マガジンのカバー画像

私小説 [朝寝とんかつ]

18
自分が書いた私小説まとめです。
運営しているクリエイター

#寝かしつけ

赤ちゃんスポーツマン[私小説/ショートショート]

赤ちゃんスポーツマン[私小説/ショートショート]

 間もなく一歳になる息子が、うっかり夕方に寝てしまった。寝る準備を終えて、気づけば時刻は二十時半。目標就寝時間は二十一時。いつもなら三十分あれば寝てくれるが、きっと今夜は寝つきが悪いだろう、と覚悟はしていた。そして、私はその覚悟を胸に、電灯のリモコンに触れた。この時、まさかこんなに激しい寝かしつけになるとは、思いもよらなかった。

 ピッ。リモコンのスイッチを押すと、部屋の灯りが常夜灯に切り替わっ

もっとみる
二人の催眠術師[私小説/ショートショート]

二人の催眠術師[私小説/ショートショート]

 催眠――眠気を催させること。催眠術――相手を半ば眠らせ、暗示を受けやすい状態にさせること。催眠術師――催眠術を行う者のこと。

 時は令和。あるところに、二人の催眠術師がいた。一人は姉よ二歳女児、もう一人は弟の○歳男児。二人の姉弟は、生まれた時から催眠術師の素質を持っていた。まだ幼い姉弟には暗示を行うことは難しいが、眠気を催させることには長けていた。
 姉弟は大人たちをいとも容易く眠りへ誘う。そ

もっとみる
おばけさん、お願いします[私小説/ショートショート]

おばけさん、お願いします[私小説/ショートショート]

 昨日は色々なことが起きた。娘が泣いては感化された息子が泣き、息子が泣いては感化された娘が泣き、それを長らく繰り返した。原因は単純だ。駄々をこねる二歳児娘と、泣きたい盛りの赤ん坊息子だからだ。

 いつもならば、夜は八時には寝る準備をして、八時半には消灯する。が、昨日はそんな一日だったからか、寝る準備をする頃には八時半となっていた。すると必然と、消灯は九時頃になってしまった。

 夜九時を過ぎると

もっとみる