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BIG ISSUEと漁港の肉子ちゃん

運がいい人と悪い人がいる。
それは社会を形成する上で仕方のないことだとも思う。

私は、やっぱり運がいいなぁと思う。

BIG ISSUE

ホームレスとはどういった人であろうか。

定義
第二条 この法律において「ホームレス」とは、都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう。
ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法

駅前でホームレスさんが売っているBIG ISSUEを初めて買った。

いままでの私に余裕がなかったからなのか、この雑誌がどういった仕組みでできているのか、そもそもホームレスが生まれる意味が解っていなかったから手を伸ばさなかった。

だから知ろうと思う。

定価450円の雑誌『ビッグイシュー日本版』

ホームレスである販売者が路上で売り、230円が彼らの収入になります。
最初の10冊は無料で提供し、その売り上げ(4,500円)を元手に、以降は1冊220円で仕入れていただく仕組みです。

販売者は、現在路上で生活しているか、
あるいは安定した自分の住まいを持たない人々です。
住まいを得ることは単にホームレス状態から抜け出す第1歩に過ぎません。
そのため、販売により住まいを得た後も、必要な場合にはビッグイシューの販売を認めています。

販売者は顔写真と販売者番号の入った身分証明書を身につけて雑誌を販売しています。
THE BIG ISSUE JAPAN

ゴミ漁りしていた彼に温かい缶コーヒーを渡して奇声をあげられたことを思い出す。
きっと彼には知的な問題があった。

ビッグイシューを売る人は全く問題はなさそうだった。

ただ本を売っているだけの普通のおじさんのように感じられる。
販売するにあたって細かな規約もあるからだろう。
ちなみに道路を占有していないので特別な許可証など必要なく、警察にも確認は取って仕事をしている。

昔は1冊200円、今は倍以上するけれど、きっと"このような雑誌を買う人"は買うから、値上げしても大丈夫であろう。
1日に10冊くらい売れるみたいで、2000〜3000円の収入になるそうだ。

発祥地のイギリスに住んでいたときも、もちろん売っている人がいた。
彼らの「BIG ISSUE、BIG ISSUE」と言う、よく通る低音の声が耳の奥に残っている。

日本ではそこまでの主張はない。
アテネやイタリアでは子どもや女性が"半ば強引に押し付けた何か"の対価を積極的に貰いに来ていたことを思うと、日本のホームレスはお行儀がいいように感じる。
押し付けた何か、とは、音楽だったり、切符の買い方だったり、同情できる話だったり、花だったりする。

別に必要としていないけど、お財布にお金はある状態でぐいぐい来られると買ってしまう。
お金でモノをどんどん買うことは資本主義社会での正解なのかもしれないけれど、ちょっと疲れる。

一度きりの観光地だから成り立つ商売。
嫌われても構わない姿勢と強いメンタル。
すごいなぁ。

けれど、やっぱり売り物はそっと置いておくのがいい。
日本の売り方はいいなぁとしみじみ思う。

彼らは働いてる。
モノを売って対価を得ている。

けれど普通の生活ができない。
それは時給が見合っていないからだ。

東京の最低時給は1072円で、BIG ISSUE1日の売り上げは3000円。


普通ってなんだろう。

漁港の肉子ちゃん

「普通っていうのんはな、ご飯食べて、うんこして、勉強して、働いて、お風呂入って、眠ること」

たまたまテレビで放映された"漁港の肉子ちゃん"を観て原作本を買った。

社会の仕組み上、職にあぶれる人は出てくる。

仕組みの問題でもあるし、
遺伝子の問題でもある。

人生色々なことがある。
介護、育児、障害、職が社会にあるかどうか、怪我、宗教、知能、教育環境、国、時代..あげればキリがない運の要素が絡まってヒトは産まれる。
"運"だけで私は生きているな。

自分は健康でも、子どもが障害があるかもしれないし、家族が事故に遭うかもしれない。
だから社会保障というものがあるけれど、社会保障を利用しない人も生きていくのには必死である。

困ったときに利用できるものは利用する方がいい。

純真さと社会の闇と、難しさが肉子ちゃんの明るさを通して描かれたこの作品は、私の好きなさんまさんが企画プロデュースしている。

絵柄からジブリのような子ども向けかと思うけれど、内容は生きづらさや人生の直接的な描写が響く。
明るさの中に影やシワがあって、笑うことの力を知る明石家さんまさんだからこの本を選んだのだろう。


現代日本で暮らす人の共感は得づらいかもしれないけれど、スラム暮らしをしたことがあるならおすすめ。

世の中の人は運を良くするために活動しているんだろう。

ただ、運が良い人と悪い人がいるだけのことだ。

BIG ISSUEを売る人とその事業をする人の祈りがホームページに記載されていた。

2007年秋の世界経済危機後、50~60代が中心だった販売者の年齢が若くなり、30代、40代の人が増え、20代の若者もいます。一方、大卒者の就職率は76.1%(2017年)、3年後に30%以上が離職、非正規雇用者は2,023万人、37.5%(2016年)と過去最高となっています。

ビッグイシューは、若者を使い捨てにしない、ホームレスにしない社会、若者が喜んで社会に参加できる未来を願って活動をしてきました。今後も、基金とともに、若者の困難、住宅、ギャンブル依存症、新たな仕事づくり(シビックエコノミー)などの問題への政策提案を続けます。
そして、ホームレスの人を中心に、社会から排除されやすい生活に困窮する人々、生きるのに困難を抱える人々とともに活動を続けます。
THE BIG ISSUE JAPAN



BIG ISSUEは2003年から日本で販売されていて、これまでの登録者数は2009人、14億8,920万円の収入を提供してきた。(2022年3月)

世界では日本、イギリス、オーストラリア、台湾、韓国で売られている。

持続可能な社会でヒトが生きていく。

おまけ

生き物と関わりを持つと気になってしまうので、そこまで深く関わらないように線を引く気持ちが少しある。


積極的に関わると生きる力を奪うことになったり、自然の摂理に反すると思ったりもした。

人の時間や労力は有限で、だからヒトのそばで生きる動物の頭数管理は必要だ。
関わろうとすれば責任が生まれるし、私は生き物に対して無闇に責任を負いたくないんだ。


ただ、そんな私に対して彼は言った。

「(動物にエサを与えることで)余計苦しめてるみたいに言われたことあって少し悩んだところもあるけど、
ぼくのエサで少しでも長く生き伸びた先に誰かに拾われたり、他のエサやりさんに出会ったりいい事が起きる可能性の方が高そうだし(中略)
関与してもいいかな、という気持ちもあって

そうだね、ぼくはたぶん喪失の哀しみ含めて受け止めるつもりで関係して、みんなを記憶に遺そうと写真撮ったりしているのかな。」

いいなと思った。



定住地がなくて、外の世界で起きて、寝て、ご飯をもらって、空とヒトをみてる生き物。
視界の端にすっと現れて、居なくなる。

ヒトに飼われていない動物の寿命はおおかた1/3くらいの短さになる。



私はヒトのそばにいるのが好きだ。

私の周りの人の運が良くなるように今日も祈ってる。

本が欲しい