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謳う魚、騒がしい蟹達

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稲垣足穂『一千一秒物語』のオマージュ作品です。
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2014年9月の記事一覧

お星さまを落とした話

 私がストリートを歩いていると、背中から突然ピストルを押し付けられた。
 私が動けずにいると、『昨日のことを覚えているか?』と言われたので、思い出すと、たしかお空に出ていたお星さまをからくりを動かしているうちに市立公園の池に落としたことに思い至った。
 そして、背中をドンと突かれ、パン!という音がすると、私は昨日の星空の下に倒れ込んでおり、お空を見ると、お星さまは元通りになっていました。

してやられた話

 ある晩のこと、私と友人が酒場で話していると、友人が突然に顔をしかめていった。
『どうやら、してやられたらしい。』
『何をしてやられたのかい?』
 私が周囲を見ると、こちらを見ながらグラスを磨いているバーテンは実はお月さまで、酒場にいたお客はみんなお月さまの仲間だった。
 私たちはすでに彼らに取り囲まれてしまっていた。
 お月さまの仲間たちが私たちに近づいて来たので
『やるか!?』
 私はそういい

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It's a beautiful night!

 ショーウインドウの前を歩いていると、私はぐいと肩を引っ張られ、気がついたら一枚の板切れになってミニチュアの街のなかにいた。セルロイドでできたビルディングの隙間に、紐で吊るしたブリキのお月さまが鈍く光っていた。
 ショーウインドウの前に立っている私は、それがショーウインドーの中の風景であると分かっていたが、板切れになった私は、どうしてもブリキのお月さまから視線を外すことができなかった。
 昼下がり

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ほうき星と炭酸

 あるとき、河口の海に近いところにほうき星が落ちた。ほうき星は河の水を炭酸水のようにしてしまい、シューシューと泡立ててしまった。どうやら、ほうき星が水に溶け始めているようだった。カイネ博士がボートを持ち出して落ちたほうき星に近づくと、河に手を入れて、アルミニュームの真ん丸を引っ張りあげた。
『つまりはほうき星は炭酸を噴き出して進むのです!』
 カイネ博士がそういうと、拍手喝采が聞こえ、やがて彼らは

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いつもと違うお月様の話

 夜、きれいなお月さまが上っているのを見て、多くの人が街頭で足を止めた。何故なら確かに月はきれいだったのだが、それは確かにいつものお月さまとは別のお月さまだった。
 これは大層珍しいというので、街の人々は手にビールのグラスを掲げながら、歌を歌って大変に盛り上がった。
 この間、本物のお月さまはどうしていたかって?ポリスのビルディングに投げ込まれた石を包んだ紙切れにかかれた情報をもとに、街角の空き家

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お星さまを盗んだ人の話

 ある酒場に大勢の人が集まっていた。何でも、星を盗んだ罪で指名手配をされていた男が、大勢の人に捕まえられたらしかった。
そして、本当に彼が犯人なのかをはっきりさせるため、尋問が始まった。
『どうして、お星さまを盗んだのか?』
『そんなものはとっていない。』
『いや、そんなことはない。』
『証拠があるのか?』
『証人がいる』
『ならば、証人をつれてこい!』
 そして、証人が実際に名乗り出て、男の手口

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