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野又 穫 [Continuum 想像の語彙] -だれかの,あるいは自分の記憶

 野又 穫(のまた・みのる)「Continuum 想像の語彙」(~ 9月24日、東京オペラシティ アートギャラリー)


ほのかに漂うなつかしさ


 未来のような、過去のような、実際の建築もできそうな、いや不可能そうな。そうした建造物が、こうしたモチーフにありがちなシャープさを排した、明らかに絵と判るタッチで描かれている。

Alternative-Sights-1

 だから作品からは、どこかなつかしさが漂っているように、わたしには感じられた。

Windscape-20 風見の地 20

絵に「吸い込まれてしまう」理由


 そして、作品にはディテールがしっかりと描きこまれている。

Babel 2005 都市の肖像

 鑑賞する者は絵の世界に惹きこまれ、登場人物のひとりとなることで、描かれた物の大きさを実感する。そしてわたしたちの目の前で、作品はとてつもなく巨大になる。


Voyage-1


Land-Escape 10 境景 10

 高い高い塔であっても、すべては「階段でつながっている」。この世界観も、見ていて安心する。

Structuers-1
Forthcoming Places-10

作品世界に入ると見えてくる世界

 ウェブ、チラシ、チケットにも使われている、本展の顔ともいえる作品「Forthcoming Place-5 来たるべき場所 5」。

Forthcoming Place-5 来たるべき場所 5

 縮小されていると気づけなかったのだけど、近寄ってみると、作品から新しい世界が見えてくる。

 作品たちに共通するのは、「階段」でとにかくつながっていること。そして本作でいえば、下は球形の水槽で、魚の楽園?

 一作ごとはそれなりの大きさなのだけど、描きこまれる世界が微に入り細にわたるので、近寄って鑑賞する楽しみがある。

 水槽、はこの作品にも。

Alternative-Sights-1

 だから訪れた人は、絵の前でじっと佇み、眺めるというよりは覗き込むといったようすになっている。

立体作品から感じるリアル

 会場にはまた立体模型も置かれており、絵に描かれていない「裏側」について想像を膨らませることもできる。

野又穫(1955- )は東京藝術大学デザイン科を卒業し、広告代理店にアートディレクターとして就職、デザイナーとして働くかたわら絵を描き続けていました。描きためた作品を1986年、佐賀町エキジビット・スペースにて初の個展として展示する機会が訪れます。この時期の作品から、野又の画面にはいつの時代のものともしれない謎めいた建造物がぽつりと建っています。作りかけなのか、あるいは朽ちていこうとしているのか。鑑賞者が時空を超えたその世界に入り込み、意識を自由に遊ばせることができるのは野又の絵画の特徴のひとつです。(後略)

展覧会の見どころ

だれかの記憶の中、あるいは自分の記憶の中のような

 展示風景。

 一軒一軒の家を訪ねるように一作一作を鑑賞しながら会場を進んでいくと、ふしぎな気分に駆られてくる。

 これはだれかの記憶のような、あるいは自分の記憶のような。

世界の外に立つ世界‐1



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