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上海乗り換え道中膝栗毛

中国の上海国際空港は二つある。

上海浦東(プートン)空港と上海虹橋(ホンチャオ)空港の二つだ。

日本でいうと、羽田空港と成田空港が「東京」と国際的に表記されてるのと同じ感じで「東京が二つある」と言った感じ。

そしてまさに、中国のその二つも日本の成田ー羽田間に匹敵するほど距離が離れているらしい。


「羽田発だと思って着いたのに、よくチケットを見たら成田発だった」

と知ったらどうだろうか。

顔は真っ青になり、見たくも知りたくもない現実と向かい合い、あらゆる事を選択肢として考えなければならない。


それが母国であってもこんなにも怖いことなのに

私はそれを中国で体験してしまった。



1月4日、三が日の香りがまだまだする明朝。

私はプーケット国際空港から4〜5時間で上海浦東空港に到着した。

入国審査で多くの日本人(と見られる人たち)が足止めを喰らって失墜するのを横目に、私は『流暢な英語』(実際そんなことはなく、だいたい聞かれることがわかってるため)で見事に交わし、中国の上海浦東空港に入国。

「私って英語で話せちゃってすごい❤︎自己肯定感爆上がり❤︎」

だから1人海外ってやめられないんだ。


さて、時刻は5:30。

羽田行きの飛行機まで4時間もある。

スタバでも飲むかと呑気に考えながら乗り換えに向かった。

「私の乗る便はどれかしら〜?」

しかし、私の予定してる便を表示版で確認しても見つからない。

9:35発羽田行きはどこ?

航空会社もあっているし、なぜ電子表示版に表示されないんだ?


通りかかった中国人の若者2人に『おぼつかない英語』で話しかけた。

「(eチケットを指して)この便はどこにいけばいいの?」こんなふうに聞いたと思う。

若者2人は戸惑っていた。

「あれ?こいつ、乗る空港まちがえてない?こんなおぼつかない英語しか話すことができないやつになんと言えばいいのだろう」

若者2人はそんな心中だったろうか。

私はその2人の反応を見て、何かやばいことになってると薄々と感じ始めたけど、それを感じ取りたくなかった。

臭いものに蓋をしていた。


でもそんなんじゃ解決に向かわない今案件。

でも知りたくない現実。


若者2人は空港インフォメーションに私を案内した。


『完全なる日本語』で話す私と、ボイスチェンジャー式自動翻訳機を使って答えてくれる中国人インフォメーションスタッフ。

コミュニケーションに時間がかかるし、迷惑をかけているのはわかっている。

私は何かを犯してしまっているのだ。

でもその事実を知りたくない。

私は何かと葛藤していた。


インフォメーションで中国人スタッフを困らせてる日本人がいるというのが目立ったのだろうか。

日本人らしき人が話しかけてきた。

『どうしたんですか?』

普通ならそんな助けの言葉をかけてもらって

「神様降臨!」と思うのだろう。

でも私は咄嗟に「やべ!恥ずかしい!揉め事起こしてる日本人って思われたかも!!」と思った。


その人は男性で、おそらく30代半ば〜後半くらい

私よりは年上だけど、大きい括りで言ったら同世代の人だった。

まさにその人は『流暢な日本語と中国語のバイリンガル』。空港のスタッフと私に丁寧に説明してくれた。

『あなたの乗る便はここから離れた空港で、その距離は日本で言うと羽田と成田くらい離れているよ』と。


まあ、なんとどストレートな!

でも私は一発で理解した。

自分はなんとどデカい間違いをしていたのだと。


その人は続けて言う。

『ここからタクシー使っても2時間以上かかるし、渋滞も考えたら、この出発時刻は間に合わないよ。地下鉄もあるけど、同じくらいの時間が見込まれるよ。』

一瞬で現実に引き戻してくれた。

私も一気に現実モードになり「これって便を変更したほうがいいですかね?」とその人に聞くと。

『その方が賢明な判断だね』とバイリンガル。


私はすぐさまその言葉に従った。

「便を変更しなければ!」

そう思って猪突猛進に国際チケット受付に行こうとしたが、

あの親切なバイリンガル日本人男性にお礼を言うのを忘れてしまっていた。

私が気づいて振り返った時にはその人の姿は上海浦東空港の中に消えていってしまった。

せめて名前だけでも聞いておけばよかった。。。

これが世に言う「せめてお名前だけでも」案件。身を持って体験した。


しかし、時間がない。受付に便の変更を申し出にいった。

「ここではできない。予約した旅行会社に変更を申し出てください。」

とのこと。

私はツアーで申し込んでしまっていたから、航空会社と直接やりとりしていなかった。

急いで近畿日本ツーリストの連絡先を調べた。

あった!これだ!

電話をしてみたけど繋がらない。

毎日9:45〜17:00の受付時間だったからだ。

今から日本時間9:45まで待つ?

そんなことできないし、もはやそんな出発時間のギリギリで変更は不可能だろうし、

なんてったってWi-Fiが繋がらないもんだから電話すらできない。


便を変更できない。

どうしよう。

虹橋空港まで行くか?

でも知らない異国の地でタクシーを使う?

渋滞も予測しなければならない?

地下鉄に乗る?

もはや乗り方もお金の支払い方もわからない。

んでもって中国の通貨「中国元」をもっていない。


「ええええい!もうこうなったら!!!」


私は新たにチケットを購入した。

中国上海浦東空港ー東京成田空港の便

89,645円。



こうして無事に私は今、飛行機に乗っている。

この飛行機は3時間ほど遅延しているけど。


でも、それで良いのだ。

なんならはなまるだ!!!


89,645円?

んなもん勉強代だ!!

「中国上海空港は二つあった」と身をもって知れ、

今の歳となっては貴重な?異国でのわちゃわちゃドタドタした経験ができたのだから。


89,645円?あー、家賃。(家賃の方がもうちょっと高いけど)

私はいまだ家賃程度の一括キャッシュを怖がってチキってしまうほどの収入しかないという事実も痛い。

されど経験に変えられたならなんも痛くない!

もはやこのネタ(まだネタに消化できてない)を一生分話して元以上に取ってやろうじゃないか!!


あともう少しで日本に着く。


大学時代の卒業旅行で断念し、9年越しの思いを背負ったこのプーケット旅行。

一度は行きたかったなんならめっちゃ行きたかったところに行ったのに、プーケットを今何一つとして思い出せない。




私はこうしてまた自分に落胆して

自分を受容していくのだ。


30過ぎてからの自己受容はこんな感じでいいのかも。


2024年。

本厄脱出まであと1か月に迫ったこの日に「厄年」を身をもって経験した私でした。



上海乗り換え道中膝栗毛。

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