ちら裏 : 遠のく程に綺麗な夜景
時間が経過していく中で好きだったことや嫌いだったことの記憶が随分とぼやけてきた。記憶を回想していくにつれ脚色がかりどれが1番近しい感覚だったのか忘れてしまった。かつて撮影したフィルムを現像に出し、手元に戻ってきた写真の中には光に晒されてほとんど何も見えないものと、鮮やかに色づいたものがあった。撮ったはずの景色や人々を眺めても、なぜか他人事のような感覚を覚える。不鮮明な写真の方が今ある記憶の曖昧さをより象徴しているようにさえ思える。カラフルな方は、忘れたというよりかは思い出すことが出来ないほうが正しいのかもしれない。ただただ不思議に思う。その写真の一枚一枚には、間違いなくメロがシャッターを切った証が残されている。これらが消えてしまえば、全てが他人事のよう。当時のメロが最も恐れていたのは何かを失うことだったのだと思う。情け容赦なく過ぎて行く1秒1秒を掴もうと必死であらがった証がある。きっといままで多くのトキメキがあったはずなのに、多くを失ってしまった。大切なものをひとつひとつしっかりと丁寧に壊してしまった気がする。その壊した物をいま、慎重に眺めている。