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君は「いつか」といふ幻を食う

両手いっぱいに
花の種を抱えている君

いつまで迷ってるの?

「いつか」
その言葉を何度も聞いた

何処に蒔こうか
ずっと迷い続けているよね

夏が過ぎ
秋は急ぎ足で深まって
また季節が変わろうとしている

冷たい風が
冬の訪れが迫っていることを
予感させているよ
ほら
銀杏の木は黄色に染まった葉を
揺らせている

君の「いつか」はいつくるののだろう

今日は
雨が降っているから
今日は
日差しが強すぎるから
ここの土は固すぎる
ここの水は合わないかもしれない

そうして
季節は巡り巡って
君の「いつか」は今日もこない

蒔かない理由をまだ探すつもり?

もし
芽が出なかったら

それを考えては
怖気づいてしまうんだね

でもね
芽が出なかったら
また植えればいい

だって
手の中の種はなくならない
それは
君が
長年かけて育てあげてきたものだから

怖いのは
植える時期を逃すこと

君は
種を蒔きそびれて
枯らしてしまうことを
恐れるべきだ

ほら
種を蒔いてごらん
いつしか芽を出し
花を咲かせる
そんな光景を思い描いて
もしかしたら
そのうちのいくつかは
芽を出さないかもしれない
芽を出しても
育たないものもあるかもしれない

でもね
ちゃんと育つ種もきっとある
大切なのは
植えてみること
そして
花咲く日がきっとくる
そう信じること

種は蒔かなければ
芽は出さない

君の花はきっと美しく
咲きほこる 
さあ
種を蒔こうよ
君の「いつか」は今だよ

風の青君は種を握りしめ
「いつかは」といふ幻を食う

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