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【小説】告白されるという失恋 そのあと

この前、大好きなひとから告白されたの

高校入学のときから好きだったひとで
同じクラスになって、隣の席になって、話しかければふつうにやさしくて

ずっと片想い
ちょっとした会話があたたかくて、やさしくてね

視界にはいると、彼だけくっきり見える
ほかのコと話しているのを見ちゃったら…ほんと三日くらい落ち込む

高三になって、彼から告白された
「きみがすきだ」

え…
彼の表情はさえないし、言い方もザツ

なのに…私、どうしたら…

あああああああああ

「あ、あああ、て、照れるなあ…で、でも、嬉しい」
渾身のしぼりだした返事がこれだった
 彼は「え?」と意外そうに驚き、
「…なーんだ。ヤマモトに『ぜってえ成功するからコクれよ』ってしつこく言われたからコクってやったのに。照れるだけか…ふうん、その程度か。ケッ!ばかくせえぜ!」と帰ってしまった

そうか、やっぱりヤマモトか
あいつの面白がる顔が目に浮かぶ

失恋
完全な失恋だ
このあとなにをやってもあとの祭り

      生殺しの失恋
      でもそれなのに、まだ彼が…すき

         ※

 青春の恋が行方なく終わり、わたしは現実に引き戻された。
 ヤマモトに報復してやりたい…!
 
 ヤマモトへの報復プラン
その一、 ヤマモトがひそかに思いを寄せているヤスダさんに嘘の告白をしてもらう
その二、 自分がもっときれいになってヤマモトと彼を見返してやる
その三、 ヤマモトを呼び出し直接抗議する
 
 考えに考えぬき、一番スカッとしそうな方法、その一を真剣に考える。
 高3最後の文化祭でヤスダさんに告白してもらうことにしよう。
 …と思ったが、受験で忙しいヤスダさんに悪いし、ヤマモトも気の毒に思えてきたので断念した。
 そもそも自分がされた悲しい気持を人にさせてはいけないだろう。
 
 文化祭、高3は特別だ。
 人それぞれだが、文化祭も後夜祭も純粋にお客様として楽しむことが可能だ。
 後夜祭の時間になると、たくさんの提灯の灯りのなか、生徒たちがイベントを楽しみに集まっていた。
 校庭中央にステージとして使っているお祭りのやぐらの前で高校生最後の「告白」をすると永遠に結ばれるという伝説がある。
 「へっ…!」
 わたしは誰も聞いてないことをいいことに、初めてこんなふうに笑った。
 


 「どうした?ボーっとして」
 つぎつぎイベントをこなしている最中のやぐらを、ずーーーっとながめていると、チカラが声をかけてきた。
 「お、元・生徒会長。受験勉強はかどってる?」
 つい冷たい言い方をしてしまう。こういう人気者がそばにいると、クラスでじぶんが脚光を浴びる可能性が皆無になる。
 小1から高3までずっと同じクラスという、チカラとわたしの本人たちしか知らない奇跡は、わたしにとってはただ悪夢だった。
 高校最後の今、一番話しかけてほしくない存在。
 
 「いまは高校最後の後夜祭を楽しみたい。ひとりにして」
 「あ、そうか。ごめん」
 チカラがうつむいた。言い過ぎたかな?
 「…噂で聞いた。ヨシムラに告白されたって」
 「え?ああああ…あれ、ね。うん…まあ、ふざけて告白された。コッチは本当に好きだったからキツかったけど」
 「…そっか…!」
 チカラは両手で手のひらとこぶしをうちつけた。辺りは騒々しく音は聞こえなかったけど、なぜかハッとさせられた。
 「なあ、おれたちさ、もし大学も一緒で同じクラスだったら奇跡が続くよな?ど、どうかな?記録更新あり?」
 「えー?アハハハハ…!まあ、でもわたしの成績じゃ、無理!」
 元・生徒会長の優秀男子に自然と生徒たちの視線が集まってきているのが分かる。
 「大学じゃなくたって、これからも一緒にいられれば奇跡が続くし、おれはそうだったら嬉しい。…まだ辛い記憶で気持ちの整理がついていないかもしれないけど…」

 ザーーーーパチパチパチ

 校庭の脇に何十個も並べて仕掛けてあったカラフルな花火が点火された。
 さかのぼるナイアガラの滝のように辺りを煌めかす。
 「…すきだ。学校でも町を歩いていても、近くにいればすぐにわかる!それくらいお前が大すきだっ‼」
 煌めきと火薬のにおい喧噪がいっきにチカラの想いと一緒に押し寄せてくるように、 

 ヒューパパパン!ヒューパパン!ヒューヒューパパパパヒュー――パパパパーン…………‼

 一般で許される極限に大きい打ち上げ花火がクライマックスを飾るように、プールサイドで連続して打ちあがった。
 
 その瞬間、チカラに抱きしめられた。
 ヒャー!とかキャー!とかオオ!とか悲鳴やうなり声などのどよめきがあちこちからかすかに耳に入ってくる。
 「だめ…かな?」
 花火が全て打ちあがり、白煙のなか静けさをとりもどしてゆく。
 「…チカラといると、ものすごく安心する」
 胸の中で深呼吸した わたしは、まどろみの中にいるような小さな声で言った。
 チカラの胸の中で、まだ花火の余韻が続いていた。
 
 Fin


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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
感謝を込めて。


#小説 #告白 #高校 #文化祭 #青春

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