な顔立ちで意気揚々と話すエリカは、やる気に満ちあふれていた。

「なにあの子。」
アリスがくすっと笑ってバカにしたように囁いた。

皆がエリカの自己紹介にポカンとしていると、次の者が空気を一転させた。

冷徹な声が静かに発せられる。
マリア・ルイスです。
エメラルド3回生、12歳です。」


(エメラルド学生、ピアノ召還の奏者)

可愛いらしい顔立ちとは反して、髪をきっちりと後ろでとめて、この世の誰よりも冷たい表情を浮かべていた。

「こわーい。」
アリスが小さく言った。

その時であった。
扉が勢いよく開く音が響き渡った。

入って来たのは、数人の軍人。
1番先頭にいた者が、フランチェスカの前で跪いて言った。

30前後の端正な顔立ちをした男性である。

💠

「研究長様、ご報告に上がりました。
メイデン帝国魔法の国と、同盟を結んだと、政府が発表しました
ギャラクシアの開校には、両国の協力が必用だとのこと。

女帝は、空を浮遊するギャラクシア魔法学校を引き付け、
地上の者が登ることが出来るように手引きすることは出来ますが、


実際に門扉を開くのは、
エメラルド物理学の最高峰の学生と学者を前にした時のみ

です。」

フランチェスカは、見習い生のエヴァンとアリスに視線を送った。

エヴァンの方は、エリカも知っていた。
メイデン帝国にいた時、エリカの見張りをしていた少年兵である。
何故か、ここアクア公国の研究室にいたことにはエリカも少々驚いた。

「それで、帝国は慌てて、自国民をエメラルドに送り込んだのですね。
試験に突破出来た者以外は、送り返しましたがね。」
悠長にそう言ったフランチェスカ。

「しかし、あの死領域をなぜ行き来出来ているのです?」
フランチェスカが首を傾げた。

大きなブルーの瞳で、リー大佐を見つめる。

彼女の問いに大佐は答えた。
「女帝の魔力は、死領域から人々を守るほどの力があるようです。
魔法による関門が設置されたので、両国は互いに存在を認識し、行き来しやすくなりました。」

それから静かに言った。
「更なるご報告がございます。
ゴルテスが失踪しました。

彼は、謀反者である可能性が示唆されます。
メイデン帝国魔法の国で間諜を行っていたのです。
アクア公国科学の国の政府は一切そのような指示は出していません。
何かしら目論見があるに違いありません。

恐らく、🧿==かと思われます。

これらのことは全て、帝国には伝え、
軍事同盟としての意味も含めさせた次第であります。」

フランチェスカは目をしばたかせ、頬に手を当てる。
「、、、で、私に何の関係があるのです?
政界のことを持ち出さないでください」

「申し訳、ございません。」
謝意を示すリー大佐の後ろから、1人の軍人が声を荒げた。

「エメラルドと政界の関係は切っても切り離せない!
小耳に挟む程度でも構いません!
留意していただかなくては困ります!」

彼女は、赤毛のボブに、男まさりな女性軍人
💠

フランチェスカは少し考える素振りを見せてから、少佐の前に立った。
長身の彼女でさえも、更に背のたかいフランキー少佐を見上げる形となった。

「分かりました。
但し、私は、上からの指示しか聞き入れません。
ゴルテスが研究を妨害するならば、容赦しませんがね。」

「指示がなければ、国民をも犠牲にすると言うのですか!?」
激昂するフランキー少佐を、リー大佐は手で制した。

「フランキー少佐、口を慎むように。
この方は、エメラルドの最高峰、フランチェスカ教授であられるぞ。
軍部よりも、地位が高い。」

フランキー少佐はムッとしながらフランチェスカを睨むも、体をひいた。

「光栄ですわ。」

「ご無礼、、、お許しください。」
謝意を伝えたフランキー少佐に、
フランチェスカは、上品に笑って、内に憎しみを込めながら言った。
「構いません。
魔力が死領域の謎の力に抗うというならば、ゴルテスが魔力を持つ何らかの人物と繋がってる可能性も、あるかもしれませんね。」

それから、笑顔を消して尋ねた。
「で、なぜ軍部が勢揃いで私の元へやって来るのです?」

メイデン帝国魔法の国とギャラクシアに、護衛も含めた監視を置かなければなりません。
エメラルドの護衛から選抜していただくように進言しに参りました。」
大佐が答えると、
フランチェスカは目をしばたかせた。
長い睫毛がバサバサと目元にかかる。

「最高責任者は、私ではないのですけれど、
身分社会のこの国では、腹心が従うのは当然の成り行きかもしれませんね。
分かりました。」
フランチェスカはくすりと笑うと、
真顔になり指示を出した。
「リー大佐、あなたは帝国側についてください。
フランキー少佐、あなたはギャラクシアの護衛に!」

「承りました。」
「承りました。」

大佐はフランチェスカの腹心である。
手元から離しても信頼出来る相手なのだろう。
少佐は誰の腹心でもないが実力はある。

それは、当然の人員配置だった。

ふと顔を緩めると、フランチェスカは学生や学者にも目を配りながら言った。
「それから、言い忘れていましたが、ギャラクシアを留めることが出来るのは、死領域でのみ。
恐らく、その関門とやらの上では行えないでしょう。
失踪者リストに上がる1人とならないよう、くれぐれも気をつけてください。」

~~~~~~

顔合わせが終わると、
フランチェスカは、エリカとマリアを研究長室に呼びつけた。

「お二方とも学生ですが、特殊部隊にいる以上は、見習い見学だけではいけません。」
フランチェスカはそう言うと、含み笑いをして続けた。
「私の助手となるのです。」

助手という言葉に、エリカの気持ちは高揚した。
が、それよりも不信感が勝る。

なぜ、学生を助手に、、、?

その疑念を感じ取ったのか、
フランチェスカはマリアを見て言った。
「マリアさんは、金のピアノを完奏しました。
そして、エリカさんは、調教の才に秀でている。
音楽は、魔法と何かしらの関係性があると聞きます。」

それで選ばれたのが、この2人、、、。

「それに、それよりも何よりも、私の勘が言っています。
お二方の相性は最高に良いとね。
私の研究に役立つと考えたのです。」

相性が、良い?

エリカは、隣で無表情に立つマリアを見た
どう考えても、相性が合いそうにない。

苦い顔をするエリカを見て、フランチェスカは言った。
「どんな手段であろうと、私の研究の役に立つのです。」

言い終えて、フランチェスカが2人残して立ち去っていく、、、。

エリカはマリアに向き直った。

マリアの素性については聞いていた。
年下で、しかもメイデン帝国魔法の国に1年近くいたのにも関わらず、
アクア公国科学の国エメラルドの試験に突破し、しかも飛び級でエリカと同学年となってしまったのだ。

エリカは劣等感に苛まれながらも、愛想笑いを浮かべて言った。
「あらためて、よろしくね。」

「こちらこそ。」
マリアは、淡々と言った。

「私達、同学年だし、仲良くしましょう。」
エリカが、本心を隠すように言うと、
マリアが素っ気なく言った。
「先輩、
申し訳ありませんが、そう言った馴れ合いは得意ではありません。」

外見で言えば、愛嬌のありそうな愛くるしい顔立ちなのに、表情があまりにも冷たい。

エリカは笑顔のまま凍りついた。
「・・・分かりました」

マリアも行ってしまい、1人になったエリカは小さく悪態をついた。
「先輩って何よ!嫌味ね!」

開校の月夜

砂漠の死領域で、月夜の光を大きな雲が遮った。
雲の元には、人だかりが出来ている。

いよいよ、ギャラクシア開校の時だ。

エメラルドの学生、学者、皆が不安な面持ちで雲を見上げていた。
科学で支配するアクア公国と、魔法で支配するメイデン帝国。
両国民が混じり、共に運命を、この雲の上のギャラクシアに委ねる。

勿論、見習い生やフランチェスカも、その人集りに混じっている。

フランチェスカは言った。
「魔法の封印と共に封鎖されたギャラクシア。
その力を維持していたのがエメラルドでした。

1000年前から続く高等機関、エメラルド。

魔法とは奇妙なものです。

普通ならば、魔法といえど、力学的な意味で魔力が魔力に抗っていると考えるでしょう。
ところが、エメラルドには一切魔法がかかっていないのです。
にも関わらず、ギャラクシアの抑止力となっている。

エメラルドで最上級の物理学を教授している。
この事実が魔法に抗っているのですよ。

まるで、魔法に意思があるかのように、、、」

その時、男の声が響き渡った。
「皇帝陛下のお成ーり!!」

その掛け声と同時に、帝国からの編入生が道を開けて頭をさげた。
それに釣られて公国の者も倣う。

王冠をつけ、長いマントを垂れさげた女性、
皇帝ヴァイオレットが静かに、人集りの間を歩いていく。

魔法の国の皇帝を目の前に、公国科学の国の者達は圧倒されていた。
自国の長には見られない、古き時代の幻想的な雰囲気を醸し出しているのだ。

彼女が中央に来ると、付近の者は、護衛により遠ざけられた。
「これより、開校の為の魔法を施します!
危険なので、臨御する場から5メートル以内には立ち寄らないでください!」

~~~

一方で、人集りの端の方にいたエリカは、早速マリアと衝突していた。

「だから、先輩はやめてください!」
エリカが言うと、
マリアは首を傾げた。
「では何とお呼びすれば良いのでしょう。」

「好きに呼んでください!
でも先輩だけはやめてください。」

「面倒なやつだな。」

その言葉はエリカに向けられていた。
言ったのは、エヴァンだった。

まさかの展開に唖然とするエリカ。

「エリカ、軍部は年功序列に厳しいんだよ。」
ジャスミンが諭すように言った。

「あんたの高すぎるプライドなんか、私がへし折ってやるわ!」
アリスも言った。

「そうですねぇ、少々面倒かもしれませんね。」
フランチェスカも言った。

エリカは、皆からの責めを受け、縮こまった。
「何とでも、お呼びください、、、!!」

その時、エリカの目に突如不思議な光景が飛び込んできた。

マリアやエヴァンとのやり取りなど忘れ、そちらに目を奪われる。

敷地内の空に、照り輝く大きな何かがふわりと浮かび上がってきたのだ。

その謎の光の下では、女帝が両腕を掲げ魔術を唱えていた。

エリカの位置からは、女帝の姿は見えなかったが、光の形状は、その巨大さゆえに、はっきりと見えた。

それは星型の光であった。
まるで紙に描かれたように、黒い線が型の外郭を形どっている。

その奇妙な星は、完全な2次元のように、回転しながら姿を消したり現したりしていた。

ゆっくり浮上していく゛星゛の光を見ていると、エリカの脳裏に微かに昔の記憶が浮かんた。

押し潰されそうになり、地面に崩れた時、顔の前に垂れた深緑色の髪が、楠んだ色になっていることに気づく。

゛女帝が魔法を使用するとき、代償として深い悲しみを感じなければならないのです。゛

天女の言葉を思いだし、深く噛み締めた。

今こそ、呪われた髪が、魔法の代償としてエリカを苦しめているのだと。

それから、今後もずっとこのような苦しみを誰にも言えずに抱えていかなければならないのだと、、、。

そして、辛い記憶の世界へと、引き込まれていく。

エリカの記憶

幼き日のエリカは、田舎の古民家にいた。

酷使され、体は痩せ細り、破れかけた衣を身にまとっている。

「身寄りもないあんたを拾ってやったんだ。
恩に報いはさい!」
家主に恫喝される。

場面は切り替わり、
エリカに罵倒を浴びせた家主が、
今度は罵倒を浴びせられる側になっていた。

罵倒していたのは、皇帝のような出で立ちの人物だった。
馬に股がり、中世のような服装をしている。
まるで、メイデン帝国魔法の国のような雰囲気、、、。

エリカは自身の記憶に困惑した。
自分は、アクア公国科学の国の人間であるはずだ。

記憶は続く。

「お前!
魔女だな!
通達があったのだ!」
皇帝は、家主に剣を向けた。

「魔女、、、それは、ギャラクシアの卒業生ですか?
彼らは、1000年も前に、全員寿命を終えて消滅したはず。」
家主は訴えかける。

「卒業生などではない!
初代魔族には双子がいたんだ。
その先祖は、魔法遺伝子を持っている!
お前だろう!
皇族以外に、持つなど、許されぬことだ!!」

そして、、、、
銃声が響き渡る。
家主は銃殺されて倒れた。

流出した血が採取される。

「我が一族の遺伝子と適合すれば、こやつで間違いない。」
皇帝は、そう言うと、
後ろに控える皇子に検体採血を渡し、
指示を出した。
「我々魔族の血と混ぜろ。
青く変色すれば、適合したということだ。」

指示を受け、皇子は、血をケースに注入し、撹拌する。

しかし、血は変色しなかった。
いくら撹拌しようとも、赤いまま。

「、、、魔法遺伝子では、ありません。」
皇子が報告する。

その言葉を聞き、部下を下がらせた皇帝。

彼は、声を殺し、自身の息子に耳打ちをした。
「我々の魔法遺伝子は、魔力の授与により傷つけられてきた。
綺麗な遺伝子をのさばらせておくわけにはいかない。
探し出すのだ!」

~~~

エリカは逃げ出した。

自分が魔法遺伝子とやらの所持者かどうかは知らないが、家主のように、あらぬ疑いをかけられたくない一心で、、、。

幼いエリカにも、彼らの話の概要は理解出来ていたのだ。

しかし、記憶を再生している今現在のエリカは、
初めててその意味を深くまで知ることとなってしまった。

唯一の生還者

記憶の世界は終わりを告げたが、魔法はまだ行使され続けていた。

苦しみが心を蝕む。

その時、上空へと浮上した光は、ついに分厚い雲の中に入っていった。

すると、雲がウェーブのように波立ち、波にのって光が走る。

やがて光は、雲の中央に集中し、
雲の切れ間を作って消えてしまった。

そして、そこから、長い何かが顔を除かせて降りてきた。

フランチェスカは、その光景を見ながら言った。
「今こそ、世を支配する学問を物理学から魔法物理学へ、
学生たちをエメラルド学園から聖ギャラクシア帝国学園へ、移行させているのです。」

「は、はい。」
エリカは、呪いの苦しみをおし殺して言った。

しかし、意思とは関係なく、苦しみは増していき、それは身体的症状になって現れ、ひどい頭痛がするようになった。

そんなエリカの様子をまじまじと見て、フランチェスカは含み笑いを浮かべた。
「体調が優れないようですね。
気づかずにごめんなさい。」

エリカはそう言ったフランチェスカの目を見て、
彼女が何かに勘づいていることを、微かに感じ取った。

エリカの周りでは、
人々が初めて見る魔法に見入り、まるで夢の中に迷いこんだかの如く、我を失っていた。
公国科学の国の民は勿論、
帝国魔法の国の民も、そのほとんどが、魔法を見たことがなかったのだ。

そんな人々を見て、エリカは頭痛に苛まれながらも、思いを巡らせた。

ある意味、この者達は運が良かったのかもしれない。
あの即位式が初見だとしたら、あまりに刺激が強すぎて、トラウマになる者も出てくるだろう。
しかし、今は逆に、幻想美が人々を魅了し、魔法は、その闇の部分を潜め、輝かしい面だけを見せつけている。

一頻り考えて、
ふと空に目を向けると、
雲の切れ間から伸びてきていた謎の物体が、
その姿を黙視出来る高さまで降りてきていた。

それは長く続く階段であった。

柵には、一定間隔で光が点っている。

空の上の雲から階段が降りてきているのだ。
まるで天国に導かれるかのような風景である。

フランチェスカは、光る階段を仰ぎ見て言った。
「あの階段の先に、
雲の上に聳え立つギャラクシアがあります。
そこに、魔界への鍵が眠っていることを願いましょう。」

エリカは、何やらまた奇妙なことを言い出したフランチェスカを訝しげに見た。
「鍵、、、?
魔界への鍵とは、、、?」

フランチェスカが口を開き何かを話し始めた。

しかし、エリカはそれを聞く余裕などなかった。
先ほどから、頭痛がひどくなってきているのだ。
深い苦しみが、それと共に波打つ。

心の苦しみより体の苦しみに耐える方がいい、という人もいるが、
体の苦しみは本能レベルの苦しみで、甘く見てはいけないことを痛感せざるを得なかった。

そこから、エリカの意識は朦朧としていく、、、。
連続性のある意識が、断片的になり、
気がつくと光る階段が地面に到達しているのがぼんやりと見えた。

そして、次に気がついたのは生徒達が登り始める様子、
更に自分も、フランチェスカとマリアに続き、光の階段を登っていることを、ぼんやりしながらも認識した。

階上する間、聞きそびれたフランチェスカの言葉が、遅ればせながら心の中に聞こえてきた。
いや、実際にはちゃんと耳で聞いていた内容が、時間差で今になって認識出来たのだ。

♟️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️✔️を探しだし、魔界への入り口を聞き出すのです。

 特殊部隊は、魔界へ探訪をします! 

そのたった1人が生還出来たのは、魔界とこちらの世界の境目を知っていたからであるに違いありません。”

”この雲の上の学園こそ、その人物を教えてくれるかもしれないのです。

魔力で覆われている聖ギャラクシア帝国学園には、太鼓昔から魔物が棲みついています。
その多くは知能を持たず、意志疎通は出来ません。

しかし、
♟️✴️✴️と言われる魔人だけは、誰より世界の歴史を知っていると言われています。
見つけ出して、聞き出しなさい!

生還したたった1人の人間について、
あわよくば、魔界の扉の場所についても、、、。

しかし、いいですね?
多くを聞くのではありませんよ
長老は気まぐれで、どのような質問が地雷にあたるか検討もつきませんからね。”

編入

そして気がつくと、エリカは、生徒や学者の群衆の中に立っていた。

意識が鮮明になり、強く波打っていた頭痛はすっかりおさまり、
精神の撹乱が引いていた。

魔術の施行が終了したのだ。

エリカはふと、辺りが非常に明るいことに気づき、空を仰いだ。

そこには爽やかな青空が広がっていた。

そんなはずない。
エリカは、そう思った。

夜空の下で、階段を上ってきたのだ。
今空を照らす明かりは、太陽でなく、月明かりであるはずだ。

これも、魔法の成せる技なのだろうか。

そう考えて、
空に対する疑問を、魔法という言葉で封じ込める。

その時、足元がふわふわとした不思議な感触にあることに気づいた。

地面を見る。

靴は、白い綿毛のようなものの上を踏みしめていた。

白くふわふわした地面が広がっていることに気がついたとき、
光る階段を登りきり雲の上へ到達したことを認識した。

地上から見れば綿毛のように見えて夢を広げてくれる雲も、実態は掴みどころのない煙のようなもの。
綿毛が空を浮かぶなど、幻想でしかないのだと、思っていた。

その幻想を現実化してしまう魔法物理学は、何とも魅力的で恐ろしい学問であろうことか。

今踏みしめている白い地面は、正に夢の綿雲の上。

その実態のある雲には、巨大な城が聳え立っていた。
城の門扉は、雲に上り詰めた群衆を前に、堅く閉められている。

立派な凱旋門には、不思議な文字が装飾されていた。
それは、魔界の言葉でこう記されたものであった。
 

勿論、解読出来る者などいないが、その文字の示す言葉を想像するに難くない。

エメラルドの職員と生徒は今、幻とされたギャラクシアを前に立っているのだ。

どこからともなく、鐘の音が響き渡っている。
軽やかな音である。
エリカは、この青空に相応しい、爽やかな音に聞き入っていたが、それは直ぐに止んでしまった。

突然、不思議な掴みどころのない声が響いた。
ざわめいていた群衆がぴたりと静かになった。

『エメラルド学園の諸君。
聖ギャラクシア帝国学園へようこそ。

この門扉を越えた途端、君たちはこの学園の生徒及び職員となる。

一度入ってしまえば、外出許可はほとんどおりない。
卒業するまで、研究を達成するまで、
外の世界を見ることが非常に困難になろう。

その覚悟がある者だけが、門扉を潜るがよい。
閉門までに入らなかった者は、その覚悟がないと見なし、地上へ送り返されよう。』

話が終わると同時に、重い門扉がゆっくりと開いた。
まるで、学園の建物そのものに意思があり、話しているかのようなタイミングであった。

その時、辺りが急に暗くなった。

唐突な暗転に人々はざわめき、上を見上げた。

そこには、青でなく、藍色の空が広がっていた。
空が、元の景色に戻ったのだ。

夜空を照らす光は、やはり月だ。
そして今は夜。

先ほどの快晴はやはり魔法の成せる技、、、。
空の前は解けたのだ。

初めて見る魔法に呆然としていた人々は、
急に目が覚めたかのように、顔つきを変えた。
次第に我を取り戻し、
人生を掛けた決断を迫られているのだと認識し始めるのであった。

続々と躊躇いもなく入っていこうとする者達が、戸惑う者を押し退けて入っていく。

「返還なんて絶対させるものか!!」
「苦労して国立の学校に入ったのよ」
「地上に放り出されても路頭に迷うだけだ!」

口々にそう言いながら歩いていく者達、、、。
しかし、まだ大半は、夢うつつ状態だろう。

あの恐怖の即位式を見たエリカでさえ、まだ夢の中にでもいるような気分なのだ。

夢にせよ現実にせよ、今、エリカは決断に迫られていた。

ふと、背後から上品な声で話しかけられた。

「どうするのですか?」
振り返ると、金髪ブロンドの女性が微笑んでいた。

フランチェスカである。
彼女の後ろには、マリアが立っていた。

2人を見てエリカは自身の立ち位置を確認した。
助手として指示されたのだから、自分に選択権はない。

「私は、、、」
エリカはそう口にして、覚悟を決めた。
「研究長のご指示に従い、
この門扉の先に行きます!」

凛とした表情で決意を述べたエリカを見て、
フランチェスカは微笑を消して、命をくだした。
「マリア!
同輩と共に、この門扉をくぐりなさい!」

マリア、、、?
呼び方が変わっていることに気づく。
彼女を、軍部から物理学生として呼び寄せたのは、フランチェスカである。
本格的に自身の腹心として従えるつもりなのだろう。

「承りました。」
マリアは、可愛らしい声とは裏腹に、事務的な声色で受諾した。

「お二方の”転入゛を見届けますよ。
保護者のようにね。」
そう言って優しげに微笑むフランチェスカは、一見すると、本当に子どもを見守る保護者のようであった。

マリアは、「分かりました」と淡白な返事をして門に向かって歩きだした。

「魔界への鍵、必ず見つけ出します!」
エリカはそう言うと、マリアの後に続いた。

「ルイスさん!」
エリカがマリアの隣に並んで声をかけた。

「何でしょう。」
マリアは反応したが、前を向き、エリカの顔を見ようともしない。

「あなたが人付き合いが苦手でらっしゃることは、よく分かりました。
私も得意な方ではありません。」

「それは良かったです。」

「ですが、非常に残念なことに、
同輩として、共に協力し合わなければなりません。」

マリアはちらりとエリカを見て冷笑した。
「承知しております。」

エリカはその笑顔に凍りつき、一瞬怯んだ。

「は、はい。お願いします。」と、辛うじて返す。

が、エリカは気を取り直し、同輩に歩み寄ることにした。

「一緒に頑張りましょう!
勿論、単なる同輩として、ですけどね。」
明るくそう言って立ちどまり、笑顔ですっと握手の手を差し出した。

マリアは、エリカが歩を止めたことに気づき振り返る。
彼女も、その程度には他者を見ているようだ。
訝しげに見つめながら、ゆっくりと手を出した。

年齢と身長以外は全く似ても似つかない2人の奇妙な握手の瞬間であった。

門扉では、脚を踏み入れた生徒たちの体に、頭から足先へと光の線が走っていた。

光が通過した箇所からは、新しい制服のゴロが見えていた。

マリアは握手の手を放すと、躊躇なくその門扉をくぐった。
エリカも彼女を見て続くのであった。

~~~~~~~

雲の下では、光る階段が下から消えていき、雲からは複数の光り輝く何かが舞っていた。
その光は、エメラルドの生徒達を地上へと返還するものであった。

門扉を越えることが出来なかった、あるいはそれを拒んだ生徒達は、
みな、不安げな表情を浮かべながら、光に包まれ舞い降りている。

地上では、家来に囲まれた女帝がその光景を眺めていた。

ヴァイオレットは、疲弊しきった様子で空を仰ぎ、
分厚いギャラクシアの雲に向かって、小さく呟いた。
「魔法って、、、疲れるのね、、、」

その女帝の後ろに、公国科学の国の者が現れ跪いた。
「公国アクアのマルコ・リーと申します
貴国の護衛(監視)につくよう、指示を承っております。
私とその従軍が赴きます故、何卒ご承知おきください。」

「”護衛”ねぇ、、、。」
ヴァイオレットは、力なく笑って振り返った。

彼女は思わず、小さな感嘆の声をあげた。
大佐の姿を見て衝撃を受けたのだ。

鍛え上げられた体幹、指の先まで意識が張り巡らされ、美しい姿勢を保っている。

端正な顔立ちながら、眼光が鋭く、洞察力や危険察知能力に長け、
数々の修羅場を乗り越えてきたであろう洗練された佇まい。
その半面で、一切の承認欲求を感じられない顔つき。

その姿勢だけで感じた。
主体性のない有能な人材だと、、、。

使いようによっては、敵にも味方にもなる両刃の剣だと、ヴァイオレットの直感が訴えていた。


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