マガジンのカバー画像

謳う魚、騒がしい蟹達

96
稲垣足穂『一千一秒物語』のオマージュ作品です。
運営しているクリエイター

2014年8月の記事一覧

土星のわっかの話

 悪友のFと星空を見ながら歩いているとき、土星の話になった。
『土星のやつは、何でいつもわっか遊びをしているんだい?』
『そうさ、きっと何時ものシガレットをやっているのさ。』
『なんだって、あれはシガレットの煙なのかい?』
 悪友のFはシガレットに火をつけ、口からプッとわっかを吐き出すと、お空のお月さまにきれいなわっかがかかり、それはすぐに消えてしまいました。

お月様を追いかけた話

 お月さまに追いついてやろう。そう思った私は外に出てオートモービルに乗ってお月さまの方向へと走らせ続けた。
 お月さまはすごい勢いで私から逃げ出して行ったが、アクセルをいっぱいに入れると徐々に距離が縮まり始めた。そしていよいよ、という所でお月さまがニヤリ、と笑うのが見え、次の瞬間、私は壁に当たってはねかえされてしまった。
 なんと、私がぶつかったのは、風景が描かれた四角い部屋の一番端だったのだ!

もっとみる

死んだお星さまの話

 工場の前を通りかかると、倉庫の中に死んだお星さまが沢山積まれているのを見付けた。そういえば、この前にひどく雨が降った日に、雷に混じってなにやら固いものが当たる音が聞こえていたが、それが死んだお星さまに違いない、と考え『何だ!つまらない!』
 私は一人声をあげると道路の上に落ちていたお星さまを蹴飛ばすと、お星さまがチカチカと光ながら乾いた音を立てて転がっていくのが見えた。

お月様がお空を突き破った話

 市電通りを歩いていると、ボール紙が破ける音とともに空からお月さまが突き抜けているのが見えた。どうやら足を滑らせてお空を突き破って出てきてしまったらしい。夜が来る頃にはお月さまは西の空に沈んでしまいそうになり、街は大騒ぎになった。
 やっとのことではしごの上から棒で押っつけてお月さまをお空から外すと、お月さまはしょんぼりとしながら東の方角へ歩いていった。
 その日、ふてくされたお月さまがお空に上っ

もっとみる

天の川のお話

 お月さまがポケットにお星さまをいれてお空に上っていた。お月様のポケットには穴が開いていたので、お星さまがキラキラとこぼれてお月様から尾を引くように広がっていた。
 お月様の上ったところには、星がたくさん輝いて、それはきれいな天の川になりました。

アセチレン灯と喧嘩をした話

 アセチレン灯と掴み合いの喧嘩をしていたら、ものすごい力で、エイ、と投げられてしまった。私の周りの風景がスローモーションで遠ざかり、気がつけば時計塔の長針にぶら下がってしまった。
 そもそもの喧嘩の原因はなんだったのか?それは、私が市立公園に立っていたら、アセチレン灯が歩いてきて私にぶつかったことだった。
 私はむすっとしながら、『まったく今日はツイていない』と愚痴をこぼしつつ、ポリスが時計塔に慌

もっとみる

紳士とシガレット

酒場で紳士がシガレットをくわえ、マッチで火をつけると、シガレットが導火線のようにシュウシュウと音と煙をたてた。そして、シガレットが短くなると、パン!とはじけて、紳士の姿はどこにも見えなくなってしまった。

お星さまは誰だ?

 あるとき、古い友人から電話が来て、酒場で旧友たちと一緒に飲むことになった。
 酒場での夜はずいぶんと盛り上がり、みんな沢山のお酒を飲んだ。
そして酔いが全員に回ったころ、友人の一人が、実は自分がお星さまだったことを告白し始めた。その話は随分と意外な話だったので、その場はずいぶんと盛り上がり、酒場がしまる時間まで大いに話が弾むことになった。
 そして、家に帰り、お酒が抜けると誰がお星さまだったのか

もっとみる

椅子取りゲーム

 私と友人が酒場で、椅子に座ろうとすると、友人が後から来たお月さまに椅子をとられてしまった友人は、座ろうとした椅子をさっととられてしまったため、床に尻餅をついてた。お月様は誇らしげに笑っていた。
 それを境に酒場の中では椅子取りゲームが始まった。椅子に座れなかったものはだんだんと酒場から締め出されていった。
 ついに私とお月さまの一騎討ちとなった。お月様が外を指さし、あっと言った。私がそちらを見る

もっとみる

月と数学者

 ある数学者が、お月さまの動きを記録演算しようとした。数学者は酒場へいくと早速聞き込みを初め『ふむ』と一言もらすと、なにかをぶつぶつとつぶやき来ながら研究室に戻っていった。
 翌日の夜、お空を見るとお月さまに大きな星条旗が突き刺さっていたので街は大騒ぎになった。
 数学者の噂を聞き付けたポリスが彼を捕まえたが、彼がいつか昔にお月さまに会っているという他は、一体どうやってそんなことができたかを知るこ

もっとみる

暖炉とお月様

 彼らが部屋に入ると、暖炉になにかを放り込んだ。カルシュームに苛性カリ、硫酸バリュームに、、、するとガサゴソと音がし、煙突からボンと煙が出た。
 遅れてきた私が急いで私が部屋に駆け込むと、煙突からは、もう出来上がったお月様が上っていったところだった。

花火の話

 夜中に物音を聴いて目を覚ますと、お腹の上で花火が上がっていた。じっと目を凝らしてみると、小さな人々が、花火大会をしているようだった。
まず飛行機が唸ると、打ち上げ花火を落とした。それを、下に控えた射的の選手がドンと打ち、花火は空中できれいに弾けると、テーブルの上のギャラリーから拍手喝采が起きた。
 私は寝ぼけた目でそれを見ていたがtres bien!と声を出すといつのまにか私も飛行機に乗って、私

もっとみる

ビンを投げられた話

『お月さまは、いつも浮かんでいるだけで羨ましいな。』
 私が無意識にお月様の悪口を呟くと、空からコーラのびんがガッシャン!私が振り向くと空には真昼のお月様が上っているのが見えた。
『なんだって、危ないじゃないか!』
『うるさい、不良少年!』
 私とお月さまは口喧嘩になってしまったが、結局その日の夜はお月さまとカフェーにビールを飲みに行くことになった。

栓が抜けた話

 夜の遅い時間、私が市立公園のなかを歩いていると、何やら輪っかのようなものにつまづいた。それは、ずっぽんという音を立てたかと思うと、ゴムでできた円筒とともに地面から抜け出てきた。
 すると、ずるずると何かが流れる音とともに、空の暗闇とお星さまが砂時計のように円筒が収まっていた場所に流れ落ちて行くのが見えた。
最後にお月さまが吸い込まれて、スポン!気がつくと辺りには鳥のさえずりが聞こえ始めていた。

もっとみる