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キャラクター設定資料を公開します <プロットからの変化> 

小説のキャラクターは描くうちに変貌します。作家の中でもキャラクターの扱いは変化していく。そのことを書こうと思います。

連載中の『アッコの夏』のキャラクター設定資料を公開します。


公開と言っても、私の場合はご覧のようにあっさりしています。
(キャラクター小説のように、唯一無二の魅力的なキャラクターを立てる作者は、履歴書や経歴書からコスチューム一覧まで、詳細な設定をすると思います。そちらの参考にはならないと思います。すいません。)

資料の項目欄は「名前」・「イメージ」・「性格・振る舞い」・「仕草・見た目」・「詳細設定」と続きます。
企画書、あらすじ、シーン表などと一緒にプロットの一部ですので、小説の本編を書き始める時に準備している内容だと思ってください。

キャラクター設定資料

この資料は登場するキャラクター全員分なので、一部だけ貼り付けましたが、体裁と基本の内容がわかっていただければ、と思います。
(編集さんに見せる企画書は、主要人物の性格・特徴だけで良いでしょう)

タイトルに書いたように、書けば書くほど、キャラクターは成長し、変貌していきます。プロットに書いた作家の思惑を飛び越えて、自由に思いも寄らぬ行動や発言をします。

それが小説を書く楽しみの一つです。ですからキャラクターの性格も経歴も更新をすることになります。
 三枚目のキャラがイケメンになったり、冷静な理論家が実は熱いやつになるのは珍しくありません。そういう時の方が、キャラが生き生きとします。
キャラに引っ張られてストーリーが変わることもあります。

私はプロット時点でキャラをつくる時、有名人のイメージをお借りするのですが、当然、それも変わっていきます。

 設定資料を見返すと、『アッコの夏』の主人公であるアッコの「イメージ」欄に「いもとあやこ」と書いてあります。サマスペ(『アッコの夏』の前に書きました)の出だしの時のアッコは、イモトアヤコさんだったんだなあ、と感慨深く思ったりします。

 初めて書いた時は、イグアナと競争しているイモトさんと、合宿のスタートで新人を追いかけるアッコが重なったのです。
 その頃のイモトさんが大人の女性に変貌したように、今の私の中では、アッコも結構、魅力的な女性に変わっています。

余談でした。

私はもともとストーリー重視で、キャラクターありきで書いたことはないせいか、編集者さんに何度か「酒本さんの都合でキャラクターを動かしていますね」と指摘されました。

私の中での位置づけは、ストーリーのためにキャラクターが奉仕する、というものでした。読者が驚く展開を描くのだから、キャラクターが突飛な行動をするのは当然だと。

下にリンクしたのは、一年ほど前に書いたキャラ設定についての記事です。この時はプロット作成の一環として、どうやってキャラを設定するか、イメージの仕方、区別はどうするか、というようなテクニック論を書いています。


ところが、このところ同じ登場人物の小説を続けて書いているせいか、キャラクターに深い思い入れするようになりました。
主人公だけではなく、脇役たちも含めて、付き合いが長くなるにつれ
「お前にも言い分があるよな」
「こんな所で死にたくないよな」
 そんな風に感じるようになったのです。

作者の都合ではなく、キャラクターの都合で動かしてやりたい


言い換えれば、ストーリーのためにキャラクターが動くのではなく、キャラクターの意思やよんどころない事情で動く。

そうなれば、「作者のご都合主義」は消えて、読者は違和感なくストーリーを追うことができるでしょうし、深い感情移入もできると思います。

つまり
「キャラクターのご都合主義で書く」
ということです。

『アッコの夏』はシリーズ2作目でもあるので、登場するキャラクターとは長い付き合いになっています。

もともと『アッコの夏』を書こうと思ったのも、前作『サマスペ! 九州縦断徒歩合宿』のキャラのエピソードをもっと書きたかったからなのです。
(最近は特に、アッコの先輩、大梅田の性格と行動を描くのが楽しみです)

ストーリーを書く楽しみは、キャラクターを描く楽しみでもあるんだなあ。
そう思うようになりました。
今後も精々、アッコや大梅田たちに振り回されて、書いていきます。

おかげで本編を書き始めるときのプロット(私の場合は『シーン表』と呼びますが)はつぎはぎ状態ですが、良い本編を書く事前準備というプロットの役目は十分に果たしてくれていると思っています。

長くなりました。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

※ちなみに作家さんたちの話を聞いていると「作者のご都合主義」は、編集さんに指摘される言葉のベスト3に入るのではないかと思います。


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