見出し画像

完全寛解しなくても仕事はできる話:PSWの福祉コラム

こんにちは、PSWライターのりくとんです。今日はタイトルのとおり「完全寛解しないままに働く」ことについて、ちょっとしたこぼれ話コラムをご紹介したいと思います。

寛解とはどういう状態か

タイトルにある『寛解』(かんかい)とは、『症状が落ち着いて安定した状態』を指す言葉です。例えば、うつ病、統合失調症、睡眠障害、がんなど、再発の可能性がある病気に使われています。ちなみに『完治』は完全に治ってもうフォローがいらない状態を指しますので、寛解と完治では意味合いが少し異なるのですよ。

寛解しないと仕事はできないのか?

精神科に勤めていると、発病をきっかけに仕事を休んだり、辞めたりするケースに遭遇します。また、仕事をしたいのになかなか寛解に至らず、再就職できないと嘆かれる方も少なからず存在します。しかし、結論から言いますと寛解しないと仕事ができないなんてことはありません。

今日ご紹介するのは、寛解していない自分をプラスに捉えなおし、今までの仕事を続けることができたとある事例のお話です。(個人情報の関係から、性別、年齢など個人を特定できる可能性のあるものは全て変更しております。)

事例紹介「彼女の場合」

40代女性。一般的な日勤の時間帯で接客業務(パートタイマー)を行なっていたが、親族の不幸事への対応をきっかけに睡眠障害を発症した。なかなか寝付けず、寝ていてもすぐに目が覚める。また早朝に目が冴えてしまうので、仕事に行くことはできるのだが勤務中に眠気が襲ってくる状態。何度めかの時に眠気に耐えられず、倒れ込んでしまったため当院を受診した。

このケースは、入眠困難、浅眠、早朝覚醒が症状として出てきたケースです。ちなみにこの方、入眠困難と浅眠は薬物療法で解消されたのですが、早朝覚醒だけは症状として残ってしまい、寛解とまでは至りませんでした。

困りごとはどこにあるのか

私が彼女から聞き取った『彼女の困り事』は、早朝覚醒による午前中の無為な時間早朝覚醒の結果仕事への集中力が続かないことでした。

彼女の覚醒時間は午前3時前とかなり早く、洗濯を回したり掃除機をかけるのは自重。調理の音で家族を起こしてはいけないと朝ご飯の支度もできません。またあまりに早起きなので、仕事途中に眠気が襲ってきてしまい、日々「また倒れるのでは?」との不安と戦っている状態でした。

彼女を助けたのは「ダメ元の打診」

私が彼女にお話ししたのは、職場の上司に相談することでした。実は彼女、職場には「疲れがたまったみたい」と伝えており、睡眠障害のことは伏せたままだったのです。

ひとりで悩んだ結果が「辞める」なのであれば、「辞めさせられるリスク」はゼロです。睡眠障害なんて今日び珍しい話ではありませんし、自分の状況をきちんと伝えて環境が好転する可能性があるならそれに賭けてもいいのではないか。彼女にはそう話しました。

結果から言うと、彼女は職場に相談し朝5時から13時までに勤務変更することができました。実は彼女の職場はパン・洋菓子の販売店。ご存知の方も多いとは思いますが、パン屋の朝はとても早く、早朝勤務が可能だったのです。

早朝パートを募集をしていなかったため、時間変更を考えていなかった彼女。実は、いくら募集しても応募者が来ない時間枠だったため、店側も募集を諦めていた事情があったのでした。

彼女の着地点

日勤の販売専門のパート職員だった彼女はその後、早朝の製造業務、午前中の販売業務に携わるようになり、パート職員を束ねるリーダー的存在になりました。

毎日朝早くから仕事に出かけ、仕事を終わらせてから家事をして、少し早目に就寝する生活パターンが定着した今となっては、早起きが早朝覚醒の症状なのか仕事のために起きているのかわからない状況だと話しています。

まとめ:寛解しなくても仕事はできる

仕事がしたいのに、病気だから仕事ができない。そういう状況は往々にあります。ですが症状によっては、ちょっとした着眼点の変更で今までどおり、それ以上の仕事ができる場合だってあるのです。

今までどおりができないのであれば、「どういう環境ならできるのか」に着目してみましょう。意外な着地点に、就労環境が整う場合がありますよ。




駆け出しライター「りくとん」です。諸事情で居住エリアでのPSW活動ができなくなってしまいましたが、オンラインPSWとして頑張りたいと思います。皆様のサポート、どうぞよろしくお願いします!