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【後編】 幸せと国際競争力が両立する国 「デンマーク」 のあれやこれや

2024年5月4日から1週間ほどデンマーク社会を様々な角度から学ぶことのできるスタディツアーに参加して来ました!プログラムを通して、「こんなにも面白くて成熟した国があるのか…」と感動し、ぜひいろんな人にシェアしたいと思いnoteに書いてみることにしました!

前編と後半に分かれており、この記事は後編になります!
前編はこちらから!

デンマークの女の子たちから教えてもらった福祉国家のリアル

2日目の夕食は、アブサロンと呼ばれる教会での交流の場に行った。ここはフライングタイガーの創業者が国から福祉の事業を頼まれ、その一環で作ったところらしい。アブサロンの面白いところは、予約さえ取れれば誰でも無料でご飯を食べることができ、知らない人と同じテーブルを囲んで、同じ料理を大皿からシェアして、そして片付けも一緒に行うというスタイルをとっていることだ。200人規模で毎日開催され、毎日満員だそう。私は20歳前後の女の子4人組と隣り合わせになった。高校を去年卒業したそうで、大学について聞くと今はまだ「I’m not ready yet」とのこと。今はそれぞれ興味のある仕事をしながらその後大学に進むのかどうするのか考えているとのことだった。(デンマークでは1人1人自分のペースで、自分に必要な教育をその時々で選択していくスタイル)そこでせっかくだからデンマークの人に聞きたかったこと「ヒュッゲって本当にしてるの?」と聞いてみた。その子曰くヒュッゲは意識的にするものというより、ある状態を指すイメージで、家でソファでゴロゴロしたりするのもヒュッゲだし、職場での上司との関係もヒュッゲじゃないといけないし…みたいなことを言っていた。ヒュッゲという概念は難しいけど、とても自然体で入れて居心地がいい状態のことを指している感じなのかなと、少しヒュッゲとは何かがわかった気がした。また、その子が言っていたことで興味深かったことがある。私が話の流れで「デンマークって素敵だよね。教育は無償で受けられて、迷ってもいい期間がたくさんあったり、自分と向き合う時間がとても多かったり!自分にフィットしたものを選べるね!」と言った際、「自分たちは恵まれていて、そうした権利があるのはわかっているけど、だからこそ前に進まないといけないみたいな社会的な圧力も実はあったりするんだ」と教えてくれた。こんなに環境が揃っていて羨ましいなと思っていたが、実際にその社会にいる人にとってはそれがプレッシャーになるのか…と少し驚いた。素敵な制度のある国でも良いことだけではないような、デンマークのリアルを聞けた気がした。

アブサロンでの食事
初めて会った人同士で、賑やかに色んな話をしている様子


デンマークで2番目に若い27歳の女性国会議員の方との対話

3日目は、国会議事堂に訪問した。国会議事堂にも自転車を停めるところがたくさんあり、車ではなく自転車のみが入れるエリアがあったり、とにかく自転車の人が多かった。なんだか黒塗りの異様な車よりもヘルメットをして自転車に乗っている国会議員や職員の方が信用できるような気がするのは私だけだろうか。
国会議事堂では、デンマークで2番目に若い27歳の女性の政治家にお会いすることができた。(当選した時は25歳)この方は、オルタナティブ党と呼ばれる気候変動に重きをおいた政党に所属していて、今国民やメディアからもとても注目されている方らしい。この方との対話の中では、日本の政治やデモクラシーについて、そして政治家になった理由を聞くことができた。とても印象的だったのは、「デモクラシーはライフスタイルだ」と話してくれたこと。民主主義は日常に落ちていると。デンマークではコンセンサスデモクラシーといって、何事も話し合いで決めるスタンスの民主主義を行なっていて、基本的に多数決ではなく対話で意思決定をする。そして話し合いをするということは、自分の意見を持つこと、異なる意見を持つ相手の話を最後まで聞くこと、異なる複数の意見をどう落ち着けるのが良いかをみんなで探ることを意味する。デンマークでは、こうした対話を小さい頃から行う場面が多く、その度に思考したり意見を交わしてみたりなどを積み重ねている。それが国の方針や、地域や社会の方針という大きいテーマに変わるだけのような感じで、これを指してデモクラシーはライフスタイルだといっていたのかなと解釈した。そして政治は決して他人事ではなく、自分の意見も反映されるもので、自分達が責任を持って対話に参加していくことが必要だといってくれているようにも受け取った。実際にデンマークでは政府が国民に意見を求める仕組みも導入されている。全国民宛に、「このトピックについて話し合いたい人連絡してね」的なメールを送り、そこに反応した人の中から、色んな視点の意見を取り入れるために多様な属性を持つ代表が選ばれ、話し合いに参加できるらしい。国の運営メンバーの一人であるという意識が生まれ、自然と政治に興味を持ち責任を感じるような仕組みだなととても魅力を感じた。

国会議事堂
自転車で通勤する方が本当に多い

また、彼女のバックグラウンドもとても興味深かった。彼女は決して裕福な家庭の出身ではなく、「格差があってもそれが障害にならないようなデンマークの社会システムがあるからこそ、こうして国会議員になれている。だから恩返しがしたい。」という思いのもと活動をしているらしい。そして「何か社会に還元する人になりなさい」と両親から教わっていたという。デンマークの方にはこのように社会や国や地球に貢献する責任感が強い方が多い。そうしたマインドも本当にかっこよく、政治や民主主義に対する印象もとてもカジュアルなものへと変わった1日になった。

森のようちえんで見た 幼稚園児のストレス対処法

今回の旅では、森のようちえんと呼ばれるところにも訪問することができた。森のようちえんとは、できる限り自然環境の中での幼児教育を行う施設のことで、デンマークではとても人気のある幼稚園だそうだ。冬でも雨でも雪でも外で遊び、昼寝も外でするらしい。1日の多くの時間を自然環境の中で過ごすことで体力がついたり、虫など観察することで集中力がついたり、好奇心の赴くままに遊ぶことで感性が刺激されたりといろんなメリットがあるそうだ。実際大人一人で持っても結構重いまるたを3-4歳の子が持ち上げていてびっくりした。

幼稚園のある森
子供達は自由にのびのびと遊びます

また、ストレスコーピングも学ぶことができるらしい。初めに聞いた時は、「どういうことだろう?」と思っていたが、自然と一緒に過ごすことで「居心地の良さ」や「心身が落ち着いた状態」を知り、ストレスがかかった状態に敏感になることができるらしい。実際に訪問の中でも、それらしきものを見る機会があった。
森のようちえんでは、少しの時間園児と一緒に遊ぶ機会があった。木を使って遊ぶ中で、1人の女の子が木の切れ端で手を切ってしまった。私は「やばい!血が出てる!泣いちゃう!」と焦り気味だったが、当の本人は泣くこともなく冷静に先生のもとに怪我を報告しに行った。そして絆創膏を貼ってもらっていた。まずこの時点でなんかすごい。そして遊びを再開した。ただそれまでのテンションとは異なり、どこか泣くのを耐えているような、動揺しているようなそんな状態のまま仲間と一緒に遊んでいた。そしてしばらくして、やっぱり落ち着かなかったのか、一度一人で森の奥の方に消えていったのだ。テンション低めの2-3歳の子が森の奥に消えていくという何とも言えない状況に、「大丈夫かな?」と心配になったが、遠くから見守っていた。そして、森に入ってから10分後、その子が戻ってきて、今度は満面の笑顔で遊びを再開したのだ。これを見た時、「この子は自分を落ちかせる方法を知っているのか…」ととても感動した。これがストレスコーピングかどうかはわからないが、森のようちえんが育むことのできる人間力みたいなものを見れた気がした。


子供達も土に寝転がったり…
とっても自由!

デンマーク旅を終えて思うこと

ここまで印象に残ったことをつらつら書いてきたが、改めてデンマークはとてもヘルシーなマインドを持つ大人な国だと思う。
人々が当たり前に国や社会の課題を捉え、自分の意見を持ち、人の話を聞いて対話をする。一度決めたこともアップデートしてより良くしていくし、いろんな意見を拾ってバランスの取れた課題解決をしていく。とても体力がいることだけど、それができる土台(マインドセットや思考力、そしてコミュニケーション能力など)をみんなが持ち合わせている。人間は現状維持を好み、新しさやこれまでとの違いによる居心地の悪さを拒む生き物であるが、デンマークはそうした特性をよく理解している。

個人的な話になるが、私はゴミの分別をどこかでめんどくさいなと思ってしまう。ついこの間も自治体のゴミ捨て方法が変わり、面倒に思ってしまった。環境のためリサイクルをした方がいいのはわかってはいるが、分別方法が各自治体で違ったり、細かく決まりがあって覚えられなかったり、考えることが多いなと感じてしまう。しかし、このような反応はリサイクルの進むデンマークでも同じらしい。ただ日本と違うのは、人々がより善い行動に向くような仕組みが設計されているところだなと私は思う。たとえば、学校では地球の一員としての感覚を学んだり、リサイクルをすることで報酬がもらえたり、分別に迷わないようアプリで分別方法がすぐ分かったり、牽引免許も必要なく大きなゴミを収集所へ運ぶことができたり…。ただ、「環境のためにリサイクルをしましょう」というだけではない、人間をしっかりと理解した仕組みが、人の行動を変えているのだ。

今回の旅を通して、デンマークの幸福度の高さと国際競争力の高さの共存が可能なのも理解ができた。初めはどうしたらそんなことが可能なのかと疑問だったが、様々な分野において善を目指せる健全なマインドと、それを実現するための思考力がある国だから可能なのだと思う。

さいごに

ここまで読んでくださりありがとうございます!軽くまとめるつもりが気がついたら、書きたいことが溢れて結構なボリュームになっていました。(笑)何か少しでも興味深いなと思ってもらえたものがあったら嬉しいです!今回は真面目なテーマでデンマークについてまとめましたが、単純に旅行先としても素敵な国なので次の旅行の候補にぜひしてみてください!

ではでは!おしまい。


コペンハーゲンから少し離れたロラン島でみた空
綺麗すぎる…!

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