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統合失調症の一族 遺伝か環境か/狂人日記

中国の小説家、翻訳家、思想家である魯迅の狂人日記を読んで、背筋に汗をかくような、だけど、懐かしい感覚を覚えた。

さて、だから蓋をして避けてきた「統合失調症」について最近発売された本とともに知ろうと思う。


その症状は遺伝であろうか、環境によるものであろうか?

私も発症する確率は高いのだろうか?

統合失調症の一族

「統合失調症の一族」という本は、症状を理解するカギを探し求める研究者たちの、調査の対象であるギャルヴィン家について記されたものだ。
同一の環境下で育てられた人間を比較できる極めて稀有な一族の話である。

12名の子供のち6名が統合失調症を発症し、残りの6名は発症しなかった。
遺伝であると言えそうだが、多すぎる子ども、次々に妊娠する母親と行き届かない大人の目という点で環境的要因も否めない。

過去、遺伝説と環境説がバラバラに意見を唱えていたが、もともと統合失調症になりやすい要因を持った人がいて、環境の変化や人間関係の大きなストレスが発症のきっかけとなる「遺伝と環境の両要因」が作用するという仮説が支持を得ている。

子供時代や、困難な状況下に置かれている人は自力でその環境から抜け出ることが難しい。
発症しやすい遺伝子を持ったヒトが過度なストレスに晒され続けることで症状が出るのだとしたら、誰が当事者を責められようか。

症状

「陽性症状」妄想、幻覚、思考障害
「陰性症状」感情鈍麻、思考の貧困、意欲欠如、自閉
「認知機能障害」記憶力・注意集中力・判断力の低下


統合失調症は、人種、民族、地域を越えて、100人に1人がかかっていると言われる精神疾患の1つであるが、原因がわかっておらず、発症原因として有力視されているものが脳の神経発達異常だ。

統合失調症の一卵性双生児の発症一致率が50%、患者の親から生まれた子供の発症率は10倍に上昇するなどの事実から、遺伝の関与が強く示唆されている。

私の親(以下彼女)は私には解らない話をした。
彼女は霊魂や神、悪霊、声、見えないものと常に戦って疲弊した。

機嫌がすこぶる悪かったり、良かったり、何かしらの制限があったりし、それは経済状況が悪くなるほど酷くなった。
生活に対する不安や恐れ、彼女の親や兄弟との関係が張り詰めるほど、"何か良くないこと"が起こった。

道を歩いていたら"ここから先へはいけない"、"塩を持ち歩かなければならない"、"お供えをたくさんしなければならない"などである。

ある日突然声が変わってすごく低音になったり、またある時は顔がみるからに引き攣っていたりもした。人格も少し変わる。

今日の彼女がどんな彼女なのかわからないからこわかった。
"こわい"という感情は、解らないから引き起こるものである。
あの時の私は相手の感情を上手く汲み取れず、常にこわかったのだ。
非合理的なことに傾倒して、祈る内容は合理的だったりする非合理な時間へ、幼い私は理解が足らなかった。

彼女の親、私からみたらおばあちゃんも似ていた。

彼女が神の妻になる話を聞いた時などは、フロイトやユングらによって分析された「シュレーバーの回想録」を連想させた。

ダニエル・パウル・シュレーバーは、ライプツィヒ大学を優秀な成績で卒業したあと、裁判官としてのキャリアを築き、ザクセン王国の最高裁判所にあたる控訴院の議長にまで昇りつめた人物である。ところが、まさに議長に就任した直後、彼を狂気が襲った。

シュレーバーの回想録

計算もゲームも日々の家事も社会で必要な様々な手続きも普通にこなせる。
幼い私は彼女を失うことが出来なかったし、霊や力のある神がいる話を聞くことは嫌いではなかった。

中世では投獄・追放・悪魔祓い、近代では優生思想による不妊治療やロボトミー(前頭葉白質切截術: 人格と知性が犠牲になる)の対象にもなっていた精神疾患者とみなされる人々への扱いの事実は、"医者に行きたくない"と言う彼女の恐怖を察するのには十分過ぎた。

そして治る薬がないという、医者にかかる上での無意味さも相まって、私は「彼女に特別な力がある」と信仰した。

今はこわさを感じない。
"科学教"を信仰しているわたしは彼女と宗教は違うけど、私は知らない世界を覗くのが好きなのだ。

もしかしたら本当に神や霊や妖怪やUFOや宇宙人(地球外生命体は居ると信じてる)やその他多くの人が見たことがない存在が実在するのかもしれないし、そこにロマンも感じる。


そして異なる宗教の人と対話するときの「距離感」は大切にしたい。

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