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[恋愛小説] 1976年の早春ノート 第3部..3/初夏の北海道 その1

今日は泉と取手のトヨペットのディーラーに来ている。

一昨年にオーダーした60系ランドクルーザーの納車がある。

靖のクラウンも今日が見納めだが、形見として3年程乗ったが、乗り心地が柔らかいだけで、結局自分が好きなクルマには、成らなかった。

そう言う意味で、ランクル60系には、期待していた。

発表された段階でのオーダーだったので、試乗もしていないでから、少し不安もあった。

実は優には、密かな企みがあった。このクルマで泉と北海道へハネムーンに行こうとしていた。

会社には、6月中3週間の休暇を申請していた。

総務課はそんな長い休暇を最初渋っていたが、それがハネムーンだと知って、夏期休暇の前取りと兼ねるという、条件で承諾した。

6月上旬、泉を助手席に乗せ、大洗港からカーフェリー サンフラワー号で出発した。

台風接近があると荒れる太平洋航路だが、この時期は波はまだ穏やかで、翌日は、リアス式三陸海岸も見えた。

ふたりはデッキから霧に霞んだ三陸の断崖を見つめていた。

今回のハネムーン・初夏の北海道1周は、苫小牧を起点・終点として北海道を反時計回りに周遊しようというコースで、期間は3週間を予定している。

だから、何処かで道草が募り、期間内に完走出来ない場合は、後半の稚内~札幌~苫小牧を端折る場合もあるという、事でスタートした。

基本、ハネムーンなので、最低でもビジネスホテルかユースホステル泊まりで車中泊とかは、避けたいと考えた。

又、北海道に住む友達にも会いたいので、それもコース内になるべく入れた。

全体を三分の一に分割し、今回は、苫小牧~支笏湖~倶知安~余市町~小樽~札幌~千歳~日高町~えりも町~広尾町のコースを記録する。

翌午後苫小牧港に上陸した。上陸して違和感がある。

静止している大地なのに、揺れている。今まで揺れていた船に乗っていたから、まだ三半規管が揺れていると錯覚しているのだろう。

揺れている感覚が残っている。

北上し支笏湖へ向かった。千歳市を出ると、鬱蒼とした森林地帯へ入り、市街地の傍に、豊かな自然があることに驚いた。

支笏湖に着く。湖の透明度の高さに驚く。

支笏湖遊覧船乗り場の傍のホテルに宿泊。翌日、倶知安~余市町~小樽へ ここで一泊、運河を楽しむ。先を急がない。

札幌市、北3条通りのANAホテルに宿泊。

大学の友人、汐川、竹山に会う。四人ですすき野のバーで飲んだ。

ふたりとも学生時代と変わらないが、子供が生まれつき障害を持っているのは、自分が酔っている時に、子作りをした所為だと、話されたが、何も言えない。

そして二人からは、今時分北海道へハネムーンで来る奴も珍しいと笑われたが、泉と二人で顔を見合わせて笑っていた。

確かに、ハワイだパリだという時代だが、そんな浮き足立つ旅行より、地に足をつけた旅が良いと言うと、おまえらは変わっていると言われた。確かに、そうかもしれない。

締めは汐川に行きつけのラーメン屋へ連れて行かれるが、流石にラーメンは美味しくて、二人感激する。

札幌支店には近寄らなかった。由佳が居るので、泉と鉢合わせなんてとんでもない。君子危うきに近寄らず…少し違うか..。

翌日、襟裳岬を目指し、千歳~日高町~えりも町~広尾町
日高町では牧場に寄り、サラブレッド馬の美しさに感激。

吉田拓郎の唄のあの何も無い襟裳岬行く。夕日を見て感激する。

それが、1983年6月の出来事だった。




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