【おはなし】目玉焼きの きみ

目玉焼きは、半熟が好きだ。火が通り過ぎないように、フライパンに蓋をしたら付きっきりで見なければならない。私に与えられた時間は30秒だ。
急いで温かい白米を器によそい、お箸を食卓に用意したら、蓋の隙間からたまごの様子を確認する。蒸された黄身にうっすらと白い膜がかかっている。今日はうまくいった。

平皿に目玉焼きを移し、塩胡椒をふりかける。私は、黄身の部分に多めにかける。ぷるぷるとした黄身を揺らしすぎて壊さないように食卓まで運ぶ。

いただきます、と言ってからやることがある。お行儀が悪いので人に話したことはない。
黄身の円周に沿って箸を入れる。白身との境界線ぎりぎりを狙っていくので毎回どきどきしている。

うまく黄身と白身を離すことができた。黄身の端っこを箸の先で慎重につまみ(ほんの少しだけ火が入っていて固まっているので、丈夫なのだ)、ふっくらと盛った白米のてっぺんに乗せる。2秒だけそのビジュアルを眺め、黄身を割る。
とろり、と黄身が白米の上で寝転ぶ。

そうして、ちょっとしょっぱい黄身ご飯と共におかずを食べるのが楽しい。このためにたまごの焼き加減にこだわってさえいる。

しかし、楽しい時間も束の間。3口ほどで黄身ご飯の部分を食べてしまう。なぜ卵を2つにしなかったのかと毎回思う。

明日も同じことをする。

援護射撃 \ズバァァン/