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毎週ショートショート お題 「海のピ」



 幸子は毎朝の日課として、海岸のゴミや漂流物を拾い清掃していた。
 空き缶や空き瓶、お菓子の包装やペットボトルなど海岸に落ちた様々なゴミの中には、どこから流れ着いたのか外国の文字で書かれた洗剤の容器なんかもある。

 海や海岸を少しでも綺麗にしているつもりが、幸子はゴミを拾えば拾うほど、日々この星が汚されていくのを実感するだけのような気がしていた。
 砂浜の流木に幸子は腰掛け海を眺めた。
 海は穏やかに広がり遠くで空と一つになっている。降り注ぐ朝日は海面をキラキラと気持ち良さそうに漂い、潮風を吸い込むと体中に活力が満ちていくのを感じた。
 これ以上、何を望む必要があるのだろうか。

 ふと波打ち際に目をやると、プレートのような漂流物が砂浜に刺さっているのを見つけた。
 幸子が近づくと、プレートの「P」という文字の部分だけが確認出来た。それはナンバープレートほどの大きさで、引き抜くとプレートいっぱいに「PEACE」と書かれていた。

 「誰が言ってんだよ」と幸子はプレートを叩き、またゆっくりと砂浜を歩き出した。

 


 


 

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