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あかね噺-第97席・微笑ましい-感想

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「アスミカケル」が終了。決してレベルの低い漫画じゃなかったけど、何かを打ち切るなら、この漫画しか無かったという感じ。
人気が振るわなかったのは、周囲の連載陣との兼ね合いもあるので、一概にこの漫画が悪いという事はないけど、あえて言うのなら、やっぱり巻き込まれ型の主人公の話は、受けにくいのかなと感じます。
巻き込まれ型は、主人公の動機が弱くなりがちで、読み進める推進力や感情移入しにくいという欠点があります。
これを補うには強烈に話を引っ張る道標となるキャラが必要なのですが、アスミはここが弱かった気がします。
ラスボスが兄を早々に見せて、ここに推進力を作ったんだと思うのですが、逆に世界の狭さを感じて、小さい話に見えてしまった気がします。
アスミは主人公の動機など新しい視点でジャンプっぽく無くオモシロイ漫画ですが、「ジャンプっぽくない漫画はジャンプで流行らない」にまんま当てはまった感じがします。
ジャンプっぽくないというのは褒め言葉として語られますが、ジャンプを読まない人が喜ぶ漫画になってる事が多く、新しさというのは逆に評価されない事もあります。
新しさを魅せつつ、ジャンプっぽさがあるというライン。
「あかね噺」も、題材に新しさはあっても、展開にジャンプ的な新しさはなく、このラインが絶妙だったんだなと改めて思いましたって事で感想です。

◆あらすじ


週刊少年ジャンプ 2024年2月12日発売 11号

あかねの開口一番。朝がおとのエピソードを枕にして狸賽を始める。
あかねの高座を見ている記者は、いつもとの感じの違いに驚く。

◆感想


祝・2周年ですが新連載の兼ね合いもあって巻頭カラーはなし、次週はセンターカラーという事で、そこで2周年って話になるのかな?
新連載があるので仕方がないけど、2週連続カラーって事でもないようなので、巻頭カラーは無いっぽい。
ただ100回が近いので、そっちで巻頭カラーがあるのかな?貰えないようだとちょっと勢いが落ちているということにもなっちゃうかも。
内容の方は、ちょう朝から出された出題に対する答えの一端が見れて、このあとの落語に期待が持てる内容でした。
今回は、開口一番・ジェンガ、について書いていきます。

開口一番
出囃子に乗せて軽快に高座に上がったあかねですが、いつもと感じが違いを感じました。
その後の朝がおとのエピソードを枕にするのですが、ここの語りは小学生時代の先生への説明の場面を思い出す感じで、これが同級生からのヒントなのかと思ったのですが、もう一歩進んで、あかねの落語がカッコつけすぎているというのは、目からウロコでした。

見た目とやる落語にギャップがあって、高座に入るとビシッとかっこ良く決めるのは、読者としても痺れるシーンだし、あかねの長所に見えていたのですが、それを逆手に取った回答に唸らされました。
個性を活かすと考えれば、ギャップがあるのが強みであり武器であるという考え方もできますが、落語において仁を出すと考えるなら、同級生が思う等身大のあかねと高座の上で出来る落語家としてのあかね、どっちがあかねの人間性(仁)が出ているのか?と考えれば、等身大のあかねを出す方が、あかねの仁が出ているので良いというのは、納得できました。

個性を出すというのは、簡単に言うけれど本当に難しくて、そもそも自分の個性が分からない人がほとんどだと思います。
芸人やアイドルなど、埋没しないように個性を出そうとキャラを作って夜に出ていこうとする人が居ますが、目先の面白さで一時は注目されることはあっても、作られたキャラは飽きられてしまう物です。
長く成功している人ほど、素の自分の見せ方が上手いと感じます。
今回の話は、そのあたりを捉えていたように感じました。

ジェンガ
ちょう朝から、二つ目からは、自分の落語を聞きたいと思わせてナンボの世界と、説明している通り、同じネタを他の落語家もする中で、〇〇の芝浜が聞きたいと思われないと、自分の落語会に人を集められません。

前座のうちは、寄席には前座枠があり、落語を披露するチャンスは自ら動かなくても機会がありますが、二つ目以降は、同じ境遇の落語家の人数が一気に増えるので、寄席の出番は激減し、自ら落語が出来る場所を作る必要が出てきます。その時に大事になるのが、自分の落語が聞きたいと思ってくれる人を何人作れるかという事になります。

これから二つ目になる、あかねに対して、これからの課題を提示した形になります。二つ目になるというのは、二つ目としての落語が出来るようになっているかという事で、自分の落語が聞きたいと思わせる噺が出来ないと、二つ目になっても意味が無いのです。

朝がおの勉強会に、満員札止めを求めたのも、ちょう朝のこの考えのもとに出された課題だったとつながるのも良かったです。
それに対して、後輩に頼る形になったのは、気になるところですけど、それも含めて朝がおの力という事なのかな?

この説明の後ろのジェンガの図が、芸を積み重ねていく事を端的に表していて上手いと感じました。
積み上げれば良いのは前座までで、そこからは積み上げたものを抜いて上に積み上げていく、抜いて良いものを抜いて上に載せれれば積み上がるが、抜いてはいけないモノを抜いてしまうと積み上げたものも無くなってしまう。
落語に限らず、何かを修練していくのは「ジェンガ」に似ていると納得しました。
「あかね噺」のこういうわかりやすい例えには感心することが多いのですが、今回の「ジェンガ」は久しぶりにめちゃ良いなと思いました。

あと細かいツッコミですけど、ちょう朝の思わせてナンボのナンボって関西弁で、「いくらですか?」を下品に表現した言葉です。
ちょう朝のキャラ的には、こういう粗野な言葉は似合うのですが、江戸落語の江戸っ子らしいキップの良さで売ってるちょう朝が使うのはちょっと違うかなと思いました。
簡単に訳すと「思わせてナンボ」というのは「思わせないと稼げない」みたいな意味です。
吉本新喜劇なんかで、全国区の言葉になってる印象もありますけど、分からない人がいるんじゃないかな?ちょっと気になりました。


やっぱりあかねの落語が始まると盛り上がりますね。
次週のセンターカラーでは、まだ山場は来ないと思うので、100話が狸賽の山場になる気がするので、そこで巻頭カラー期待したいですね。
感想はここまで でわでわ。



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