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中国のアフターコロナ時代の主役?「今さらながら、今だからこそ、絶対に押さえておきたい『中国ライブコマース』」

今や、あらゆるメディアで語られている「中国のライブコマース」。2019年中国の消費トレンドの中で最も輝いたサービスのひとつでした。消費のオンライン比率がもともと高かった中国で、その可能性を更に高めたサービスと言えます。本日は、このサービスについて、ビジネスシーンで最低限押さえておきたこと、今だからこそ知っておくべきことを中心にご報告したいと思います!

コロナ禍でも中国のオンライン消費は成長している
ご存じのとおり、中国では世界に先駆け2020年1月からコロナがアウトブレーク。消費に大打撃を与えました。2020年3月の中国の消費全体の成長率は▲15.8%。巣ごもり消費の食品・医薬品・通信機器類などを除く、殆どの商品が大幅なマイナス成長でした。そのような中、オンライン取引はプラス成長を続けています。2020年3月のオンライン消費の成長率は+10.7%。結果、小売消費に占めるオンライン消費の割合は2020年3月で27.6%。小売消費の四分の一以上が、オンライン上で取引されているのです。(図1参照)まさに、ソーシャルディスタンスが、最も強く反映された結果と言えます

図1: 中国の消費市場の成長率比較及びオンライン比率の比較画像1

オンライン販売の価値を強烈に高めたサービスのしくみが、「ライブコマース」
2019年11月11日(W11)Alibabaグループによる流通総額4.4兆円の7.5%(約3,000億円)がライブコマースによるものであり、今後5年間程度は、高い成長率が継続すると予想されています。Alibabaグループのライブコマース『淘宝直播』は今後3年間で5000億元(約8兆円)の流通総額を生みだすと言われています。
その機能としてのしくみは、極めてシンプル。『多くのユーザーが集まっているプラットフォーム上で、商品を販売するサプライヤーからの依頼を受けた(一部では依頼のない、自発的なものもあり)発言力のある人物(KOL=Key Opinion Leader)が、「この商品は良いよ!買えば!と明示的に(一部で暗示的に)推薦する」動画を、(主に)ライブで流す』だけなのです。

図2: 中国ライブコマースのイメージ

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もちろん、ライブコマースは中国以外の国でもサービスとしては存在しているのですが、弊社でグローバルにリサーチをかけた中、なぜか、中国だけで、大ブレークしているのです。その原因も深堀りしましたが、その原因仮説は、マクロからミクロまで数十項目があげられています(※ご興味のある方はお問合せくださいませ!)。ただ、原因よりも重要なのは、とにもかくにも、このサービスが中国人に、“ばかうけ”した事実であり、これを活用すること、だと言えます。

中国ライブコマース主要プレイヤーには2つの大きな潮流がある
それでは、ライブコマースの主要なプレイヤーの顔ぶれを確認します。中国のライブコマースプレイヤー(最低限押さえたい超有力プレイヤー)には、2つの大きな潮流が存在します。

ひとつは、ECの有力プレイヤー(ECプラットフォーマー)であるAlibabaグループの淘宝直播や京東グループの京東直播等です。商品を販売するECの視点では、拼多多(団体購買,SNS)、蘑菇街(女性,ファッション)などもあげられます。ECの機能の強化のためにライブストリーミング機能を導入してきました。
そしてもう一つは、コンテンツプラットフォーマーが、新たな収益源としてECを開始し、その最も有効な形がライブコマースであった、というグループです。このグループでは、既に2つの強力なプレイヤーが存在しています。抖音(TikTok)と快手です。この2つは跳びぬけて大きくなりましたが、他にも特定の領域で強力な小紅書(女性,ファッション)なども存在しています。
Alibabaと並ぶ中国ITの巨人テンセント(Wechatの運営会社)は、ライブストリーミング領域では出遅れており(京東グループに出資はしているのですが)、危機感を持って巻き返しに動いています。

図3:中国ライブコマースの2つの潮流画像3

抖音と快手は、明確にターゲットユーザーやビジネスモデルが異なっており、特徴的な2社と言えます。ユーザーの重なりが少ないため、それぞれの特徴を生かした活用方法があります。

図4:抖音と快手の概要
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既にお気づきのことと思いますが、ライブコマースは、ユーザーの多い、特定のプラットフォーマーの“場”を使うことは大前提として、ユーザーの支持が多いKOLを捕まえていることが最も大切なポイントです。膨大なフォロワーを抱えるKOLが多数出現しています。

図5:KOLの例画像5

もし、読者の皆様が、この仕組みを使って、マーケティング活動を行う立場になった場合、最初に考えることは、「売りたい/訴求したい商品にマッチしたプラットフォームとKOLを探し出すこと」であり、そのKOLを押さえることになります。ちなみに、多くの有力KOLは、一部を除き、特定のプラットフォームで排他的に活動することは無いようです。とすると、KOLを捕まえることが最も重要となります。まずは、自社の製品にフィットするKOLを探し出すことに注力したいところです。

興味深いKOLは多数存在しています。既に日本や海外でも有名になっている李子染さん、TikTokで約3,500万人、Weiboで約2,200万人、中国からは基本アクセスできないYouTubeでも約700万人のフォロワーを抱えている方です。四川省の農村に暮らしながら、美食を中心とした、美しい田舎暮らしをショートムービースタイルで流しています。気が付かないうちに、彼女の使ってる商品を使っていた!という方も多数いらっしゃいます。

図6:李子染のSNS画像画像6

自社の製品・サービスにフィットするKOLを見つけ出した後は、彼らにコンタクトし、押さえることでライブコマースを活用できることになります。ここからは、広告・販促プロモーションの専門家とごいっしょに動いていただいた方がよろしいかもしれません(自社の広告代理店様などにご相談いただく等。弊社でもご助言はできますが!)。ここでは、幾つかの大切なポイントをお伝えしたいと思います。

KOLへのアプローチ方法
①MCN(Multi Channel Network)企業へアプローチする。

・KOLのマネジメント、映像制作支援などを行う企業が存在。殆どのKOLは、いずれかのMCN企業と契約関係にあります。(KOLに直接アプローチするルートがある場合は、そちらでも!)
・有力MCN企業は、複数存在しています。
②KOL(およびMCN企業)が扱いたいと思う「武器」を提供する。
・KOLが魅力を感じる、ユーザーに受ける、という何らかの武器を用意する必要があります。特定のセット、何らかのプレゼント、そこでしか買えない特別な製品等が必要です。
・多くのサプライヤーが、「ここでしか買えない」特別セットを、KOLに提供しているケースが多数存在します。
フィー等の取引条件は、本当にさまざまなケースが存在しています。

中国に進出している有力外資企業も、特定のプラットフォーマーに支配されたくはないので、次々に新しい場を探し、ブランドを傷つけない限り、新らしいプラットフォームや、KOLを積極的に活用しています。ここは、見習いたいところかもしれません。
また、その文脈では、ライブコマース自体、技術的に難しいことではないこともあり、弊社の調査からも「限定された領域で強い」「特定の市場に強い」「特定のツールで優位にある」等で、ユーザーを多数ひきつけているサービスが、ライブコマースを導入しブレークする可能性を感じています。
今後も、多くのサプライヤー、ブランドホルダーは、自社の商品・サービスにフィットする新たなライブコマースに注目し続けることになると予想しています。

トップ画像出所:ECのミライを考えるメディア

文章:AAIC (中国) 田中秀哉

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