お星さまを盗んだ人の話

 ある酒場に大勢の人が集まっていた。何でも、星を盗んだ罪で指名手配をされていた男が、大勢の人に捕まえられたらしかった。
そして、本当に彼が犯人なのかをはっきりさせるため、尋問が始まった。
『どうして、お星さまを盗んだのか?』
『そんなものはとっていない。』
『いや、そんなことはない。』
『証拠があるのか?』
『証人がいる』
『ならば、証人をつれてこい!』
 そして、証人が実際に名乗り出て、男の手口を述べはじめ、やがて夜が明ける頃になると、酒場に煙のようなものが立ち込め始め、大勢の人はみんな姿を消してしまった。その様子を見た男はハッとすると、胸からブリキの箱を取り出すと、それは不自然に壊れ、中身が空っぽになっていたのを見て、懐にいれて持ち歩いていたお星さまが逃げ出していたことに気がついたのだった。

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