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回復期リハビリテーション病棟に入院する患者さんやご家族に知っておいて欲しいこと

こんにちは。うなぎです。

地域医療構想という言葉をご存知でしょうか?
2025年、つまり団塊の世代が75歳以上になるのを見据えた国の施策なのですが。
ここでは、急性期病棟を減らして、回復期病棟を増やそう!と提言されています。

このような背景から、これから回復期リハ病棟に家族もしくは親戚が入院する、という人が今後どんどん増えていくことになるわけです。

リハビリテーションのための入院って聞くと、どんなイメージですか?
多分、「めっちゃ良くなる!」って思いますよね。
イメージから描く理想と現実のギャップが、かなりあります。

ここでは、回復期リハビリテーション病棟に自分や家族、親戚が入院してる、もしくは入院する予定という方々に向けて、現場の医療者から、回復期リハビリテーション病棟について知っておいて欲しいことをお伝えしていきます。


入院期間には上限がある

回復期リハ病棟には、急性期病棟などとは異なり入院期限に上限があります。
これは入院する病気によって異なっています。

令和4年度診療報酬改定項目の概要 :https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000966248.pdf


基本的には入院上限は脳血管疾患が150日or180日、骨折などの整形疾患が90日です。
リハ区分は、回復期リハ病棟に入院後に主治医が決定します。
入院後の担当主治医に、入院期限はいつまでなのかを確認してください。

「上限超えても数日くらいおまけしてくれるでしょ!」なんてことは絶対にありません。


ほとんど強制的に出されます。
なので、時間的に余裕を持って退院の準備をしてください。
退院後にもリハビリが必要な人には、訪問リハビリや通所リハビリ、外来リハビリのサービスに繋げる事が可能です。
入院中の担当リハビリスタッフや看護師、医療ソーシャルワーカー、主治医と相談してくださいね。


病院の選び方

回復期リハなんて、あんまり縁がないし病院の選び方とかよくわからないですよね。
知識が少ない方も多いでしょう。
回復期リハ病棟にも、種類があります。

令和4年度診療報酬改定項目の概要 :https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000966248.pdf


入院料という施設基準がありまして、区分が1から5に分かれています。
簡単にいうと、入院料1を算定している病院はスタッフが充実しており、在宅復帰のために積極的に退院支援をしています。更に、効率的なリハビリができているという実績がある事が示されています。

整形疾患に特化した回復期リハ病棟もあったり。
また、リハビリ専門病院なのか、急性期病院の中の回復期リハ病棟なのかでも雰囲気が全然違います。
「回復期リハ病棟」と一括りに言っても、結構個性があるので事前の情報収集って大事です。

基準としては、

  • 入院料1もしくは2

  • 在宅復帰率とリハビリテーション実績指数が高い

というのが選択理由に含まれてくるかなと思います。
これらは各病院のHPに公開されています。逆に公開されていない病院を選ぶときは、少し慎重になってもいいかもしれないです。

あと大事なのが、ご家族の立場からするとご自宅や職場から近いこと。
回復期リハ病棟って昼夜で更衣をしたりするので洗濯物が比較的多くでたり、入院期間は長期になりますが面談や介護指導があったりと、急性期ほどではなくても、ちょこちょこ病院に赴く機会があります。
なので、できるだけアクセスしやすい病院を選ぶのも一つの判断基準ですね。


家の近くに回復期リハ病棟がある病院がどこにあるのかわからない!という方は、回復期リハビリテーション病棟協会のHPを参考にしてください。
協会に加入している病院リストが見られます。
入院料基準やスタッフ配置、認定資格保有者の数も記載されているので、病院選びの参考にしてください。


入院から退院までの流れ

回復期リハビリ病棟は、病気で自宅退院が困難になった方々に対して、在宅復帰を支援する目的で創設されました。
そのため、患者さんとご家族が、退院後にどんな生活を送りたいのかを目標として設定し、リハビリスタッフや看護師、介護士、ソーシャルワーカー、医師と共有して支援していきます。

入院当日
看護師や医師、ソーシャルワーカーが、患者さんやご家族から、病気になった時のことや急性期病院での様子、病気になる前の生活などについてお話を伺います。
また、リハビリスタッフを含めた多職種で「合同評価」と呼ばれる初期評価を行い、患者さんの身体機能を簡単に確認します。この初期評価を通して、初回の面談までのリハビリの目標を決定します。

入院初期・中期(1ヶ月〜3ヶ月程度)
入院から2週間程度で初回、その後は1ヶ月ごとを目処に医師からの面談を行います。どれくらいリハビリで回復したのか、退院時点での身体・認知機能の予後予測やそれに基づく退院時期の目処についてお話しします。

入院後期
退院時期の目処が立った時期です。
必要に応じて、ご自宅に直接伺って家屋環境を確認する家屋調査、医療者からご家族への介助指導、退院前に試験的に外出・外泊訓練を実施したりします。
その間に介護保険の申請時期など社会資源の活用についてもお手伝いします。

退院後も安全に生活できる支援体制が整ったことを確認して、退院となります。

これらの流れは患者さんによって異なるので、その都度面談などの機会を通じてご相談しながら進めていきます。
不明な点があれば、担当の医師や看護師、ソーシャルワーカーなどにお気軽に相談してくださいね。


どんな入院生活を送るのか

土日祝日関係なく、365日リハビリが行われています。
1日2〜3時間が標準です。ずっと運動しているわけではなく、患者さんの体力に合わせて実施していくので安心してください。

下記に、患者さんの1日のスケジュールの例を載せてみます。

スケジュールの一例

6:00    起床、更衣、洗面
7:30    食堂で朝食
9:00    理学療法 リハビリ室や病棟の廊下で歩行練習
11:00  言語療法 リハビリ室で言語の訓練
12:00  食堂で昼食
14:00  入浴
15:00  作業療法 リハビリ室で指先の細かい動きの練習
18:00  食堂で夕食 リハビリスタッフの見守りの下で食事の席まで歩行練習
18:30  更衣
21:00  消灯

食事や洗面は基本的にベッドから離れて行います。
特別な理由がない限り、食堂での食事をお願いすることが多いです。
朝夕で更衣をする。
オムツはできるだけ外してトイレにいく。


などなど。
想像したより忙しいでしょうか?

基本は「できることは、できる範囲で自分でやる」です。

私たち医療職は、もちろんできないことはお手伝いします。
そして、できないことが、安全にできるようになるために、リハビリスタッフや看護師、介護士が日々連携して、やり方や道具の検討をしたり、リハビリプログラムを考えたりします。

体力が戻ってくてできない、やる気が出ない、というのは回復していく過程で仕方がない事です。
その時は体力がどうしたら回復していくのか、全力で手伝います。
安心してスタッフを頼ってください!

一方で、安全上の配慮も大切です。
「いつまでも見守りと言われて一人で自由にできない!」ということもあると思います。これはあくまで、患者さんの安全上の理由からです。
見守りをしているのには、必ず理由があります。
納得がいかなければ、担当のリハビリスタッフや看護師に、理由を聞いてください。

回復期リハ病棟では、患者さんもご家族も、チームの一員です。
自分がどうしたいのか考え、それを主張する権利があります。
互いにチームの一員として、一緒に「あなたらしい退院後の生活」に向け、連携していきましょう!

リハビリでどこまで回復するのか問題


ここで、リハビリでの回復の限界について、多くの人に知っていただきたいと思います。

多くの方は、希望や期待を持ってリハビリ病棟に入院してくると思います。
しかし、リハビリをしたから必ず全員が回復するわけではありません。

機能回復曲線というものがあります。
これは、脳卒中の患者さんがどれくらいの時期に、どれくらい回復するかを図式化したものです。
回復に重要な時期は発症6ヶ月目まで=回復期リハ病棟に入院している期間です。6ヶ月以降は回復は緩徐になると言われています。


私たち専門職は、回復期リハ病棟に入院して大体1ヶ月、遅くても3ヶ月程度までには退院後にどの程度まで回復できるか、具体的な予測を立てます。その予測に基づいて医師から面談で予後について説明を行います。
正確には入院時から予測は立てています。ただ、入院して数週間から数ヶ月は、患者さんによってかなり回復度合いに差が出ます。

例えば、脳卒中後で麻痺が重く食事も食べられず、退院後の介助量が多くなりそうだ、と予測していた人が、自力で車椅子を漕いだり食事が食べられるようになることも珍しくありません。

逆に、転んで骨折して動けなくなって入院したが、認知機能が低下してしまってリハビリが進まず、歩くことも難しくなり身体機能の回復が思うように図れないケースも、前述したケースと同様に珍しいことではありません。


脳卒中の人も、整形疾患の人も、それ以外の人も皆同じですが、やはり元々のその人の持つ力に大きく左右されます。
そして、脳卒中の人の回復で言うのであれば、3ヶ月を過ぎたあたりからの回復具合は顕著に低下します。正直、入院して3ヶ月程度経過した時期にリハビリで歩行ができていない患者さんが、残り3ヶ月で歩いて退院することは難しいです。

維持期(病院を退院して自宅や施設での生活をする時期)に入ってから、少しずつ回復していったという人も少なくありません。
そういう方々は、整った環境で、自分の持っている力を上手に発揮できている方々が多いです。

回復期リハ病棟は、できる限りの機能回復のお手伝いをします。でも、リハビリだけではどうしようもないこともあります。
むしろ、ご自宅に帰った方が、入院しているよりもリハビリになる人もいます。


入院リハビリでの回復には限界がある

これを多くの患者さんやご家族に知っていただきたいと思い、記事を書かせていただきました。


最後に

私たち回復期リハビリテーション病棟の医療職は、患者さんとご家族が安全・安楽に退院後も生活できるようお手伝いすることが仕事です。

そして、それには患者さんとご家族の理解と協力が不可欠です。
実際に頑張るのは患者さんであり、その患者さんの一番の理解者かつ支援者であるのがご家族です。

わかりにくい医療制度などにも問題があると思うので、少しでも回復期リハ病棟の特徴や役割について、多くの人にご理解いただけるよう今後も記事を書いていきたいと思います。

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