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ギャラリー,イベントで出逢った作品

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偶然の出逢いも含めた、ギャラリーやイベントで出逢った作品たちを紹介した記事をまとめたマガジンです。
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#学び

ループの結び目,代入-グエン・チン・ティ《47日間、音のない》@森美術館

 森美術館で開催中の「MAMコレクション018:グエン・チン・ティ」(-9/1)。  4月27日にアーティストトークに参加して、しかしそのままになっていた。  トークはとても興味深く、コンセプトのようなものは、なんとなくつかめた気はする。しかし作品空間に入り込むと、その中に深く沈んでしまって、なかなか言葉にならないし、すっきりしない。  それほどに、魅力的で、ふしぎな作品だ。最近になって再訪し、4回ほど連続で作品を鑑賞した。 30分、2スクリーンの映像作品  まず作

ラ・フォル・ジュルネ最終日 -歌姫たちの歌声

 「ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)」5/3-5/5、最終日。 「キオスクステージ」4公演を愉しむ  この日も、前売りを買っていた公演は夜。それまでの時間、気になっていたホールEの無料公演、「キオスクステージ」をちゃんと聴いてみようと思った。  有料公演チケットか、半券があれば入れるエリアに下って、  このように満席なので、とりあえずは立ちながら聴いて、  公演どうしの間は1時間以上あったので、空いた最前列の席で、読書をして過ごした。方々のブースから美しい楽器演奏が

刹那の知覚体験 -オラファー・エリアソン展@麻布台ヒルズギャラリー

 オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期@麻布台ヒルズギャラリー(-3/31)。  はじめにアウトラインがあったほうが、ダイナミックな(同時に、何をポイントに鑑賞したらよいのか、つかみどころがないともいえる)作品の輪郭がつかめるかも?という気が個人的にするので、概要の引用から(原文はすべてつながっており、当方で改行)。 蛍の生物圏(マグマの流星)  はじめに出逢うのは、この作品だ。  球体のなかで光がうごめく。  映る影もまた、生き物のように動

胸が熱くなる,漫画を取り巻く人の想い -集英社マンガアートヘリテージ@麻布台ヒルズ

 11月某日、麻布台ヒルズ。  そのギャラリーとは偶然出逢った。  はじめに目に入ったのは、尾田栄一郎「ONE PIECE」の、あまりにも有名な場面。  厚紙にぎゅっと印刷された、美しい1頁。作家のサイン入り。  気になったのは、対になるように撮影された、画面右の写真だ。活版の版を撮影した写真とセットになっているわけだが、その意味は?  いわゆる漫画関係の展示とは、なにか異なるものを感じる。 Regenesis=復活、の意味  少し長くなるが、尾田栄一郎「ONE

本歌取りの世界を覗く -杉本博司[本歌取り 東下り]@松涛美術館(-11/12)

 杉本博司の展覧会「本歌取り 東下り」が松涛美術館で開かれる(9/16-11/12)を知ったのは、丸亀市の猪熊弦一郎美術館でのことだ。  杉本作品についての「先生」は、瀬戸内海の直島だ。  そこに至るまでの現代アート関連の大先生は、六本木の森美術館。  だから、杉本博司の「本歌取り」といえば、「ああ、あんな感じ」とまでは思い浮かぶ。  しかし、その「本歌」の知識の部分がどのみちあやふやなので、今回も難しくて絶対モヤモヤするのだろうと知りつつも、これは絶対に行かなければ

[ヘラルボニー×成田空港] -新たな言葉と共に,想いを受け継ぐ

 成田空港、LCC利用者にはおなじみの第三旅客ターミナル。  第二ターミナルからの長い旅を終えて、セキュリティチェックに向かう通路に、そのスペースはある。  いつもは急いで通り過ぎがちなのだが、この日は少しここで時間を過ごそうと思っていた。 アート×休憩所 @第三旅客ターミナル  ヘラルボニーとは?  すでにさまざまなメディアで紹介されているが、主に知的障がいのあるアーティストととライセンス契約を結び、多様な事業を展開しているベンチャー企業。  事業は成功し、企業

札幌大通地下ギャラリー[500m美術館] -通行人と展示作品の"同期"

 まず、この作品の、ほんのさわりから。 地下コンコースの「美術館」  展示場所は、札幌大通地下ギャラリー「500m美術館」だ。  500mすべてではないのだけれど、かなり長く長く、作品は続く。 道行く人と作品が、やがてシンクロ  この展示は、500m美術館 vol.42 「The WALL vol.4 富樫幹展 – 平行する時間軸 – 」。  地下道の壁に、この作品が続く。なるほどと感じたのは、次第に、その存在が無視できなくなってくるところだ。  壁画が、「ただ

片山真理 個展 [CAVERN] -美,身体,独立と選択肢

 片山真理 個展、[CAVERN](-2023/06/24)。場所は西麻布交差点のギャラリー、GALLERY ETHER。  その作品をはじめて観たのは、森美術館だ。  「完璧とは?」 をストレートに問いかけられた。セルフポートレートで表現された作家の身体は確かに欠損してた。しかしながら、身体はさまざまな人工的なパーツによって補完、装飾され、1つひとつが美しさにあふれていた。そして身体そのものも、ほかのものと同じひとつのパーツにすぎないように思えてきた。  ちなみにウィ

[吹きガラス 妙なるかたち,技の妙]展②技術発展と,手仕事と

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」@サントリー美術館。①では展示の中でも異色の「第Ⅴ章:広がる可能性 ――現代アートとしての吹きガラス」についてまとめた。  今回ははじめに戻り、ガラスという素材と、技術の進歩にともなう洗練の歴史を見ていく。  なお、館内は基本撮影禁止だが、各章で数点程度の撮影許可作品があった。その写真をもとに、感想とともに振り返っていく。 ■ ■■ 古代の吹きガラス-注ぎ口の作り方  解説にある「道具が限られた」時代とはいえ、ものの形として現代から

東山 詩織「盾、葉」-総体としての世界は美しい +旅気分の隅田川散策

 東山詩織 個展「盾、葉」(〜11月13日、土日祝のみ、Token Art Center.)に足を運んできた。たまたま読んだ『美術手帖』に作家と作品が紹介されており、とても気になってInstagramをフォローしていた。都内で個展があることを知り、心待ちにしていた。 ■小さな分断の集積を俯瞰  まず、作品と展示風景をランダムに。  急な階段を上がって、2階へ。  2階建ての木造建築をリノベーションして2019年にオープンしたこのギャラリーの雰囲気に、作品たちはよく似合

気になる出逢いが[繋がっていた]嬉しさ -みんなのギャラリー@上野

 居心地のいい場所を見つけるのが上手な友人が、上野によさそうなブックカフェがあるというので、3人で訪ねてみた。  センスのいいというの人は、いい感じの場所を見つけるのがなんて上手なのだろう。テーマ別にセレクトされて箱にディスプレイされている本、アンティーク系の家具、大切に育てられていることがわかる植物たち、そのすべてが調和している静かな空間。ただ、その静寂さが、おしゃべりには適していなさそうだったので、「後日、それぞれ1人で来よう」として、その日は店内と建物内を見学するだけ