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そういうときはね、黙って手をつなぐんだ

さっきまで
にこにこ笑っていたかと思うと
急に
黙りこんで
一点を見つめる君
そこには何もないのに

話しかけないで

君の背中が叫んでる

見えない何と闘っているのだろうか

君の表情は険しくて
君の瞳は鋭くて
君の口は真一文字に結ばれている

あのね
君が黙ってしまうと
どうしていいのか困ってしまう
あのね
君が笑ってくれないと
何をしてあげたらいいのか悩んでしまう

ほら
手を出して
君のおじいちゃんは
こうして私の手を包み込んで
ゆっくりゆっくり
固まった心を溶かしてくれた

ほら
手をつなごうよ
悲しくって心がしくしく痛む夜
悩み過ぎて頭の中が
ぐるぐる回って行き場を失った日

嬉しいことに
喜びが溢れて
小鳥のように囀りたいとき

ほら
手をつなごうよ
どんなときも
君のおじいちゃんはね
包み込むように手をつないだ
ただ
笑ってね

そして
そしてね

おじいちゃんが
この世を離れる前にも
笑って
手をつないだんだ

そのぬくもりが
今も励まし続けてくれている
そのぬくもりは
今も語りかけてくる


君は今
思春期の真っ只中
話したくないこともある

そういうときにはね
黙って手をつなぐんだ
ぬくもりのパワーはすごいんだ

ほら
手を出して

手をつなごうよ

月の舟

つないだ手と手のぬくもりは
夜空を走るかアルテミス

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