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理想の終活とささやかな夢

3月3日(金)日記

就活をしながら終活を考える

就活をしながら、ほぼ毎日愛犬の散歩をしていた。ふと「これが終活か」と感じた。人生の最後に、毎日、犬の散歩ができたら幸せだなと思った。森博嗣さんの生き方や小説が好きなのだが、彼もまた山の中で小さな鉄道を敷いて、犬を乗せて遊んでやっているらしかった。彼は『自分だけが抱いているささやかな夢が、人生の心の支えになる』と著書の中で語っていた気がする。思わず「ああ〜」と共感したくなった。彼は、鉄道を敷くために小説を書いてお金を稼いだ。私も、自分だけのささやかな夢を持って、社会人生活をはじめて、どこか遠くのゴールまで走っていきたい。

大きな空へ愛犬と、河川敷を走る…

犬にも気分があるらしい。うちの犬は、その日の気分によって歩いていきたい方向が違う。時には、車に乗せてどこかへ連れてけと言わんばかりに、車の周りをウロウロしている。川には毎日訪れている。川に足を入れて水を飲んだり、鳥の鳴き声や飛んでいる様子を観察したり。雨の日には、草むらの中で雨宿りをしているスズメを掴んでしまったりする。

顔を上げて、クンクンと鼻をひくつかせながら、全身で風を感じている愛犬を見ていると、こっちまで気持ちが良くなる。

いつも水面が美しい

愛犬のコンパス

愛犬は犬種が柴犬だからか、あるいは、飼い主に似たのか、頑固なところがある。我が道をスタスタと歩いていく。立ち止まりたい時には、しつこく止まる。いつも自分の行きたい方向がわかっているのだ。

まだ帰らんぞ…?と立ち止まる愛犬

私はどこへ行くのだろうか。どこへ行ったら、留まっていられるのだろうか。まだまだ将来に対する不安の方が先で、立ち止まってはいられないと思うことが多い。それなのに、行動が伴っていないことも多い。

どっちへ行ったら…?と周りをキョロキョロ見渡しては、他人と自分を比較して傷ついたり焦ったりする。皆のSNSのプロフにある矢印が物語っているのは、「私ってこんな人」「挫折したけどキラキラしたキャリアを築きました」という自己表現と能力値。誰も聞いていないけど、アピール合戦するのが、現代の得する生き方なのだろうし、「本当の私はこれなんです!」という主張なんだと思う。そういう人間の本音が見えるTwitterは、見すぎると時間を忘れてしまいそうになるけど、好きです。自分の気持ちよりも、他人からどう見えるか?そのためにどんなキャリアを築くか?ということに、急き立てられている感覚がずっとあって。これは私だけではなく、誰もが感じていることではないだろうか。立ち止まろうとしないと立ち止まれないのが、人生なのかもしれない。

私のコンパス

会社員時代をしながら、創作活動や研究活動に没頭し、足の裏の米粒をとる。バックグラウンドが豊かな人々と繋がり、喫茶店なり食事なり、語らう。会いたい人には会っておく。ヨーロッパ、特にフランスとイギリスには行っておく。可能であれば、結婚をする。子供を1人育てる。40歳の自分の顔と仕事には責任を持つ。かっこいい女性になっておく。そして、愛犬と最期まで散歩ができる。愛犬の最後を見届けてくれる、近所の人なり家族なりとうまくやっておく。自分が死んだら、海よりも山に埋めてもらった方がいいかな?(めんどくさい注文だこと)と思う。

叔父のコンパスは最期までかっこよかった

私の叔父は、40代という若さでこの世を去った。突然の死だった。連絡をもらったとき、「まさか」という驚きと「かっこよかった」というフレーズが真っ先に頭に残った。

彼は19歳の時に上京し、ゲーム会社に転がり込んで弟子入りを果たした。部屋の無かった彼は、お金が貯まるまで会社で寝袋生活をしていたらしい。「俺は死んだと思ってくれ」と言い残し、地元を去った。最期には、自分で小さな会社を経営していた。そのときまで、親族は、会社設立の件を、誰も知らなかった。つくっていたゲームが、まさかのエロゲーだったことも。健全なゲームだけを私に紹介してくれていた。正月にだけ地元に帰省して、ゲームを買ってくれたり、お年玉をくれたりと、とても良くしてもらった。ロン毛で髪を後ろに一つ結んだイケメンだったが、人生をエロゲーと趣味のガンダムプラモデルに捧げて、独身人生を貫いた。老後には、もっとつくりたいとプラモデルを買い溜めていた。かっこいい人だった。エアコンが稼働している季節だった。彼には命を絶つ予定も気持ちも無かったはずだった。つくりかけのゲーム、プラモデル、3歳の愛犬を残して、この世を去った。

彼は、人生の最期に、何を思っただろうか?とたまに考える。何も思い残すことは無かっただろうか。人生100年時代と言われている今日だが、私はそれよりも(自分の寿命は)短いだろうと見積もって、人生を考えるようになった。自分の周りにはかっこいい人がたくさんいるが、叔父もその一人。ああもう十分お腹いっぱいで面白かったと思える人生になったら最高だ。ささやかな夢を抱きながら、時には途中でいろんなものを手放しながら、静寂で平穏で幸せな人生を歩んでいきたい。

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