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「わかるわかる」で癒される(『私だけ年を取っているみたいだ-ヤングケアラーの再生日記』を読んで)

『私だけ年を取っているみたいだーヤングケアラーの再生日記』を読みました。

「(人物は架空だけど)ひとつひとつは実際のエピソード」
とあるように、
「あるあるだなあ」
と感じるリアルな感情や場面がいくつもありました。

ほぼ同じようなエピソードを
クライアントさん方々からたくさん伺ってきたし
わたし自身も、
「ああ、わたしもそう思ったな」と
頷ける感じ。


子どもは無力だと痛感すること、
「したいこと」より「すべきこと」を、
「正解はなにか」を、
逡巡せざるえをえなくなること
病人本人にも、もう一人の親にも怒ってたこと
感情をなくしたほうがラクだと感じること・・

家が安心安全な場でないために
のびのびとした子どもらしい感覚が失われていくことも
それでも周りにバレないように
「子どもらしく」合わせるしたたかさがあるのも
リアルだなあと感じました。


「小学生って疲れる」
「友達と遊ぶの面倒」
というセリフがあったけど
わたしも子どもの頃そう思ってたな~。

子どもの集団ってメンドクセーと感じてたし
周りの子はぬくぬく育っちゃってお気楽だな、
自分はもう大人なんだから、と思ってた。

それは
孤独や絶望や、人生への怒りから生まれたプライドで
それでしか心を支えることができなかった
弱い子どもの心そのもの、だった訳なんですけど。

この周りの子の持つ「お気楽さ」は
子ども時代(依存の時期)に必要なもの。

「感情を感じても大丈夫」という安心感やのびやかさが
失われていること、
年齢不相応な負荷の重さが
「私だけ年を取ってるみたい」という
主人公の感覚に通じるのかなあと感じました。

「昔、自分はヤングケアラーだったな」
「ヤングケアラーかどうかは微妙だけど
親の情緒的なケアはしていたな」
と思い当たる方には、

こんな気持ちや場面が
絵やセリフで表現してあるだけで

「ああ、そう思っていたのは自分だけじゃなかった」
「そんな風に感じていいんだ」
「自分が悪かったわけじゃないんだ」

なんて自分に許可を出せたり
共感して癒されることもあるんじゃないかな。
(ちなみに「死んでなかった」と主人公がつぶやくシーン、
あれも「ある。」と頷いてしまいます)


現在進行形で子どもの立場の方には
つながりをもてるような
支援団体を紹介しているのも希望がある。

「誰も助けてくれない」
「家族で(自分で)なんとかするしかない」って
個人が思うしかないような時代から
少し変わってきたのなら
いい流れだなあ、と思います。

「再生日記」とあるだけに
後半は大人になった後の回復の描写なんだけど
やぱりキーになるのは

「自分の素直な感覚や感情を取りもどすこと」。


主人公の上司が
「自分の感情を無視していると
自分を信じられなくなっていく」
と言って
主人公の感情を受け止める場面があるのだけど

これこそ
「自分に自信がない」という感覚を再生する
糸口のひとつなんですよね。


なにかが上手くできるから、
周りに評価されるから、
だから自信がつく、
なんて場合もあるにはあるけど

それよりもっと盤石な
外側の不安定な評価に左右されない自信は

自分が自分の感覚や感情を
「そうだね」と受け入れることで培われる。

つまり、
スタートは「自己受容」と「自己肯定」。


自分は惨めだったな、と思っていい。
自分にとっては辛かった、と認めていい。
「ほんとうはこうしてほしかった」とわかってあげていい。
自分の力だけで全部なんとかしようとしなくていい。


そう自分の気持ちや感覚をジャッジなしに認めることで
自分はこれでよいのだという肯定感が育まれ
自らを信じていくことができるようになるんですね。
インナーチャイルドセラピーは、
そういうプロセスをたどるセラピーです。)



「すべての人間には回復力がある」。
そんなセリフが作中にあったけど
わたしもそう思ってます。

人間は、思った以上に脆い側面があるのもたしか。

誰でも条件が揃えば精神を患ってしまったり
都合の悪いことから逃げたくなる面も皆持っているけど
命が「生きよう」「成長しよう」と向かう力は、
結構タフ。

よくなりたい、ラクになりたい、と
心から望みフォーカスするなら
そのような方向に向かえると
わたしは信じるタイプです。

「家族の形を守るため
あの日わたしは自分を殺した」と
本の帯に書かれていたけれど

一度殺したとしても、
もう一度
今ここに生きている自分の命を
自分の力で育みなおそうと決めたなら
そうすることもできる底力が
やっぱり人にはある。

人生の早い時期に痛みを持った人だからこそ
感じ取れる人生の深みや彩り、
自分や人に対して持てる慈悲の心って
あるよねえ。

それって、

長いこと悩み苦しんだからこそ到達できた境地で
その道のりそのものが、尊いものだよねえ。

そう改めて感じる、
希望もみえる一冊でした。

大人になった「かつてのヤングケアラー」さんにも
読みやすく、共感しやすいんじゃないかな。

【心を耕す一歩 その29歩目】

気持ちを代弁・言語化してくれる本や漫画に触れてみる。

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