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詩:『ワニ園』

『ワニ園』

15歳、水晶キララは逃げ出した、裸足で
死ぬつもりだった、何処かで一人
静岡方面の列車に乗った、底冷えする夜
少年が待っていた、ワニ園で
「初めまして、お嬢さん」
少年は名乗った、爆弾魔ボマー
「もったいない、死ぬなんて、
逆に吹っ飛ばそうぜ、世界を、
そしてその前に靴を履こうぜ、君は」

二人は爆弾をしかけた、ワニの檻に
たくさんの爆弾は、少年が用意した
園のあちこちに、爆弾をしかけるうちに、
水晶と爆弾魔は発見した、ある秘密を
このワニ園には、驚くべきことに、
存在したのだ、全長80mの巨大ワニが
エネルギー源が核融合の、巨大ワニが

先生は厳格な受験戦争の監督官で
クラスメイトはいずれ皆が敵になる
お母さんは仕事に行って
色んな男と帰ってくる
おもちは去年死んだ
白い温かい北海道犬

何故死んだのだおもちよ
首輪を断ち切って自由を
求めたのかわたしと同じように
小学校のグラウンドで飛び跳ねて
河川敷を駆け回って別の犬を
追い掛けて土手を上がった
其処でトラックに撥ねられた

爆破された檻から、ワニどもは、
軛を断ち切って、火を吹き、
戦争をしかけるのだ、隣人に
怨み、妬み、怒り、悲しみ、
我らは隷属を求める、隣人に
後悔、恐怖、絶望、終末、

リセットしろ、全世界を、
核融合の、怪物ワニよ
根絶やしにしろ、お母さんが、
連れてくる、男たちを
逃げたトラックの、運転手と、
おもちに追い付けない、わたしを

爆弾魔の少年の本当の名は
メフィストーフェレスと言うそうだ
永い永い時間を絶望した人間と
共に過ごし歴史に干渉してきた
片足を常に引き摺っている悪魔

水晶と爆弾魔は、滅んでゆく、
世界を見下ろし、結婚指輪を交換した

悪魔わたしに、愛を誓いますか?あなたは」
「はい、誓います、永久に」

新しい妻に、悪魔は
履かせた、水晶すいしょうの靴を

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